オバさん≒叔父さん(脚本)
(これはシナリオセンター課題に少し手を加えたものです)
人 物
三ツ橋尚(28)オカマバーキャスト、映司の弟
三ツ橋映司(36)コンビニオーナー、尚の兄
三ツ橋聖子(34)主婦、コンビニ店長
三ツ橋充(9)小学生、尚の甥
唐田美樹(20)コンビニアルバイト店員
〇三ツ橋家・居間
三ツ橋聖子(34)がソファで居眠りをする三ツ橋尚(28)を叩き起こす。
聖子「ちょっと尚くん、いつまで寝てんのよ。暇ならお店の品出しくらい手伝ってよ」
尚「うるさいわね。こっちはまだお酒抜けてないんだから、ギーギー言わないでよね。兄さんもバイトも居るんだから、別に私が出て行かなくても大丈夫なんじゃないの?」
聖子、尚の態度に眉間に皺を寄せる。
聖子「あなたね・・居候させてあげてるんだから、少しくらいウチのこと手伝う気はないの?あなたが不況で職を失ったからって、映司さんが仕方なく次の仕事が見つかるまで面倒見てるって言うのに、ウチのことは何にも手伝わないで毎日毎日夕方までグーピ―グーピー寝てばっか!お母様お父様が見たら心配するわよ?」
聖子の大声に堪らず三ツ橋映司(36)が様子を見に居間に入ってくる。
映司「おいおい、何も揉めてんだ?店にまでお前の声響いてるぞ?」
聖子「だってあなた・・・」
尚の太々しい姿を見て、深い溜め息をつく映司。
映司「なあ尚、もうそろそろ新しい仕事先を探す気はまだ無いか?」
尚「仕事仕事って、兄さんまで何言ってんのよ。ちゃんと毎日働いてるじゃないのよ!」
映司「はぁ働いてるって、オカマバーでか?」
聖子「オカマバー・・聞いただけで目眩するわ・・」
映司「お前からやりたいことが見つけたって聞いた時、それなら兄ちゃんも応援してやろうと思ったよ?でも夜な夜なドレス着て厚化粧して出てって、朝方になるとボロボロに崩れた顔で帰ってくるだろ。それをたまたま見てた常連さんがいてな?いつの間にかご近所さんにウチの店がオカマートって呼ばれてんだぞ
○三ツ橋家・居間
気怠そうに三ツ橋充(9)がランドセルを背負って、居間に入ってくる。
充「ただいま〜」
聖子「あ、おかえり!手洗っといで!おやつはお店から持ってって良いよ!どれか一個、一個だからね!」
充「分かってるって・・・、何してんの?」
映司「ん?ああ、子供のお前には関係ないからさっさと手洗って、お菓子選んでこい」
亮「へ〜い」
映司と聖子、尚を挟むようにして両脇に腰を下ろす。
充、居間を出て行く。
○コンビニ店内
充が店内を物色してる。
尚・聖子・映司の言い争う声が店内に響いている。
美樹「みっちゃん!」
美樹が充を手招きする。
美樹「今日は一段と凄いね!」
充「すいませ〜ん、毎回毎回ウチの親が〜」
美樹「全然全然!バイト代も貰えて面白い余興も付いてくるなんて、一石二鳥だよー。てか、みっちゃんが謝る問題でもないっしょ」
充「全く・・あんな声聞かしてたら、お客さん帰っちゃうよ〜」
充、店内を見回す。
美樹「で、今日はどれにしますか?坊ちゃん」
美樹、レジの下から「充・お菓子ノート」を取り出す。
充「これにする」
充が商品を差し出す。
美樹「お、良いね!友達と分けるの?」
充「うーん?そんなとこ」
美樹「はいはい、毎度あり」
美樹、ノートにペンを走らせる。
○三ツ橋家・居間
尚の肩に聖子と映司が手を置いて、話し合っている。
聖子「私達はあなたのことを思って言ってるんだからね?」
尚「心配って、そっちが勝手してるだけくせに・・」
充、パピコを片手に居間に戻ってくる。
充「別に良いじゃん?叔父さんこの前オバさんになってた時、公園でずっと泣いてるおじさんを慰めてるの見たよ」
映司「え?」
充「あんなに優しい叔父さんの顔、家ではなかなか見れないよね」
尚「何よあんた、あれ見てたの?」
充「うん。面白かったから、ずっと見てた。オバさんみたいな叔父さんでも誰かの役に立ってるし、必要とされてる。お母さんやお父さんが気にしてる世間体?てのは気にする必要はないと思うよ?」
聖子「ちょっと充・・」
充「人の目を気にしない生き方って、したくても出来ないよね」
尚「えらく達観した発言するお子様ね・・」
充「そういう叔父さんが面白いだけだよ」
充、パピコを袋から取り出し二つに割り、片方を尚に差し出す。
尚「食えないクソガキだこと・・!」
充、尚をニヤニヤ見ながらパピコを食べ始める。
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