社会的な評価よりも、まずは自分の健康を大切にしよう(『老子』十三章)
今回取り上げるのは『老子』十三章からの言葉。
大きな心配ごとに悩むのは、我々に身体があるからこそである、という意味。
これは「悩むのは身体が原因だ」と言っているわけではありません。
むしろその逆で、「身体があるからこそ悩むことができる」と言っています。
つまり、すべての基礎は身体なのだから、何よりもまずは自分の健康を大事にしなさい、ということですね。
この章の表現は少し分かりにくいところがあるので、順番に見ていきましょう。
まず老子は、世の人々は寵愛や屈辱に関して必要以上にビクビクと不安になっている、と言います。
この場合の「寵愛や屈辱」というのは、会社や地域コミュニティでの評価や評判をイメージすると考えやすいかもしれません。
例えば、誰かとコミュニケーションをとる際、以下のような不安を感じたことはないでしょうか?
「上司から評価してもらえるだろうか?」
「同僚から変な噂をされている気がする……」
「ご近所さんとうまくやっていけるかな……」
誰であっても、怒鳴られたり陰口を叩かれたりしたら傷ついてしまうものです。
実際、私も上司からのパワハラ・モラハラが原因で休職したことがあります。
そのときに感じていた不安はひどいものでした。
夜は眠れず、仕事に行けば涙が止まらず。
何をしていても自分が怒られているような気持ちになり、上司の一挙手一投足に怯える日々。
さっさと辞めてしまえば良かったのですが、「退職したいなんて言ったら迷惑がかかる」「会社の人にダメなやつだと思われる」と余計な心配ばかりをしていたんですよね……。
老子は、このように周囲の評価や評判ばかりを気にして不安になるのは、身の回りの大きな心配ごとを自分の健康と同じように大事にしているからだ、と指摘します。
問題に対処したり、不安なことに悩んだりすることができるのは、自分の身体が健康であるからこそです。
健康を害してしまっては、そもそも働くことも、家事や育児に全力で取り組むこともできません。
すべての基礎・土台となるのは、自身の健康です。
この章で老子は、
本来私たちは自分の健康を第一にすべきなのに、それを軽視して不安に対処するのは順番が間違っているのではないか
と問題提起しているのですね。
その上で、老子は健康を大切にする人を高く評価しています。
天下を治めることよりも、自分の身体のことを大切にするという人にこそ、天下を託すことができるし、
天下を治めることよりも、自分の身体のことを愛するという人にこそ、天下を預けることができるのだ、という意味。
まずは自分のことを大切にしてこそ、立派な人物になれるのだ、ということですね。
きっと、自分のことを大切にできない人に、他人を大切にすることはできない、ということでもあるのでしょう。
自分を犠牲にしても何も良いことはありません。
昔の私は、上司からの評価や周囲からの評判を気にしすぎて、大事にすべきものの優先順位を見誤ってしまいました。
例え少しの間立ち止まることになったとしても、健康であれば何でもできるのに。
自身の健康を犠牲にしすぎたがために、想定以上の休養と通院治療費が必要になるだけではなく、それ以降もたびたび心身の調子が悪くなって、体調を崩すようになってしまったのです。
今でも定期的に通院していますが、もしもあのとき、もっと早く退職していれば、もっと健康に溢れた生活を送れていたのかもしれません。
本当に大事なものは失ってから気づくと言いますが、健康を犠牲にするのはリスクが大きすぎます。
もしも今、
「最近体調が悪い気がする……」
「最近疲れが取れないんだよね……」
と感じているのであれば、何とかお休みをゲットして早めに休養を取って欲しいです。
身体を犠牲にしたりせず、健康第一で過ごしていきたいですね。
すべての基礎は身体なのだから、何よりもまずは自分の健康を大事にしなさい、という意味の言葉をご紹介しました。
会社やコミュニティのために我が身を犠牲にする必要はありません。
犠牲を強いてくるような環境からは、さっさと離れてしまいましょう。
自分が健康であれば何でもできます。
しかし、健康でなければ自由に活動することもできません。
もうすぐゴールデンウィークですので、この機会にご自身の働き方や過ごし方を改めて見直してみても良いかもしれませんね。
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