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頭の拍が分からなくてズッコケる邦楽の曲

「頭の拍が取れなくなってズッコケる」という楽曲を邦楽からご紹介したい。邦楽で選んでみると「リズム」にこだわりのあるアーティストやバンドのラインナップのようになって、我ながらちょっと感心してしまった。

まずは「頭の拍が分からなくなる現象」について、大変に良い動画を見つけたのでご覧ください。かの有名なビートルズ『ドライブ・マイ・カー』のイントロ。

ギターが「8分音符1つ前から始まる」という拍で取らないと、歌が入ったときに頭拍でズッコケるというのを大変に分かりやすく説明してくれている。ギターを教えるプロの方のようだ。良い先生である。

洋楽編は以前に書いた記事があるので、そちらをお楽しみください。

邦楽には以下のような曲がある。めんどくさい曲ばかりで、「日本人って難しいの好きだよなぁ」とつくづく思った。

1.はっぴぃえんど/抱きしめたい

これを今でも「裏拍から始まる」と思っている人がいるんだけど、裏拍ではない。「前の小節の4拍目から始まる」というのが正しい。ベースの「デード、ドー、デドットドー」の「デード」は8分音符2つ分でここが4拍目。直後の小節の1拍目からドラムがバスドラから「ドンドンタ」と叩き始めるので、それに合わせるとぴったり歌の頭で揃う。慣れるとすごく気持ちいいんで試してみてほしい。

2.Char / Smoky

これも有名な曲なので知っている人も多いと思う。最初の「チャッチャッチャ」が「1小節目の1拍目の16分の裏拍」から始まるという難易度の高い曲。どうしてこんなことを考えてしまったのか不思議だ。最初のギターを頭拍で取るとイントロの全楽器が入ったところで揃わなくなる。2分過ぎくらいのギターソロ終わりでもう一発来る。ハイハットの「チッチ」ってのが頭拍を出してくれてるんで、それに乗っかるとバッチリ合うようになる。これもキマると楽しい。

3.サディスティック・ミカ・バンド/黒船(嘉永6年6月2日)

非常に難度が高い。一聴しただけで拍の取り方が分かる人っていないんじゃないかと。「何が起こった?」と思った途端に曲が始まってしまう。ポップなメロディーのインストだけど「8分の9拍子」という鬼めんどい曲。8分音符9コで1小節。
最初のドタバタしてチーチーとハイハットが開くドラムパターンが激ムズに感じられるが、これは「8分音符13コ」で構成されている。なんだろう、「4分の6+8分音符」みたいな。小節の頭で合わせるには最初の「ドタタタ」を聴いてから11コの8分音符で取ること。かなり難しいけど、揃うと「アハ体験」的に「キマる」ので試してみてほしい。

4.Yellow Magic Orchestra / Day Tripper

「頭拍を見失う邦楽」としては一番有名だと思う。8分音符1つ前から始まるパターン。強烈なベースと裏拍で鳴るクリック音。「わざと間違わせよう」としてやってる。やがて入ってくるドラムも「4拍目の裏にスネアが入る」という定型を逸脱したパターン。慣れるには譜面に起こすしかないと思う。難易度では最高。ライブではクリックが鳴っているんで、その音源が入手できたら聴いてみるのもいいかもしれない。

5.Boom Boom  Satellites / Kick It Out

CMでも頻繁に使われていて非常に有名な曲。完全に頭拍から始まっている。「ジャジャッ!」っていう出だしは1小節目の1拍目から。ところが、ギターのカッティングで惑わされて裏拍に取らされてしまう。これに慣れる方法は簡単で、右手か左手で8分音符を叩くなりしながら「いち、に、さん、し」って口で言う。これはミカバンドとかYMOと違って、ズッコケないようにリズムを取るのは簡単だからトライしてみてほしい。

6.GLAY/誘惑

「カラオケで歌い出しが難しい曲」などと言われることもある大ヒットナンバー。意識しないで聴いていると歌が入るところでズッコケてしまうが、これまでと違って構造は簡単。ていうか、今までが難しすぎんだよ。なんだよミカバンド。高橋幸宏。
最初のドラム「4分の4」の小節が2小節あり、次にギターリフの「4分の7」の小節が3つ、「4分の6」が1つ。さすが王道ポップスなだけあって分かりやすい。

7.宇多田ヒカル/誓い

いったん分かってしまえば悩むことはなくなるけど、見失うと「リズムが取れない」事態に陥る曲。
この曲は「8分の12拍子」で作られている。有名どころで言うとビートルズの「You've Got To Hide Your Love Amay」「Norwegian Wood」。数多くの楽曲で採用されているリズムパターンなので、ある程度音楽を聴いている人にとっては全然どうってことないかもしれない。
ここではボーカルがリズムから離れ気味(厳密には離れてない)に歌っているので、なおのこと頭拍を見失いがち。カバーして歌っている投稿動画に分かりやすいのがあったのでご覧ください。

8.ゴメス・ザ・ヒットマン/饒舌スタッカート

あまり知名度が高くないので「知らないなー」って人も多いかもしれない。初耳って人はぜひ「ワン・ツー・スリー・フォー」(日本語でもいいんだが)とカウント取りながら聴いてみてほしい。最初の1回だけは、ほぼ絶対に騙されるので経験してみよう。

騙されていただいただろうか。ボーカルが入っても気が付かなかったって人も多いと思う。ドラムが入ってやっと分かる。
「2拍ズレてる」
最初のギターが「3拍目から始まる」という仕掛け。「デロデロデー」ってギターの「デロデロ」のところが3拍目・4拍目。こういう事例は他に聴いたことがない。良く出来てると思う。
ゴメス・ザ・ヒットマンはいわゆる「隠れ名曲」の多いバンド。興味が出たらサブスクでいいんで聴いてほしい。

9.星野源/肌

わざわざドラマー(河村カースケ、名手である)がカウント出してくれてるのに、それでも頭でズッコケるという変な曲。カウントが4つ出た後のストリングスとドラムのシンバルのところで見失ってしまうんだが、実際には「カウント4→5拍(5拍目がシンバル)→1小節目1拍目」となっている。単純そうに見えてそうでもないってのが「日本人」って感じがする。

(日本人って難しいのが好きなんだよ、きっと。星野源も一筋縄ではいかない人で、難しいことたくさん考えてんだろうなと思う)

10.米津玄師/海の幽霊

俺たちの米津玄師、登場である。1コーラス目の「ほしがー」のところでズッコケると思う。実はここで「8分音符1コ」付け足してるのだ。さっきの星野源の曲と同じで、ストリングスがグリッサンドで上がってくるところ。「ギュイーン」としか鳴ってないので、いったいどうやってテンポを取ってるのか分からん。カラオケでこれ歌う人も悩んでるんじゃないかと想像する。別の記事を用意して書こうかと思うが、この人は別次元の天才性を感じる。

楽しんでいただけたら幸いである。
最近調子に乗ってどんどん書いているので、またすぐお目にかかりたい。
よろしくお願いします。

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