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春の匂い

貴方の存在が脳裏にチラつく時、雑貨屋の同じ色で統一されたコーヒーメーカーがホットサンドメーカーがオーブントースターが電気ケトルが急に愛おしく思えて、それらに夢を見てしまう。それを使う未来があるとかないとかそんな正確性はどうだってよくて、ただそんな未来があったらいいなということが今日も明日も生きていくための光であり希望だ。
今まで何も思わずに生きてきた日常すらも貴方の存在を重ねることでうっとりする。満たされてゆく。
電気量販店で家電を見た時、貴方がいたらいいのにとふと願った。炊飯器を見るのも洗濯機を見るのも冷蔵庫を見るのも貴方とがいい。ふたりで眺め、触って、値札を見て、店員さんに相談しながらこれにする?とか話し合い、ゆっくりとそれすら思い出になるように過ごしてゆきたい。何もない私たちの部屋を家電とそれに伴った想い出で満たしてゆきたい。例え貴方が覚えていないような些細なささくれみたいな思い出でも、私は胸に刻んでおくから。覚えておくから。

だから貴方は安心して忘れていって欲しい。

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