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Romberg試験からわかること

こんにちは。

このnoteでは今までないテイストですが、よく臨床的に使用されるであろうRomberg試験についてまとめていきます。

Romberg試験陽性=脊髄性失調
Romberg試験陰性=小脳性失調

と学校では習うことが多いですが、実際にはもう少し鑑別が必要であったりします。

ではいきましょう。

Romberg試験とは

基本的には直立で閉眼させたときに身体の動揺が生じるか、静止立位時よりも増加するかを評価することによってそのバランス能力低下(あまり適切ではないかもしれませんが運動失調)がなにに主に起因しているのかを推し量る評価になります。

学校で買った教科書には手を水平位に挙上するなどとも書いてあったりするのですが、実際にこの評価がみたいものから考えてもそこは別にどちらでもよいのではないでしょうか。

そしてこの試験が陽性の場合、つまりは閉眼時に動揺がみられる、増加する場合は脊髄性の運動失調を疑い、

陰性の場合、つまり動揺しない、同様の程度が変化しない場合は小脳性の運動失調を疑う。

というのが一般的なセオリーだと思います。

Romberg試験の原理

Romberg試験は具体的には何を評価しているのでしょうか?

簡単に言ってしまえばバランス能力といえるでしょう。

そもそも私たちの姿勢は

視覚
前庭感覚
体性感覚

という3つの感覚によって制御されています。

視覚は環境と身体との距離を、体性感覚は足底面を中心に支持基底面に対する身体の位置の変化を、前庭感覚は重力や加速度(頭部の位置の変化情報)を検出し、中枢神経系にその情報を伝達します。

そしてこの3つの感覚はどれもが同じだけ貢献しているわけではなく、重みづけがされています。

一般的にはヒトは視覚に頼る生き物だといわれていて、明るい状況でサーフェスが安定している地面においては視覚に対する重みづけが一番大きいといわれています。

しかしこの重みづけは環境の変化に応じて可変式です。

例えば、暗くて視界がはっきりしない状況下では脳は勝手に視覚への重みづけを少なくして(暗闇では視覚が正しい情報を提供してくれるという保証がない)体性感覚や前庭感覚への依存度を高めます。

不安定なバランスディスク上などでは体性感覚情報は必ずしも信頼性の高い情報を伝達してくれないので視覚や前庭感覚への依存度が高くなります。

ここでRomberg試験へ話を戻すと、Romberg試験とは閉眼時の動揺をみる評価です。

つまり、姿勢制御における視覚をシャットダウンするわけですね。そうなると重みづけは変化し、前庭感覚と体性感覚への依存度を脳は高めます。

ここで疑問に思った方もいると思います。Romberg試験陽性=脊髄性失調と決めつけるのにはまだ早くないか?と。前庭性運動失調はどうなんだ?と。

そもそも理学療法士が診断が下る前に患者さんを評価することはほとんどないと思うので脊髄性運動失調と前庭性運動失調の鑑別などする必要がないかもしれませんが、原理上は疑いは捨てられません。ここではそう考えて話を進めます。

一旦ここでまとめるとRomberg試験は

閉眼にすることで視覚への依存度を低くし、体性感覚・前庭感覚への依存度を高め、動揺が増加するかをみる。
そして結果の解釈として動揺が増加するようであれば前庭感覚・体性感覚どちらかに問題がある可能性を示唆する。
問題がなければそもそもの運動失調の原因は小脳性である可能性が高い。

ということになります。

Romberg試験の先を深堀する

そもそも理学療法士が評価する時点で脊髄性の運動失調か前庭性の運動失調化を鑑別する必要性が高いかといわれると低いと思います。

ただ原理上否定できないのでRomberg試験の延長で脊髄性運動失調と前庭性運動失調を鑑別していく方法を挙げます。

①出ている症状を比較する

脊髄性運動失調の主な症状としてRomberg試験陽性の他に、洗顔現象(顔を洗おうと一時的に視覚を奪うと倒れそうになる)、踵打ち歩行(体性感覚が障害されることによる)があります。

踵打ち歩行は膝を必要以上に高く上げ、前に放り出すようにしてパタンパタンと歩く歩行といわれ、強く叩くことによって障害された体性感覚に入力を入れようという要素と、そもそも体性感覚障害によって適切に運動をコントロールできないという2つの要素によって構成されていると考えられています。また、歩行時に視覚を利用して歩くため、目線が足下にあることも多いようです。

それに対し、前庭性運動失調ではRomberg試験の際に

身体動揺は閉眼後に大きくなるが転倒することはない¹⁾

とも言われています。また前庭系は目の動きとも強く関連があるため障害が起きると眼振がみられることも多いです。
また、前庭系特有の症状としてはめまい・耳鳴りなどの前庭系機能不全によるものがあげられます。

そして起立・歩行時の平衡障害が著明になり、支持基底面拡大・千鳥足の歩行がみられることもあります。

これが大まかに症状から推し量る方法です。

②評価する

体性感覚性なのか、前庭性なのかの鑑別が必要な場合、評価をする方法もあるでしょう。

深部感覚検査をすればよいのです。深部感覚に異常があるということはそれは脊髄性の運動失調、異常が無いようであれば前庭性の運動失調といえるでしょう。

ただ、体性感覚にはこの後にも問題があります。体性感覚性といっても末梢神経性なのか、それとも脊髄後索性なのかというところです。(こんな鑑別が必要になることはもっとないかもしれないですね)

その場合は痛覚もしくは温度覚の検査をしてみればよいと思われます。脊髄後索性であれば温痛覚は正常なはずで、末梢神経性であれば温痛覚も障害されている可能性が高いです。

ロンベルグ試験は脊髄性運動失調と小脳性運動失調の鑑別に有用な評価だと思いますが、可能性としてはもう少しいろいろあるということがお分かりいただけたでしょうか?

またRomberg試験の評価原理も説明してみました。

安易に陽性=脊髄性 陰性=小脳性とせずに落ち着いて他の症状や評価と照らし合わせていく必要がありますね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

1)中村隆一他:基礎運動学. 医歯薬出版株式会社 第6版, 2003

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