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宗教に勧誘された話

 宗教の勧誘と聞くと、恐らく良くないイメージを持つ方が大部分を占めるのではないかと思う。
 中には実際に勧誘され、その時のあまりのしつこさや強引さ、押し付けがましさに嫌気が差したという人も少なくないのではないだろうか。かく言う私もあまり勧誘に良いイメージは持っていない。

 そんな私だが、過去に一度だけ宗教の勧誘を受けて入会(入信?)していた時期が僅かながらある。
 そもそも勧誘自体を快く思わない私がなぜ受け入れたのかや、どうしてこうなったのか等、今回はその時の話を書いていきたい。こんなパターンもあるんだなくらいの気持ちで読んで頂ければと思う。

【事の始まり】

 それは私が就職活動に励んでいた頃のこと。
 その日説明会から説明会へと渡り歩いていた私は、小休止の為に近場のカフェに入っていた。次の説明会までそれなりに長い空き時間があった為、スーツ姿のままのんびりお茶をしながら過ごしていた訳だが、唐突に「こんにちは」と声を掛けられる。
 近くで声がしたことに驚いて顔を上げると、少し年上くらいの若い男女が笑顔でこちらを見ていた。最初は間違って声を掛けたのかと思ったが、その視線は確実に私の方に注がれている。とりあえず返事をしたものの、私の頭の中では疑問符が全力で踊っていた。

 何度見ても知り合いではないのは確実だったし、混雑気味の店内だったのに狙ったように私に声を掛けるのも不自然でしかない。困惑を全面的に顔に出していたであろう私に、その二人は「良かったらこれからパーティーがあるので来ませんか?」と聞いてきた。
 ますます意味が分からなくて困惑していると、その二人は二人が所属しているサークルのようなもののパーティーが近くであること、有名な占い師の先生も来るのに人が集まらず困っていること。立食式のパーティーで飲食は自由だし、もし参加してくれるなら占って貰えるよう取り計らうという話をした。

 うん、まあ怪しい。怪しすぎる。
 そもそもサークルみたいなものって何?部外者でも良いから集めたいってどういう状況!?と心から思ったが、その時の私は良くも悪くも度胸があった。就職活動に疲れて人生に迷っていたのもあり、本当に占ってくれるなら視てほしいと思ったのも否定はしない。
 幸い次の説明会までまだ時間に余裕はあった。勿論まだまだ警戒する気持ちはあったものの、私は参加したいと答えて二人に着いていくことにした。

【連れて行かれた会場にて】

 相変わらず笑顔で話し掛けてくる二人に案内されたのは、大通りから少し外れた雑居ビルだった。
 少しでも変だと思ったら逃げようと逃走経路の確保ばかり考えていた私だったが、簡単な装飾をしただけの会議室のような場所に長机を並べ、そこに飲み物やお菓子、寿司等があるという割と普通な会場に多少安心する。
 ただ壁に神棚があるのだけは少し異質だと思ったが、それ以外に不自然なところはなかった。

 その場に居た複数の人達も含めて雑談が続く中で、私は話の流れで神棚について触れてみた。ここにも神棚があるんですねーくらいのことだったが、途端に周りの人の目の色が変わったように見えた。
 「神棚に興味があるんですか?」と聞かれ、私が神社が大好きでしてと話した瞬間、「実はこのパーティーは神社神道を信仰する人達による会合なんですよー!」とかなりの勢いで食い付かれる。
 驚いて詳しく話を聞くと、どうやらここに居るのは神社神道をベースにした宗教団体の会員の面々ということだった。ずっとこれが何のパーティーなのか疑問だったが、まさか宗教絡みだったとは……。

 ただ私自身も何を信仰しているのかと聞かれれば神社神道(ざっくり言えば神社を信じてるという認識で差し支えないかと)と答えるくらいに厚く神社を信仰していたし、志は同じ……なのかもしれない。
 そう思って話を聞いていく中で、ここで同じ信仰を持つ人と出会えるのは奇跡だ、今日ここに来たのは運命だとまあ持ち上げられる。そして私は私で起きたことには何かしらの意味があると思う派の為、そうかもしれないと思うようになり、結果的にその場で入会を決意することとなったのであった(ほぼ勢いだった)。

 その後有名な占い師の先生という人が登場し、参加の記念にと手相占いをして貰ったりもした。
 私が神社好きと知ってからの勧誘は割と強めになったと記憶しているが、それでもまた後日検討して貰えればと一応逃げ道は残してくれたりと、そこまで嫌な感じではなかったから受けた部分はあったと思う。

【その後】

 しばらくすると自宅にダンボール一杯の書籍やらDVDやらが届き、ざっとそれらを見てようやくこの宗教がどういうものなのかを理解した。確かに神道的な要素も多いし神社を大切にはしていたが、根本的にはこの宗教の教祖を絶対視してその存在を敬うような部分があった。
 届いたものは教祖による著作が大半だったし、考え方は理解したものの内容に胡散臭さを感じてしまい、その辺りは残念ながら私には合わなかった。

 何よりも一番合わないと感じたのは、とある神社の参拝を禁止するようなスタンスだった。
 私は神社の中で一番その神社が好きだったりする。確かに少し注意すべき側面もあるが(詳しくは神社の話を書く時に名称も出して書くかもしれない)、だからと言って好きなものを禁止と言われてもどうしようもない。誰に相談しても行くのをやめるように説得されるばかりで、それが決め手となって私は半年程度でその宗教から退会することとなった。

 残念ながら合わないという結論となってしまったが、私は信じたいものを信じるのが一番だと思うし、その宗教自体を否定するつもりはない。その存在に触れたことも良い経験だったと今にして思う。
 また、その時の占いの結果も心に残るものだった。
 細かくはもう覚えていないし、所謂婚期は悲しいことに全然当たらなかったが、就活や仕事について言われたことは結果的に割と当たっていた。
 更に先生曰く私は『何かを始めた時は必ず助けてくれる存在が現れる』という運があるとのことだったが、これは現在進行形で本当に当たってると言える。占いは好きだし信じている方だと自負しているので、それも含めて良い経験ができたと思う。

 最後に……その時の私は大丈夫だったものの、女性一人で知らない人についていくのは大変危険である。
 どんどん何が起こるか分からないご時世になっていっていると思うので、性別問わずほいほいついていくのは控えた方が無難なのは間違いない。
 宗教の勧誘にはくれぐれもご注意を!!


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