お気に入りの靴で出かけよう。

一目惚れだった。ずっと探してた、黒のブーツ。

何度も探し回り、けれどしっくりくるものに出会えず。妥協して買いかけた靴もあったけれど、ラスト１点で傷があったりで、購入には至らなかった。

それが、今日たまたま帰りに寄った服屋さんで

「こ、これだぁぁぁ！！！」

と一目惚れした。ちょっと運命感じちゃったりなんかして。

程よい艶のある黒の合皮のブーツ。ヒールのデザインが可愛くて私の好みを反映させたようだった。軽くて柔らかくてふかふかで、たぶん、きっと、歩きやすそうな気がする。

たったそれだけ。たったそれだけのことで、その靴に出会うまで死んだような目をしていたのに、目に力が戻り、輝きを取り戻す。

この靴を履いて、どこに行こうか。
週末は服も探しに行こうかな。
自然を見に行くのもいいな。
カメラ片手に散歩もいいな。
お天気はどうかな？
メイクも変えようかな。
前髪切りたいな。
あの子元気かな？
会いたいな。

惰性でつけるテレビもやめて、ラブサイケデリコの懐かしいアルバムをかける。なんだか急に、どこへでもいけそうな気がした。

素敵な靴は持ち主を素敵な場所に連れて行ってくれるって、ヨーロッパあたりの言い伝えを思い出し、そっと声をかけてみる。

「あなたとっても素敵よ。これからどうぞよろしくね。」

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