2021年立命館大学2/2実施 解説

本日もよろしくお願いします。大学入試も後期入試を残すだけになりました。僕は来年の出講に向けての準備を始めています。今後は共通テストだけでなく、私大入試に向けての動き、そして公民科目や世界史などの学習も行っていき、その先の指導に向けた動きをしていきたいと思っています。

本日は、2/2実施の立命館を扱いたいと思います。この問題は一つ問題になっている箇所があり、どう考察すればいいか、を話していきたいと思います。もし、ご意見などございましたら、コメント等お願いいたします。
問題については、大手予備校のサイトよりダウンロードしてください。

■問題の概略

立命館の入試問題は難語を連発する、というイメージが強い大学で、原始時代の入試が多いことが特徴です。今回も大問1は原始を出してきました。大問2は室町文化を少し細かく出題していますが、一部明治文化と融合させています。演習などで慣れていなければ失点が激しかったかもしれません。大問3は明治社会経済史です。近年は他の大学でも、近代社会経済史を大問1つで出すところが増えているので、確実に学習しておきましょう。できていなければ思わぬ点差がついてしまいます。

■大問1 解説

それでは、早速考察していきましょう。全てを解説するわけではないのでご了承ください。
空欄補充問題は、F以外は確実に正解を出したいところです。ほとんどの方は、太田天神山古墳のことを知らない人が多いと思います(詳説日本史、新日本史、日本史新訂版にはどれにも載っていないが、詳説日本史は地図で前方後円墳の大きさを地図で示しています)。ですが、太田の自動車を知っている人は群馬県であることを判定はできると思います。その知識を知らない人は、一つ周辺知識として追加してください。そして、今後立命館を受験する人、関関同立・早慶を受ける人は知識として入れておく必要があります。そして、太田天神山古墳は「日本史図録」(山川出版社)などの図表では掲載されていますので、確認もしてください。

aの縄文時代に栽培された植物については、「詳説日本史」などの教科書に記載されています。その中では「マメ類・エゴマ・ヒョウタンなどの栽培が行われている」と書いています。ここから、トウモロコシは誤っていると判定できます。別にトウモロコシがいつ栽培されたか、は知らなくてもいいです。bはグスクを拠点とした豪族なので、按司にしましょう。尚氏はその後の琉球王国を建国した一族です。時期が異なるので按司が正解です。早稲田を受験する人は、琉球史の出題もあるので、確実に時期とともに押さえておきましょう。cの銅戈については、写真でも判断できるように図版を見ておきましょう。立命館(青山学院も)は古代の作品を写真で選ばせる問題が出てくるので、合わせて確認しておきましょう。dは纏向遺跡です。その中に箸墓古墳や西殿塚古墳などがあります。その総称が纏向遺跡です。eは正誤問題です。㋑は埴輪が埋納されたが誤文です。㋒は前方後方墳は前期の説明(東日本)なので誤文です。㋓は横穴式石室は中期以降なので誤文です。fは確実に正解を出したいところです。gは秋田城の設置時期が分かるかどうかですが、多賀城よりあと、とわかれば判定はできます。胆沢城は9世紀に設置されました。

■大問2 解説

続いて、大問2に行きましょう。ここはいきなり史料がきますが、会話文や設問などで判断していきましょう。
➀内容を判断すると、2つめのAの直前に「所々ノ歌」とあり、設問cで二条良基がAの規則書(応安新式)を作った、とあるので、連歌が入ります。Bは興行が行われていたところから、能楽のもととなった田楽(祭礼神事)が入ります。猿楽(滑稽を主とする)ではありません。Cは群飲佚遊とあるので、飲み物ではないのか、と判断できます。よって、が入ります。簡単には入れるものではないので、類題演習で確認をしておくといいでしょう。Dは容易に解答できます。
aは難問です。『自由論』の著者がミルとわかれば行けると思います。中村正直を確認するときに関連知識として合わせて見ておく必要があります。なお、この話は、「新日本史」では欄外に載っています。「詳説日本史」ではミルは載っていましたが、「新日本史」ほど詳しくは書いていませんでした。bは寄合の史料がわかれば今堀と判定はできます。

②Eは『東洋自由新聞』の主筆が中江兆民とわかるかどうかですが、後半で土佐藩出身とあるので、そこから判断したらいいでしょう。Fは義堂周信と絶海中津、eの設問で出る春屋妙葩はセットで押さえましょう。合わせて絶海中津が鹿苑院の院主だったこと、義堂周信が円覚寺に下ったことも周辺知識で押さえましょう。Hは作品から判断できます。fは日明貿易の史料の出典が「善隣国宝記」で、その著者瑞溪周鳳もセットで押さえましょう。gは侘びをベースにしたものというよりは、東山文化で禅宗とあるので、枯山水のことではないか、と判定できます。

■大問3 解説

明治期の社会経済史の問題です。一つ一つ解決していきましょう。

➀A~Fは確実に解答を出したいところです。aは官有物の払下げ場所をしっかりと押さえれば問題ありません。三井・三菱・川崎・古河については最低限でも押さえましょう。bは難問です。「詳説日本史」では第1回の上野しかありません。「新日本史」には記載なしです。しかし、「日本史新訂版」では5回まで開催され、第4回が京都、第5回が大阪、と開催都市まで記載があります。用語集でも掲載はあるので、周辺知識として加えておきましょう。cも難問ですが消去法を使うと簡単です。軍服材料のラシャの製造を行ったのは、千住製絨所です。新町紡績所は絹の屑糸紡績の官営工場です。島津製作所は説明はありませんでしたが、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏の勤務している会社です。富岡製糸場も製糸なので、そういうところから消去法を使えば正解は出せます。

②G~Mですが、KとLがセットで分かるなら書けますが、どちらかが分からないと苦戦していたと思います。そして、問題はHです。文はこうなっています。

( H )年に発生した事件を機に、新政府による初の海外派兵となった台湾出兵では、~(2021年立命館 大問3②より)

この問題点は、空欄Hのポイントをどこにするか、です。この解答は2つありえます。まず、1871年です。この年代の重きに置いているのは直後の「発生した事件を機に」、の部分です。この事件は琉球漁民殺害事件のことです。これをきっかけとして1874年に台湾出兵を行いました。もう一つが先ほど言った1874年です。これの重きに置いている部分は「台湾出兵」です。立命館の当初の模範解答は1874年で、予備校が出していた模範解答は1871年でした。立命館はこれを受けて、この問題を全員正解としました。なお、立命館の声明ではもう一つ1873年についても触れています。恐らく明治六年の政変のことではないのか、と思いますが、僕の私見はこれは少し無理があるのでは、と思っています。

dは近年の出題が増える渋沢栄一です。eは西郷従道を選びましょう。fはやや難問です。遠洋航路についての制定は航海奨励法ですが、これは1896年に公布されました。この航海奨励法を受け、1909年に遠洋航路補助法が制定され、航海奨励法と併用されました(遠洋航路補助法は教科書にはないものの、用語集(航海奨励法)に載っています)。gは三井合名会社です。

■立命館はここ数年易化している?

この問題を解いた時、僕が思ったのは、ここ近年やや易化しているのでは?と思いました。昔の立命館はもう少し難しい問題を出すイメージがありましたが、近年は教科書範囲でも解ける問題が増えてきています。

しかし、その教科書でも「詳説日本史」ではなく「新日本史」や「日本史新訂版」など詳説日本史外しを行っている出題も出ています。また、「日本史用語集」の説明部分も問題になるケースはあります。よって、難関私立を受ける際は、用語集の学習も忘れないようにしましょう。

■用語集の説明は正誤問題でも活用

用語集の意味は何となくで読まないようにしましょう。なぜなら、説明文が問題文として使われたり、説明文がそのまま正誤文として使われたりしているからです。そして、教科書に無くてもその用語を問題に出してくるケースもあります。それが先ほどの大問3の②のfの問題です。
それを考えると、教科書・用語集・史料集などしっかりと照合して学習をしないといけないことが分かります。語句を調べるときには語句だけでなく意味・周辺知識を意識して調べましょう。電子辞書でも構いませんが、それよりも用語集を活用した方が僕はいいと思います。

まずは基本的な歴史の流れを正確につかむことが重要です。ここを間違えないようにしましょう。そのためには、日頃からの授業を大事にしましょう。

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