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大御所をはじめとする意外な歌手達によるシティポップ寄りの曲10曲

今割と話題のシティポップですが、それらは何もシティポップ全盛の70年代~80年代当時若手だった歌手やミュージシャンだけが歌っていたわけではありません。この頃は大御所をはじめとするシティポップのイメージが余り無い、ジャンル的にカテゴライズされにくい歌手もシティポップ系統の楽曲を歌う試みも行われ、今回はそれらを簡単に紹介していきます。

※楽曲が収録されたアルバムはアマゾンで購入可能なものの場合、リンクを貼っておきました(一部試聴可能)。

①美空ひばり「笑ってよムーンライト」(1983年)

(作詞作曲 来生えつ子・来生たかお)                         昭和を代表する歌手と当時中森明菜さん等に多くの楽曲を提供していた来生えつこさん・たかおさん姉弟作詞作曲、そして編曲には坂本龍一さんを迎えたジャジーでお洒落な一曲。ファン層が求めるイメージ(と曲)にズレが有ったからか、当時思ったよりもヒットはしなかったみたいですが、ひばりさんのあらゆるジャンルの曲を歌いこなせる器用な面をこの曲でも確かに感じることが出来ます。

②フランク永井「Woman」(1982年)

※アルバムはアマゾンで全曲視聴可能                      (作詞作曲 山下達郎)                                                                                              ムード歌謡のイメージが強いフランクさんですが、当時山下さんの方からの持ち込み企画で実現した異色のコラボ曲。山下さんらしいロマンチックで煌びやかなメロディとアレンジの中、フランクさんの余裕を感じさせる優雅な低音が際立つ一曲に仕上がってます。この曲はカバー主体のアルバム「WOMAN」にも収録されてますが、もう一枚の収録アルバム「マホガニーのカウンター」には他にも小椋佳さん・来生えつこさん来生たかおさん姉弟・伊藤銀次さんといった人達が楽曲提供しており、洗練されたイメージの一枚に。

③ささきいさお「デイドリーム」(1982年)

(作詞作曲 Miw)                                  「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌で知られ、歌手だけでなく俳優・声優とマルチに活躍するささきいさおさんによるシティポップ風の曲で、ささきさんの売りであるダンディな低音はこういった曲でも活かされてます。収録アルバム「デイドリーム」は片面オリジナル、片面はささきさんのルーツでもあるエルヴィス・プレスリーさんのカバー集という変則的なアルバムで、単独でCD化は残念ながら行われておらず上記のBOXでしか聴けないようですが、当時松田聖子さん等にヒット曲を多く提供していた三浦徳子さん・小田裕一郎さんコンビも2曲提供しており気になる所です。                         

④ザ・キングトーンズ(&マリエ)「レッツダンス・ベイビー」(1978年)

(作詞作曲 吉岡治・山下達郎)                                                                            「グッドナイト・ベイビー」のヒットでも知られる和製R&B系ボーカルグループが70年代にリリースしたアルバム「Resurrect」からの清涼感の有るリードボーカルの内田正人さんの声とコーラスが映えるナンバー。作曲を担当した山下さんのアルバム「GO AHEAD!」収録曲及びシングルとしても知られる曲ですが、元々は彼らへの提供曲。R&Bやソウルミュージックに造詣が深い山下さんですから、彼らとのコラボは必然的なものだったと言えそうですね。

⑤いしだあゆみ「ダンシング」(1977年)

※アルバムはアマゾンで全曲視聴可能                     (作詞作曲 橋本淳・細野晴臣)                                                                            「ブルー・ライト・ヨコハマ」で知られるいしださんと細野晴巨さん・鈴木茂さん・佐藤博さん・林立夫さんらによる音楽ユニット、ティン・パン・アレーとのコラボアルバム、「アワー・コネクション」からのナンバーで、動画にはショートコントも含まれています。少々落ち着いたというか、枯れた味わいの有る曲となっており、前述の「ブルーライト・ヨコハマ」含むいしださんの一連のヒット曲の歌詞を担当した橋本さんの都会の光景を切り取った歌詞も見事。いしださんにはユーミンも楽曲提供した「いしだあゆみ」というアルバムも1981年に残しており、こちらも気になります。

⑥和田アキ子「船乗りたちが集まる店 - SAILOR'S BAR」(1978年)

(作詞作曲 いまむられいこ・八角朋子)                                                                 バラエティでも活躍する誰もがご存知、ゴッド姉ちゃんこと和田アキ子さんの歌手生活10周年目に発売されたアルバム「パーク・アベニュー7:P.M」収録曲。力強い声で知られるアッコさんですが、この曲そしてこのアルバムでは豪快な歌い方は封印、普段のイメージからは大きなギャップを感じさせる程に非常に澄んだ落ち着いた歌を聴かせてくれ、エレクトリックピアノのソロに代表される当時のソウルミュージックやAOR、フュージョンの影響も感じられるバックのサウンドは洗練の極み。セールス的には成功したとは言えず、現在もCD化及び配信もされていませんが、シティポップ流行の今、再評価されてほしい曲とアルバムです。

⑦布施明「I Loved New York Dance」(1980年)

(作詞作曲 布施明)                                                                                                シティポップ的に見逃せない存在なのが布施明さん。70年代後半から80年代前半の時期は「LANA」「I AM」「California Seasons」「Woman」といったシティポップ系統のアルバムを何枚もリリースしており、この曲はそれらアルバムの真ん中に位置する1980年にリリースされた「GOMEN」収録のもの。適度に洗練され、タイトル通りダンサブルな雰囲気が魅力の曲で、なんと作詞作曲も布施さんが担当したというのが驚き。ちなみに布施さんは90年代には角松敏生さんプロデュースによるアルバム「Estimodo」を発売しており、前述のアルバム群に加えこれもシティポップ好きとしては見逃せません。

⑧森進一「水の夢,水の眠り」(1983年)

※アルバムはアマゾンで全曲視聴可能                (作詞作曲 来生えつこ・南佳孝)                                                                     70年代から80年代にかけてのシティポップの波は演歌系の大御所、森進一さんにまで及んでいます。上記のアルバム「紐育物語」にポップス路線の大ヒット曲「冬のリヴィエラ」が収録されているように、この時期の森さんは自身の新たな側面を当時の比較的若手ミュージシャンと組むことで提示し始めた頃。既に何度か登場している来生えつ子さん作詞、「スローなブギにしてくれ」でも知られる南佳孝さん作曲、サックスやスキャット風コーラスがお洒落な雰囲気を醸し出し、抑えた歌唱が光るこの曲は特に森さんがシティポップに接近した一曲と言えそうです。

⑨尾崎紀世彦「My Better Life」(1979年)

(作詞作曲 山川啓介・大野雄二)                                                                          「また逢う日まで」のイメージが強い尾崎さんですが、70年代の終わりには「ルパン三世」でも知られる大野雄二さんを作曲に迎え、エアコンのCMソングにもなったこの曲をスマッシュヒットさせています。尾崎さんのスケールの大きい魅力はそのままに、適度に抑えた歌と演奏が魅力の曲になっています。尾崎さんは80年代後半には「サマー・ラブ」という曲もスマッシュヒットさせており、こちらも若干オールディーズ風であるもののシティポップ色も感じさせ要チェック、といった所です。

⑩沢田研二「A WONDERFUL TIME」(1982年)

※アルバムはアマゾンで全曲視聴可能                (作詞作曲 三浦徳子・佐藤健)                                                                            ジュリーが数多くリリースしたアルバムの中でも、佐野元春さんや大澤誉志幸さん等当時脂の乗ったミュージシャン達が参加した特にシティポップ色の強いアルバムがこの82年にリリースした「A WONDERFUL TIME」。かねてからジュリーの通る声はシティポップ系の曲と相性が良さそうとは思っていましたが予感は見事に的中で、一時期このアルバムばかりヘビーローテーションだった事が有ります。このアルバムタイトル曲はリゾート風あるいは南国風とも言える歌詞と演奏が特徴で、特にジュリーの声が映える一曲。

如何でしたでしょうか。まだまだ意外性のある歌手の歌手達によるシティポップ系の曲は数多く存在し、それらもこれから少しずつ特集してみる予定です。

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