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北宋の偉人から学ぶ、正しい情報収集のあり方とは?(欧陽脩「読書」)

今回取り上げるのは欧陽脩の漢詩からの言葉。

是非自ら相攻め、去取は勇断に在り
(読み:ゼヒミズカらアイセめ、キョシュはユウダンにアり)

欧陽脩「読書」

物事の是非は自分で判断し、どのように取捨選択するかは自身の勇気ある決断にかかっている、という意味。

本の読み方について述べた言葉です。

つまり、本を読むときはその内容を鵜呑みにせず、どれが正しくてどれが正しくないかを自分で判断し、何を自身の糧とするかを勇気を持って決断しなくてはならない、ということですね。

自分で判断することの大切さを語っています。


欧陽脩は北宋時代(960-1127年)の政治家・学者。

文人としても有名で、唐宋八大家の一人に数えられています。

『晩笑堂竹荘畫傳』に記載されている欧陽脩、 Wikipediaより引用

先日、メンバーシップ向けの記事で取り上げた『新唐書』も、彼が編纂に携わったものです。

そんな優秀な欧陽脩が、読書をテーマに詠んだのが今回の漢詩です。

その名も「読書」。

分かりやすくて良いですね。

漢詩の中では、経書、つまりは儒教の経典の解釈の仕方などについて語っています。

今でもそうですが、経書の読み方には色々な説があります。

北宋の頃、ちょうど日本は平安時代になりますが、この時代の専門家たちも、それぞれ博士家として経書の解釈に取り組んでいました。

博士家としては、菅原家・大江家・清原家・中原家などが有名です。

特に日本では書き下しの仕方一つで意味が変わってくることもあり、どのように書き下すのかは、それぞれの博士家での秘伝とされていたほど。

博物館などで昔の文書を見てみると、ものによっては漢字の四隅に謎の記号が記されていることがあります。

これは、それぞれの博士家による秘伝の書き下し法なので、その家に弟子入りして奥義を伝授された人しか読むことはできなかったのです。

このあたりのお話しはそれだけでかなりのボリュームがあるので、詳しいことは別の機会にしようと思いますが、要するに、経書の解釈はとても重要な事業だったということですね。

これは北宋時代も同じ。

欧陽脩などの文人や政治家たちも、教養として日々経書の解釈に勤しんでいたのです。

しかし、孔子の時代からおよそ1500年が経っているため、そのまま読んでもなかなか内容は理解できません。

そこで指針となるのが、過去の様々な学者が付けた注釈になります。

実は私たちにとっても古典の注釈は身近なものです。

例えば現代の我々が目にする『孫子』も、三国志の英雄である曹操が付けた注釈をベースに解釈されています。

曹操、Wikipediaより引用

難解な『孫子』を曹操が噛み砕いてくれたからこそ、私たちは様々なところで『孫子』の内容に触れることができるのです。

注釈は偉大ですね。

しかし、ここで欧陽脩は古典の読み方について、重要なポイントを指摘します。

それは、従来の解釈を鵜呑みにせず、最後は自分の頭で考える、ということです。

注釈は注釈でとても便利なものですが、歴史の中でそれぞれの時代の学者が解釈した内容にすぎません。

場合によっては解釈が間違っているかもしれませんし、筆者が伝えたかった思いを誤解している可能性もあります。

大事なのは、従来の解釈を絶対のものとはせず、色々な見方があることを理解して、自分の考えで判断することなのです。


これは現代の情報収集にも当てはまると思います。

読書、新聞、SNS、インターネット。

今ではあらゆるところで簡単に情報が手に入りますが、どの情報も多かれ少なかれ発信者の主観が混じっているものです。

一つの媒体だけ見ていると、ある意見が多数派のように見えることがありますが、一歩離れて他の情報源と照らし合わせてみると意外と少数派だった、という経験はないでしょうか?

情報が簡単に手に入るようになったからこそ、どの情報が正しくて、どの情報が正しくないのかを見極める力が必要になります。

また、得た情報の中から、自分にとって有益なものを選別する決断力も大事です。

情報化社会の今だからこそ、物事の「是非」を判断し、「去取」を「勇断」できるように心がけていきたいですね。

是非自ら相攻め、去取は勇断に在り
(読み:ゼヒミズカらアイセめ、キョシュはユウダンにアり)

欧陽脩「読書」

物事の是非は自分で判断し、どのように取捨選択するかは自身の勇気ある決断にかかっている、という意味。

一つの解釈や主張だけを見て判断すると、思考が凝り固まってしまいます。

現代では様々な手段で情報を得ることができるので、色々な角度からの意見にも目を通して、最終的な判断をしていきましょう。

誰かの意見を鵜呑みにするのではなく、自分の意思で決断する勇気を持っていきたいですね。

それでは今回はここまで。

また次の記事でお会いしましょう👋


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