倖月一嘉

小説家。第12回講談社ラノベ文庫新人賞《佳作》受賞。受賞作『双黒銃士と銀狼姫』は発売中…

倖月一嘉

小説家。第12回講談社ラノベ文庫新人賞《佳作》受賞。受賞作『双黒銃士と銀狼姫』は発売中。 ※一部リンクにAmazonアソシエイトを使用しております。 Info▸https://lit.link/kouduki1ka

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長編小説「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第1話

プロローグ 夜のまにまに 「永遠を生きる覚悟はあるか」  と、その人は言った。  月のような人だった。  闇に溶けるような黒い髪に、真っ黒な着流しを着ていた。夜を切り取ったような出で立ちとは反対に、肌は陽を浴びていないかのように青白く、顔立ちは精悍ではないけれど端正で、路地の無機質な電灯の光が、佇むその細身を月のない夜にぼんやりと浮かび上がらせている。  そんな美しい人を、優奈は血溜まりの中から見上げていた。  そんな優奈を、二つの赤い瞳が見下ろしていた。 (永遠

    • 2024年抱負

      謹賀新年。あけましておめでとうございます。 旧年中は大変お世話になりました。どうぞ本年もよろしくお願いいたします。 と、定型の挨拶を済ませたところで、2023年の振り返りと2024年の抱負――と言う名の、月報年跨ぎver.になります。 2023年振り返り執筆について  当社比、色々書いた一年でした。  2022年に書籍デビューしたものの結果が奮わず、その後、作品の作成過程を変えて迎えた、試みの一年でもありました。 ▼短編小説「終の花憑き」 ▼短編小説「あーした天気に

      • 【歳末企画】読了本紹介2023

        みなさま、2023年お疲れ様でした! 2023年に読んだ本の中から、これは特によかったというものを紹介いたします。 ぜひ、今後の本選びに役立てていただければと思います。 ではでは、数も多いのでサクサク行きましょう! ライトノベル十五の春と、十六夜の花 -結びたくて結ばれない、ふたつの恋- ライトノベルの皮を被った巧妙な恋愛伝奇ミステリです。 初っぱなから寝起きを襲うヤンデレヒロイン……序盤の強烈なラブコメのノリに、ありがちなラブコメラノベなのかなという先入観を植え付け

        • 【月報】2023年11月→12月

          こんにちは、倖月です。 11月の振り返りです。 1. 2023年11月1-1. 運命の恋コン 出しました。 今回、完成度や区切りの良さは完全度外視しています。 というのも以前、「賢いヒロイン」中編コンテストに参加した時にそれらは一切評価ポイントに成り得ない。実質企画書コンテストみたいなものと感じたためです。 そのためものすごい中途半端なところでぶん投げてますが、ご了承下さい。 現時点で続きの執筆予定はありません。 内容が内容のため執筆カロリーが異様に高く、また中編用

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        長編小説「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第1話

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          【月報】2023年10月→11月

          こんにちは、倖月です。 10月の振り返りです。 今月は先に言い訳させて下さい。 頑張りたいとか言った10月ですが、色々あって月初にメンタルブレイクし、あんまり頑張りませんでした。 現状やっていることは全て自己責任なので、誰に謝る必要もないのですが、頑張れなくて大変申し訳ありません。 1. 2023年10月1-1. note創作大賞2023最終選考落選 落選でした。 まぁ連絡が来ない時点で察しというか。 発表当日は甥っ子の誕生日プレゼントを見繕うためにトイザラス行った

          【月報】2023年10月→11月

          『双黒銃士と銀狼姫』今後について

          第12回講談社ラノベ文庫新人賞《佳作》受賞作として、講談社ラノベ文庫より2022年5月に出版された拙作『双黒銃士と銀狼姫』について、お知らせします。 X(旧Twitter)等で何度か触れてきましたが、本作は事実上の1巻打ち切りです。続刊の予定はありません。 本書を購入して下さった皆様、面白いと言って下さった読者様。 力及ばず、続きをお届けすることが出来ず、本当に申し訳ありません。 続編について、私的に執筆しWeb等で公開することは問題ないと編集部より合意を得ていますが、

          『双黒銃士と銀狼姫』今後について

          【月報】2023年9月→10月

          こんにちは、倖月です。 9月の振り返りです。 1. 2023年9月1-1. note創作大賞2023中間選考通過 中間選考が発表されまして、まさかまさかの通過していました。 スキを押してくださった方、読了してくださった方、本当にありがとうございます! 正直なところ、硬派な出版社やレーベルが軒を連ねる中、お仕事部門の中ではあやかしとかいうファンタジー要素ごりごりに入れてしまったし、お仕事といいつつライトミステリ要素も入れてるし、カテエラだろカテエラと思って期待せずに発表

          【月報】2023年9月→10月

          【月報】2023年8月→9月

          こんにちは、倖月です。 8月の振り返りです。 1. 2023年8月1-1. 公募原稿 無事終わりまして投げてきました。 どこに……というのは伏せておこうかなと思いますが、締め切りからして応募先は絞られるので、察する方は察して下さい。 この子が日の目を見る日は来るのかなー? なお、この原稿やってただけで8月が吹き飛んだので、他にお知らせできることがありません。悲しい。 ――と、8月までで年初にやろうと決めたことが全て終了したので、ここまでどれくらい作業したのかまとめてみ

          【月報】2023年8月→9月

          【月報】2023年7月→8月

          こんにちは、倖月です。 7月の振り返りです。 1. 2023年7月1-1. noteオフライン創作会 突発的にですが参加してきました。 今回も色んな作家さんとお話し出来て楽しかったです! イベント最後に行われたクロストークも非常に有意義でした。 そちらはイベントレポートもあるのでぜひ。 noteさんの方で、今後も定期的に創作会を開催していくようなので、毎回とはいきませんが、機会があれば参加したいな~と思います。 1-2.note創作大賞 に応募しました。応募作はこ

          【月報】2023年7月→8月

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」最終話/第27話

          エピローグ ようこそ  その日、略取誘拐罪および暴行罪の現行犯で逮捕された真垣陽一は後日、殺人罪で改めて逮捕された。  通称『屍鬼事件』。  世間を騒がせたその一連の事件の死者は計十四人にも及び、近年稀に見る大事件となった。  けれどその猟奇性については、度々メディアで取り沙汰されることはあれど、その事件の規模に反して詳細は報じられていない。  吸血鬼――人ならざるモノが関与したこの事件を警察、ひいては国は、ただの連続殺人事件として処理している。といっても、人ならざ

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」最終話/第27話

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第26話

           キラキラと、細雪のようにガラスが舞う。  頭上から降ってきたその一言と共に、優奈を拘束していた綾子の身体が吹き飛んだ。  綾子と共に、拘束されていた優奈も地面を転がる。強かにコンクリートに身体を打ち付けるが、綾子の拘束は外れた。 「優奈さん!」  真垣が優奈を呼ぶ。優奈が自由になったことへの焦りなのか、それとも身を案じてのことなのか――定かではないが、真垣は一歩踏み出し、しかし駆け寄ることは敵わなかった。  真垣が頭上を見上げ、その視線の先を優奈も追う。  そこ

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第26話

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第25話

           優奈は息を切らして、倉庫内を彷徨っていた。  広い。相当に広い。多くの備品がそのまま放置されていた事務所内と違って、倉庫は比較的がらんどうとしていた。しかし、ところどころにコンテナやそれを積み上げる棚があり、視界と行く手を遮っている。 「っ、は……」  焦りに息が乱れる。出口はどこだろう。  おそらく端に行けば扉の一つや二つはあるだろうけど、間違えれば袋の鼠になることは確実だった。たとえ外に出られたとしても、優奈は身一つ。スマホも何も持っていない。どうやって逃げて、

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第25話

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第24話

           薄暗い廃屋で、優奈は意識を取り戻した。  途端、鼻を突いた埃っぽい空気に眉を顰めつつ、瞼を開ける。 「あぁ目を覚ましましたか」  同時に耳朶を打ったのは、聞き覚えのある声だった。 「気分はどうですか? 全然目を覚まさないから、殺しちゃったのかなって少し不安になりました」  反射的に、声の方を見る。 「ま、真垣さん……?」 「やだなぁ、下の名前で呼んで下さいって、前から言ってるじゃないですか。名字だと、妻と区別が付かないでしょう?」  そこにいたのは仕立てのいいス

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第24話

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第23話

           やかんを火にかけながら、流し台で急須を洗う。  燃える火の音と流れる水の音を聞きながら、優奈は考えていた。  優奈を襲ったのは吸血鬼で間違いない。ただその吸血鬼が真垣だとすると、不完全ながらもアリバイがあって一連の事件の犯人だとは断定できない。任意同行を求めることも可能だが、証言の裏付けもない。更に物証もないとなると、嫌疑を否認されればそれまでだろう。 (何か……)  なんだか、引っかかるような気がした。  喉のところに何かが詰まって、飲み込めない感覚。まるで、小魚の

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第23話

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第22話

          第四章 ヴァンパイア・ブラッド 「そっか、全部思い出したんだね……」  日も昇った、翌午前。事務所の居間にて相対した優奈に、帆理はどこか困ったような、それでいてホッとしたような微笑を見せた。  昨夜はもう遅く、電車もないことで事務所に一泊した優奈は、昨日と同じ服を着たまま、深々と頭を下げた。隣には、あぐらに頬杖を突いた新の姿がある。 「はい……その、色々とご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」 「いやいや、優奈ちゃんが謝ることなんて一つもないよ。吸血鬼になったの

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第22話

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第21話

          幕間三「お風呂、ありがとうございました」  深夜。借りた浴衣を着て居間に戻ってきた優奈に、新は「おー」と覇気のない返事をした。相変わらず縁側に横になったまま、動く気配がない。  髪から滴る水をタオルで吹きながら、優奈は尋ねる。 「お風呂、入らないんですか? お湯、冷めちゃますよ?」 「俺は後でシャワーでも浴びるからいい」 「折角お湯張ったんですから入ればいいのに。ゆっくりしますよ」  きょとんとする優奈に、新は「お前なぁ」と呆れた様子で呟く。ごろりと半身で振り返って、

          「ようこそ、妖崎あやかし法律事務所へ」第21話