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日本家屋でありながら、ブルーやイエローの照明が施された棚の中には、およそ統一感のない品が陳列されている。 本人は挑発的とも取れるような、でたらめな格好をしているが、商品管理に関しては完璧な状態を保つようにしているらしい。室内の温度と湿度は快適に保たれていた。 津軽三味線は犬の皮を張るため、管理するには湿度にも温度にも気を使う。そのため零斗はそうしたものを、肌で感じ取ることができるようになっていた。 だがやはり製品の統一感のなさに、零斗は大いに戸惑い、そして店の雰囲気の
最悪だ。 零斗(れいと)は今日の自身の演奏を思い返して溜め息をついた。 十一月の木枯らしの吹く晩秋。めっきり冷え込む空気は、酔った頭をまたたくまに冷やしていく。モスグリーンのハイネックの薄いセーター、黒のジャケットに紺色の姿デニム姿。特に目立った服装でもなければ、泥酔しているというわけでもない零斗に、視線を向けるものなどいない。 零斗は再度深く溜め息をついた。 まったく思い通りの演奏とはならなかった。 ミスした箇所などどこにもない。ただ聞くだけならまったく問題のな
薄紅の布がついたはたきを振るった瞬間、その戸棚の隙間で羽根を休めていた小鳥が飛び立った。漆黒の翼を広げて天井高くへと舞い上がる。成鳥だが大きさは大人の女性の拳程しかない。口ばしが木の実を食べて染め上げたかのように赤い小鳥だ。 飛びまわるには自由さを欠いた閉鎖的な室内をくるくると旋回して飛ぶと、自らを追い立てた 主(あるじ)の頭上近くを飛び回った。 主人ははたきを振るっていた手を止めて微苦笑を浮かべる。 「ごめんよ、クロガネ! そこにいるのを知らなかったんだ」 はたきを