見出し画像

金曜日は、いつも雨。

今週も雨だ。
真っ暗な空に、冷たい雨。金曜日は、いつも雨。
まるで私の心を映しているようだ。

華金だ!なんて言う予定もない。仕事は上手くいかないし、恋人ともなかなか会えていない。可愛いあの人みたいに文章が書けるでもなく、あの人みたいな強烈に引き付けられるイラストが描けるでもない。PV数を気にせず淡々と"好きだから"で続けられるあの人たちのような才能も、ない。ない。ない。何もない。

ないものを数えたってなんにもならないのに、いつもないものばかりに気が付いてしまう。空っぽでちっぽけな自分に不安になって泣きたくなるのに、上手く泣けない私の代わりに空が泣いてくれてるみたいだ。

♪悲しみの雨がやみ、希望の空の下で~
滲んだ視界をワイパーではねのけ、惰性でつけていたラジオから聴きなれた心地良い声が流れて思わずボリュームを上げた。
あぁ、私の空はいつだって太陽が燃えていないな。
そんなくだらないことを考えて、また無意識に数えてしまった ない をゴミ箱に投げ入れた。
彼との約束も、簡単に投げ捨てられてしまうくらいなら初めからしなければよかったのに。

「ごめん、今日無理になった。」

たった1行にすべてが詰まっている。
Uターンし、滲んだ道をひた走った。

金曜日は、いつも雨。涙の雨。

+++

今週も雨だ。
灰色の空に、冷たい雨。金曜日は、いつも雨。
まるで私の頭を冷やしているみたいだ。

彼が絵画で小さな賞を獲った。なんだか誇らしい。なのになぜ、私の心の奥底はもやもやとしているのだろうか。恋人が称賛されているのに、上手く祝えないでいる。
私と会わない間にどこぞの女の絵を描いていたから だとしたら、私の心は狭いのだろうか。芸術もわからぬつならない女だと笑うだろうか。
感情に任せて不満をぶつけてしまいそうになる。けれど、全身を打つ雨が待ったをかける。
冷静になって考えれば、何も怒ることも嫉妬することもない。小さくも美しく輝くトロフィーを、彼は私に一番に見せに来てくれたのだから。

金曜日は、いつも雨。冷静さを取り戻す雨。

+++

今週も雨だ。
薄灰色の空に、冷たい雨。金曜日は、いつも雨。
まるで全てを洗い流しているようだ。

久しぶりに顔を見て、声を聴いて、抱き合って、不安も不満も吹っ飛んでしまった。
なんと容易い。惚れるが負け。
ぽつりぽつりと心を見せれば、彼は静かに「うん。うん。」といって聞いてくれた。そうして彼もまた、心のうちを聞かせてくれた。
きっと足りていなかったのだ。心を見せ合うことが。

金曜日は、いつも雨。 地を固めるための雨。

+++

今週も雨だ。
青の覗く空に、パラパラと雨。金曜日は、いつも雨。
降り注ぐ雨粒は、まるで祝福の花のようだ。

たくさん喧嘩して、たくさん泣いて、何度も仲直りして、何度も抱き合って。
そうして私たちは、絆を深めてきた。しっかりと固まった地盤は、そんじょそこらのことではもう揺るがない。そう思えたから、私たちはふたりで分かち合って生きていくと決めた。

ざぁぁと鳴る音はまるで拍手喝采、降り注ぐは祝福の花。
こんなにも雨を美しく感じた日はない。
どこかで狐も嫁入りしているのだろうか。
私と一緒だね。

+++

やっぱり金曜日は、いつも雨。
時に冷たく時に温かく、包み込むは、雨。
はじまりの、雨。

サポートとても嬉しいです。凹んだ時や、人の幸せを素直に喜べない”ひねくれ期”に、心を丸くしてくれるようなものにあてさせていただきます。先日、ティラミスと珈琲を頂きました。なんだか少し、心が優しくなれた気がします。