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短編集

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読み切りを中心とした短編集。
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#ファンタジー

孤独になれた魔女は愛を知らない

 僕の母親はジプシーだった。ゆえに安住の地はなく、家という概念を持たない生活をしてきた。  街から街へ、時には小さな村へと渡り歩く日々。そんな生活の中で、母はどこの誰とも知らない、名前すら名乗ることのなかった一夜の相手の子を産んだ。それが僕だ。  母は快活に笑い、「あんたのパパは妖精だったのよ」という日もあれば、「あんたの父親はとある国の国王様だったの」と、ありもしない嘘を謳うように言い続けていた。いつしか僕は本当の父親を尋ねる事をしなくなった。  僕が六歳になった頃、母に