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童話『まりえちゃんの魔法』

今日は新作の童話を作りました。童話は作るのがとてもむずかしく、できあがって賞に応募しても、入選するのは、至難の業です。なのでもう童話は賞には応募せず、そのうち童話だけで自費出版できるように、自分用に書こうかと思っています。そんな童話ではありますが、よかったら読んで頂けますと、嬉しいです。

『まりえちゃんの魔法』

 まりえちゃんとゆみちゃんは、大のなかよしです。二人とも同じ幼稚園に通っていますが、まりえちゃんの方が一つ上のおねえさんです。

まりえちゃんのおかあさんも、ゆみちゃんのおかあさんも仕事をしていて、二人をむかえにくるのは、夕方の6時ごろです。そのころになると、ほかの子たちは、みんなおかあさんたちがむかえにきていて、いつも最後まで幼稚園にのこっているのは、まりえちゃんとゆみちゃんだけです。

 二人は、おかあさんたちがくるまで、いっしょになってあそびました。おにごっこをしたり、おえかきをしたり、つみ木であそんだり、いろんなあそびをしました。

そんななかでも、ゆみちゃんが一番好きなのは砂場での砂あそびでした。砂でいろんなものをつくりましたが、まりえちゃんのつくる砂のお城は、まるで本物そっくりのお城で、とてもよくできていました。ゆみちゃんはいつか、まりえちゃんがつくるようなお城をつくりたいと思っていました。

 そんなある日のこと。まりえちゃんの家がひっこすことになりました。二人は、はなればなれになってしまいます。ゆみちゃんは、なきながらいいました。
「もうあそべないね」
それをきいたまりえちゃんは、ちいさなこえでいいました。
「わたし、魔法が使えるの」
「魔法?!」
「しっ、しずかに。だれにもいっちゃだめよ」
ゆびをたてて、まりえちゃんは、まわりを見回しながらいいました。
「わたしにあいたい時は砂場でお城をつくるのよ」
「お城を?」
「そう、お城よ。わすれないでね!」
そういって、まりえちゃんは、ひっこしていきました。

一人になってしまったゆみちゃんは、さびしてくさびして、ないてばかりいました。でもないていても、しかたないことにきづいたゆみちゃんは、まりえちゃんの言葉を思いだしました。

『わたしにあいたい時は砂場でお城をつくるのよ』

そこでゆみちゃんは、まりえちゃんがつくったようなすてきなお城を、いっしょうけんめい砂でつくりました。
 するとどうでしょう。砂のお城の塔にするすると赤い旗が、かかげられました。とたんにどこからか、ラッパの音が、ひびきわたりました。見ると、塔のまどのそばには、まりえちゃんがいました。頭には王冠をのせ、ふわふわのドレスをきています。
「まりえちゃん!」
ゆみちゃんがさけぶと、いつのまにかゆみちゃんも、砂でできたお城の中にいました。ゆみちゃんは、まりえちゃんにあうことができました。
「またあそべるね」
「そう、あそべるわ」
そうして二人はお城の中で、たのしくすごしました。
そろそろおかあさんが、むかえにくるころになると、二人は砂の城のそとへでることにしました。その時、まりえちゃんがいいました。
「あのね。この魔法は一回きりなの」
「一回きりってことは、もうあえないの?」
ゆみちゃんは、さびしそうにいいました。
「わたしにはあえないかもしれないけれど、でもお城をつくる魔法はきえないわ。さびしくなったらお城をつくるのよ、ゆみちゃん」
「でも、あえないんでしょ?」
「わたしにはね」
そういって、まりえちゃんは、にこにこわらいながら、城からさっていきました。
 それから、ゆみちゃんは、ひとりぼっちになってしまいました。さびしてく、さびしくて。でも、まりえちゃんの『お城をつくる魔法はきえないわ。』といった言葉が気になって、一人でまた砂のお城をつくりました。

 すると今度は、お城の中に小鳥がやってきました。小鳥はいいました。
「ここはなんて、くらすのにちょうどいい城なんだろう」
「どれどれ、そんなにいいところなら、ぼくにもすまわせろ」
そういってやってきたのは、猫でした。
ゆみちゃんは、かれらが気にいるように、いろんなものを砂でつくってあげました。するとかれらは、とてもよろこびました。
 そして次の日も、そのまた次の日も、ゆみちゃんがお城をつくると、いろんな動物たちがやってきました。ゆみちゃんは、さびしいどころではなくなりました。そうして、ゆみちゃんが、年長さんの幼稚園生になったころ、一人の女の子が入ってきました。その子も、ゆみちゃんのように、おかあさんのおむかえの時間がおそい子でした。
 そこでゆみちゃんは、まりえちゃんがしてくれたように、いっしょに砂のお城をつくりました。でもお城の中には、動物たちもやってきません。ラッパの音も鳴りません。でも、その女の子は、ゆみちゃんのつくるお城を見ていいました。
「ゆみちゃんって、すごいね。こんなにすてきなお城をつくれるなんて、まるで魔法みたい」
 その時、ゆみちゃんは、はっとしました。いつのまにか、まりえちゃんの魔法が、じぶんの魔法になっていたことに。でもその魔法も、いつかこの女の子の魔法になっていくのかもしれない。そう思うと、ゆみちゃんはとてもふしぎな気もちになりました。

(おわり)


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