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理解できない相手からは離れて、自分の理解者との時間を大切にしよう(『春秋左氏伝』襄公三十一年)

今回取り上げるのは『春秋左氏伝』襄公三十一年からの言葉。

人心の同じからざるは、其の面の如し
(読み:ジンシンのオナじからざるは、ソのオモテのゴトし)

『春秋左氏伝』襄公三十一年

人の心がそれぞれ異なっているのは、人の顔が一人ひとり違うのと同じようなものだ、という意味。

つまり、人の心はそれぞれ異なっているのだから、それを踏まえて行動しなさい、ということですね。


この言葉は子産という、春秋時代を代表する政治家の言葉になります。

孔子よりも一世代くらい前の人物です。

子産のことは孔子も高く評価しており、「子産には君子に相応しい行いが四つあった」と語るほどでした。

ちなみに、その4つは以下の通り。

  • 自身の行動の慎み方が厳粛である

  • 目上の人に対する接し方が敬虔である

  • 民衆への接し方に思いやりがある

  • 民衆の用い方が公明正大である

人としてだけではなく、一人の政治家としても優秀だったことが伝わってきますよね。

そんな子産が語った今回の言葉は、政治家としての立場を意識したものです。

民衆の心は一人ひとり違うのだから、相手の様子や状況に合わせて対応しなさい、ということを語っています。

これは私たち一般人にとっても当てはまる言葉ではないでしょうか。

他人と接していると、ときどき以下のように感じることがあります。

「どうして理解してくれないんだろう……」
「どうしてこんなことをしてくるんだろう……」

自分の思いが伝わらず、相手の気持ちも理解できず。

そのうちにコミュニケーション自体にストレスを感じて、心が疲弊してしまうのです。

その原因は、「人心の同じ」なことを願っているからに他なりません。

子産の言う通り、人の心は千差万別です。

自分の気持ちを相手が本当に理解してくれるなんて、そうそうありません。

相手は相手、自分は自分なのですから。

なので、相手が理解してくれなくても気に病む必要はありませんし、相手の行動が理解できなくても気にしなくて構いません。

仕事上で支障が出ているのであれば、ビジネス書でコミュニケーションのコツを学んでみたり、セミナー等を受講してスキルの向上を目指してみたりしても良いかもしれません。

しかし、いくら頑張っても伝わらないときは伝わらないものですし、理解できないときは理解できないものです。

その人とは抜群に相性が悪いということなので、積極的に関わるのはやめた方が無難でしょう。

世の中には、自分の小さなプライドのためにあなたを貶める人もいます。

そういった人は、わざと異なる指示を出したり、脈絡のないことをして混乱させてきたりするので、要注意です。

私も昔、先輩からダブルバインドを受けて休職したことがあります。

真面目な人ほど「自分が悪いのでは?」と考えてしまい、相手の術中に嵌っていることに気づけないのです。

精神的に本当に良くないので、コミュニケーションでうまく伝わらないからといって、自分を責めすぎるのはやめましょう。

人の心はそれぞれ異なるのだ、ということを頭に入れておけば、うまくやり取りができなかったときでも、「そういうこともあるよね」と軽く流すことができるようになりますよ。

人心の同じからざるは、其の面の如し
(読み:ジンシンのオナじからざるは、ソのオモテのゴトし)

『春秋左氏伝』襄公三十一年

人の心はそれぞれ異なっているのだから、それを踏まえて行動しなさい、という言葉をご紹介しました。

考え方が異なる相手はどこにでもいます。

これは人である以上、仕方のないことです。

君子危うきに近寄らず。

それよりも、自分を理解してくれる人との時間を大切にしましょう。

自分の良き理解者とは、なかなか出会えないものです。

人の心は千差万別だからこそ、その中で出会えた心の友を大事にしていきたいですね。


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