「#文化観光 高付加価値化 | 事例集 note」は地域の豊かな文化の価値を伝え、経済を動かし、文化の継承を目指す 文化観光 高付加価値化 の実践事例をご紹介するnoteです。第一回は 文化庁 文化観光担当 の中の人による「文化観光とはなにか」の紹介記事です。

はじめまして、
文化庁 文化観光推進コーディネーターの丸岡直樹と申します。
文化観光という言葉を初めてお聞きになる方も多いと思いますので、
実例はこれからのnote投稿にお任せしまして、どんな想いを込めた言葉なのか、どのように進めているのかをご説明いたします。

文化観光とは? -文化を理解するための観光

「文化観光」については、文化観光推進法の成立・施行、文化庁における担当部署の新設などにより、政府としてその推進を一層加速させようとしているところです。

その背景には、「文化継承の危機」があります。
社会の状況は日々変化し続けています。
・過疎化・少子高齢化による地域活力の衰退
・自然災害や、新型コロナ感染症の影響
・文化継承の担い手の不足
などによりローカルの豊かな伝統や文化が消滅の危機にひんしています。

この大きな問題に対しての一つの答えが「文化観光」だと、
私たちは考えています。

「文化観光」とは? =文化を理解するための観光

地域に脈々と引き継がれてきた文化や、今ここで生み出される文化、その担い手の方々。これらの大切な存在を活かし、その本質を伝える文化観光は、触れた人の心を動かし、文化の大切さを伝え、文化の支え手を増やす力になれるはずだと考えています。「文化観光」の詳細な定義については、法律を引用しておきます。

「文化観光」とは、有形又は無形の文化的所産その他の文化に関する資源の観覧、文化資源に関する体験活動その他の活動を通じて、文化についての理解を深めることを目的とする観光をいう。(文化観光推進法第2条)

法律を直接読んでくださる方はこちら↓

今までの観光との違い

特に大切にしている点、特に今までの観光よりも重視していることがあります。それがこちらの2点。

図1

文化を深く理解することのむずかしさ

①文化をより深く理解できる観光
文化的価値を伝えること・理解することは決して簡単ではありません。
専門的な知識がないと、どういう意味を持つのかわからない。ということはよくあります。
(例)能 の演舞を愉しむためには、能の世界観、表現の仕方を知らないと何が行われているかわからない。

特にインバウンドからすれば、経験してきた文化的背景も違うので、
日本語の文章をただ英語に置き換えても、「??」ばかりになってしまいます。
(例)江戸時代中期を Mid-Edo period と言われてもわからない。

伝わる人にだけ伝わればいい、という区切りをつけるのは簡単ですが、文化の支え手となる可能性のある方に、価値を伝えないのはもったいないですし、観光客からしても、せっかくの体験の価値が下がってしまいます。

価値を理解してもらうためには、文化の価値を理解しながら、相手に伝わりやすいストーリーに表現しなおすといった、伝える技術や外の視点が必要です。

一方で、わかりやすく、注目を集めやすくしようとしすぎるがゆえに、
文化についての歪曲、誤解を招くような表現になってしまっていては本末転倒です。

多くの方に知ってもらいたい気持ちは山々ですが、活用を推進するあまり誤解を招く発信とならないように、文化について深い知識を持っている専門家の視点もまた必要になります。

▼相手の視点にたった多言語化については、文化政策や創造経済の研究者である太下先生のインタビュー記事もご参照

図2

何のために文化観光をすすめるのか?

②文化への再投資・好循環
文化観光は、文化に触れに来る観光客に文化を理解してもらい、喜んでもらうことも重要ですが、それが文化の担い手に還元されてこそ、文化の継承という目的を果たすことができます。

文化が継承されない限り、今は観光客に喜んでもらえても、いずれは文化自体が廃れてしまい、持続可能なものとできません。

観光客が文化に触れて感動する
└→その感動の対価を支払う・文化について発信する人が増える
 └→訪れる人が増え地域が活性化する
  └→地域や文化の担い手に還元される
   └→文化が更に育まれる(→更に触れる人の感動を生む)

そんなグッドサイクル(好循環)によって、文化の継承を目指していきます。

▼文化観光の好循環 の図。

図3

どうやってすすめるのか? -高付加価値化事業

文化観光のすすめ方の一つとして、文化資源を高付加価値化することが考えられます。ウィズコロナ・ポストコロナの時代においては、多くの観光客を誘客するやり方が難しくなり、一人当たりの単価を上げていくことが重要となりました。こうした中で、世界の富裕旅行市場の成長が予想されており、今後より多くの富裕旅行者を日本に誘致する余地が大きいことが指摘されています。

また、富裕旅行者は、単なる名所見学や文化体験、食事を超えた体験として、コンテンツの背後にある歴史や哲学、美学も含めて本質を理解し、自身の知識や関心事と接続できるような体験を求めていることも指摘されており、文化をより深く理解する「文化観光」との相性が良いと考えられます。
このため、文化庁では、「文化資源の高付加価値化促進事業」を実施し、高付加価値化のモデルとなるような事例の創出に取り組みました。

本noteでは、この事業に参画した専門家の目線から事例を紹介していきます。ご自身の関わる文化・地域の課題を思い浮かべ、「高付加価値化」によりその解決を図ることができるかを考えながら、ご覧いただければありがたいです。

▼採択地域一覧

・ウィズコロナに対応した文化資源の高付加価値化促進事業採択事業(34地域
・上質な観光サービスを求める旅行者の訪日等の促進に向けた文化資源の高付加価値化促進事業 採択事業(22地域

丸岡 直樹                               文化庁参事官(文化観光担当)付文化観光推進コーディネーター

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