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苦しむ日本の花火に一筋の光が見えた熱海の花火大会

▶エリア:静岡県熱海市
▶事業名:静岡の伝統花火を守り抜く。静岡花火の競演会 in 熱海

日本の花火の現状

日本の花火。
約400年の歴史を持つ花火は、脈々と製造技術が伝承され、優れた芸術性が世界から賞賛される「伝統芸術」になっている。各地で開催される花火大会は約1,500ヶ所、約7,900万もの動員、経済波及効果は1兆円を超えると言われ、地域文化や経済へのかなりの影響力がある。(2020年 日本花火推進協力会及び日本経済研究所調べ)

ところが今、花火を取り巻く状況は難題を抱え、長引く新型コロナウイルスの影響もあり、今では業界自体が生きるか死ぬかの瀬戸際まできている。特に小規模の花火事業者は請負業者として開催判断ができない弱い立場にあって、玩具花火から打ち上げ花火まで中国産の花火が数多く入るようになってきて、風前の灯火となってしまっている。

今回は花火を伝統芸術として継続的に続ける方法があるのか、静岡県熱海市での新たな花火大会を通じて得た示唆を整理して、花火文化を守る一助にしたい。

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花火を取り巻く課題

そもそも花火の課題とは何だろうか。大小様々な課題があるが、ここではコロナ禍で特に浮き彫りになった3点を特に伝えたい。

- 花火大会の収入モデルの膠着化
これまでの花火大会の収入モデルは企業からの協賛、自治体の補助金、来場者のチケット収入が一般的となっており、取組内容が長年固まってしまっているものが多い。特に来場者のチケットは無料や黒字にならないほど安いことも。要はお金を払って見るという感覚がまだまだ少ない。

- 結果的に花火事業者の立場が弱い
多くの花火事業者は請負業者として不利な立場に置かれている。例えば、花火大会は内容確定後に契約する商慣習が続いていて、契約前に見込み生産を行って、大会が中止されてもキャンセル料が支払われないケースも数多くある。

- 高付加価値に繋がる取り組みが少ない
音楽との共演など面白い取り組みも出てきているが、未だ各地の花火大会では打上発数を競い合うことが多い。花火の魅力が上がる掛け合わせの実績をつくり、主催者や事業者でアップデートが必要。

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新しい花火大会での取り組み

今回は静岡県を拠点とする株式会社イケブンが県内各地の花火事業者と共に静岡県熱海市で新たに花火大会を実施した。大きな試みとして、花火大会をマーケティング的な発想で捉えて、全体設計を大きく変えようという取り組みを行った。具体的な内容はこちらから。

お金の流れ方:
文化庁の事業ということで一定の補助金はありつつ、それを原資に来場者(企業スポンサー含む)向けにこれまでにない高価格な観覧席をつくって販売することを目標にした。具体的には、花火を楽しめるプライベート空間をつくり、10,000円から、VIP席の100,000円の観覧席を提供。結果的に合計数百席用意した観覧席が販売終了日前に完売した。

花火コンテンツの見せ方:
音楽と花火を楽しむいつもと違う感動体験をコンセプトに、特別なコンテンツを用意。静岡の8花火事業者が魅せる花火に加えて、共演する阿波踊りや和太鼓等のステージパフォーマンス、オリジナル音楽とのコラボレーション。さらには、熱海名物の干物とドリンク付きのコンテンツを造成。

情報の届け方:
コンテンツが刺さるターゲット層に対してのプロモーションにも注力し、花火大会の特集サイトや広告用の動画を制作した上で、独自のSNSアカウントの運用やチケッティングサイトとの集客、熱海市の公式サイトからの流入導線を確保。

▶特集サイト

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実施して得たこと

今回の取り組みは花火業界の課題を解決する一つの光にもなるかと思い、その示唆について箇条書きになるが記載してみる。

・理想とするお金の流れの全体像を描いたことが大事。急激には変えられないものの、関係者の中で中長期の合意できる方針をつくって前に進めていく。
・イベント全体を俯瞰的に見てプロジェクトマネジメントができる体制の確立が重要。
・提供している観覧席や企業協賛のメニューなどの見直しを市場ニーズを踏まえてアップデート。
・コンテンツの磨き上げは共感できるシンプルなコンセプトとストーリーの中で成り立つ。
・花火大会は開始前の時間を引き伸ばして楽しめる雰囲気をしっかりつくって来場者に消費してもらう。
・分かりやすい特集サイト制作、SNSの運用(広告含む)、PR用の動画制作を用意できるだけでターゲットに圧倒的に届きやすくなる。そのために利用できるリソースを洗い出すこと。

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今後の展望

今回は花火事業者が主催した数少ない花火大会、更には花火と音楽や伝統芸能、食が入ったてんこ盛りに近い掛け合わせの花火大会になっていて関係者の中でも観覧席のチケットが完売するかお客さんの反応はどうかと不安なことは多々あった。結果を見れば杞憂に終わるほどで、地域内外のメディアに多く取り上げられ、注目される新たな取組となった。花火大会で新たな取組を行っていく恐怖はあるが、何もやらなければただ衰退していく可能性が高い。各地の花火大会の主催者や関係者にもこの取組が共有され、吸収できるところはどんどん取り込んでいける内容なので各地の課題解決の糸口になれればと思う。

オマツリ山本プロフィール写真

山本陽平
株式会社オマツリジャパン 共同代表 取締役
2009年NTT東日本で省庁等との渉外業務、途上国を中心とした海外でのインフラビジネスの新規事業立ち上げや経営管理の業務に従事。現在は全国各地の祭りをサポートする専門会社株式会社オマツリジャパンを共同創業し事業拡大に奮闘中。これまで約80カ国を巡り、各地の祭りや登山、ダイビングが趣味。
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