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【トレーニング日記】 トレコ 膝使いの魔術師を目指すの巻

今日の解剖まめ知識

今日出てくる骨の名前

大腿骨
太ももの骨。骨盤と脛骨をつなぐ。
脛骨
スネの骨。2本あるうちの内側のもの。距骨と大腿骨とつながっている。体重を受け止める役割。外側の骨は腓骨。腓骨は体重を受けず、運動の微調整をする。
膝蓋骨
膝のお皿。膝の曲げ伸ばしを滑らかにする。
距骨
脛骨、腓骨、踵骨をつなぐ骨。足と下腿(ふくらはぎの部分のこと)を繋げることで、足首から下腿に体重を伝える。

下腿外旋

下腿外旋
外旋とは外向きに回す(回旋)する動きのこと。下腿外旋とは、下腿の骨が外側に回ること。
完全伸展
伸展とは〝伸ばす〟動作のこと。完全伸展は、完全に伸ばす動作のこと。

内側広筋

内側広筋
大腿骨の内側から膝蓋骨の下を通って脛骨に付着する筋肉。膝を伸ばすときに働く。内側広筋は完全伸展の最終可動域でよく働く。


膝の伸ばし方 右が正常

反張膝
膝が後ろ方向に凸になり、反り返っている状態。正常な場合は距骨、脛骨、大腿骨がまっすぐになっているが、反張膝では脛骨が後ろ方向、大腿骨は前方に倒れる。そのため腰が引け骨盤は反り返り、足首も反らす形になり、かかとに体重が乗る。


トレコ

膝使いの魔術師目指すの巻


トレコは考えました。
「膝をちゃんと伸ばせていないのではないか??」
 これまでも何度か思いはしたものの、彼女はどちらかと言えば反張膝*です。「杞憂だろう」と、軽く流していたのです。
 だけど心のどこかで引っかかるものがあったのでしょう。ある日のこと、仰向けに寝ているときになんとなく膝の曲げ伸ばしをやってみました。仰向けのまま股関節と膝関節を九十度に曲げ、片方ずつ膝を伸ばしては曲げ、伸ばしては曲げ、とやってみたのです。そう。天を蹴るように。
 すると意外なことに、膝を伸ばそうとする瞬間、腰が引けていることに気がついたのです。寝転んでいるから腰なんて使う必要ないのに、腰が引けているのです。
 トレコは驚きつつ、納得しました。これまでも薄々、おかしいと感じていたのです。
 立位で膝を伸ばすというのは、垂直に立つ脛骨*の上に大腿骨がこれまた垂直に乗っかることです。(図1)

 だけどトレコは薄々感じていたのです。お尻を後ろに引くことで脛骨を後ろに傾かせ、さも、膝を伸ばしているように見せかけているとそしてそれこそが反張膝の動きそのものではないか、と。 (図2)


 実際、トレコの膝は膝蓋骨*が隠れてしまうほど脂肪で覆われていました。膝を完全伸展*するときに使うはずの内側広筋*はブヨブヨです。 
 細く締まりのある脚を持つ人の膝は膝蓋骨がクッキリ見え、内側広筋も締まりがあるのに、トレコの膝は無駄にゴツゴツしていましたし、トレコのふくらはぎは一向に細くなりません。足首には締まりがなく、足先は冷えています。爪の色は悪く、血流障害と浮腫みが容易に確認できる足をしていました。
 それだけではありません。内ももには肉がついています。ジーンズが似合う脚は足の付け根からまっすぐ伸びて先細りになっているのに対し、トレコの脚はところどころにお肉の塊があって、そのシルエットを邪魔しています。
「トレーニングはしっかりしているのになぁ」
トレコは不思議に思っていました。 実際、トレコはスクワットなら百キロを持ち上げることがあります。幼少期からバレーボールをしていたため、脚力だけは自信があったのです。
 ところがスクワットをすればするほどに脚の形は悪くなり、ひどいときではトレーニングをした直後から浮腫みが始まり、逆に太くなる、なんてときもありました。
 それからトレコは重い負荷をかけるトレーニングをやめ、軽い負荷で丁寧な動作を心がけるトレーニングをするようになりました。
 その矢先です。
「膝をちゃんと伸ばせていないのではないか??」そう思い至ったのは。
 仰向けで膝の動きを確認した翌日はトレーニングの日でした。トレコはさっそく膝の動きを改善すべく、トレーニングに取り組みます。いつもはフリーウエイトしかしないのですが、マシンを使いました。 〝レッグエクステンション*〟です。

レッグエクステンション (膝の曲げ伸ばし運動〝蹴る〟)

膝をある程度伸ばした状態から始めることにしました。膝関節は最終伸展可動域、最後の五度の部分で下腿が外旋*します。こうすることで、骨同士の安定性が高まり、伸展状態でロックがかかるのです。  ところがどうでしょう。トレコの最終伸展可動域の動きは、膝を〝伸ばす〟のではなく膝を〝反らす〟動きだったのです。膝を下方へ(座っているから下方)押し付けて反らすことで膝の前面を押し潰すように動かしていたのです。まさしく、反張膝と同じ形です。 これでは膝の力を最大限活かせません。だってそうでしょう?歩くときのことを考えました。歩くときは前足に体重を乗せたあと、脛骨の上に体重を移動しないといけないのに、膝を反らしているのですから。せっかく前足に体重が乗ったのに、いちいち後ろ方向へ力をかけることになるのですから。だからお尻も引けてしまうのですね。
 トレコはバレーボールをしていますが、バレーボールで最も重要なジャンプ動作にだって影響が出ます。上に跳びたいのに後ろに力をかけているのですから。
それじゃだめだろう。 
 そう思ったトレコが次にしたのは〝レッグプレス*〟です。


レッグプレス (膝の曲げ伸ばし運動〝押す〟)


足の裏が地面に固定されていることを想定します。立位で膝を後ろに反らして伸ばすということは、地面を〝押せない〟ということです。地面を押そうと思ったら下方向に力をかけないといけません。膝を完全伸展するときに、垂直に立つ脛骨の真上に大腿骨が乗る(正常な伸展)のであれば、まっすぐ真下に力をかけられるのです。
 さて、トレコにできるのでしょうか。膝を十度ほど曲げた状態から完全伸展をします。やはり、できません。膝を下方(座っているから)に反らしてしまいます。膝をまっすぐ伸ばそうと思うと、つま先立ちのような状態になり、うまく力がかかりません。 トレコは何度も繰り返し練習をしました。膝を反らすのではなく、なるべく遠くへ向かって伸ばすように意識しました。次第にコツが分かってきました。 距骨*を意識するのです。距骨はかかとの骨(踵骨)と脛骨をつなぐ役割をしています。距骨が安定していないと無駄に足首を動かしてしまい、その上に乗る脛骨の傾きが変わってしまいます。この場合、脛骨を後ろに倒してしまうことになり(足首を反らす方向)その為に膝も反らしてしまうのです。
 そのことに気がついたトレコは距骨を無駄に動かさないことを意識してレッグプレスを続けます。するとだんだん膝がしっかり伸びるようになってきました。完全伸展ができている実感があります。
「今まで膝をしっかり伸ばすことができなかったんだ。だからどれだけスクワットをしてもお尻は上がらないし、もも裏にセルライトがあったんだ」 
 トレコは新しい発見に心躍り、次にデッドリフトをしました。
 レッグプレスと同じように、距骨を固定し、なおかつ距骨の上に脛骨と大腿骨を乗せるようなイメージでやりました。今までと明らかに動きは変わりましたが、目的に沿っているかどうかわかるところまではいきませんでした。だけどトレコは新しい可能性に満足してトレーニングを終えました。
「もしこの考え方が正しいのなら尿量が増えて浮腫はすぐに消えるだろう」 
そんなことまで考えました。残念ながら、そこまでは至りません。だけど歩く感覚は全く違っていました。地面をしっかり押しているのです。ピンヒールで歩くときでさえ、地面をしっかり押しているのです。 「今まで地面を押せてなかったから歩くたびにピンヒールから踵が脱げていたのか」 そんなことまでわかりました。
 そして今日はバレーボールをします。膝をしっかり伸ばせるようになったトレコのジャンプはどれくらい変わるのか。楽しみでなりません。

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