6月に観た映画

年間映画50本視聴の目標も半分!

22.大怪獣のあとしまつ

2022年 日本映画 三木聡監督 山田涼介主演

評判悪いことで有名になったということで視聴。はっきり言ってしまうと退屈になってしまったので途中からながら見しながらでやっと見終えることができた。

扱うテーマ自体はワクワクさせる題材、巨大な怪獣映画にあるあるな死んだ怪獣はその後どうするのかをまともに取り扱うという点では良いのだが、実際のこの映画では終始腐敗ガスがどーのこーので終わって、始末という重要なテーマはラストのあの唐突な展開で終わってしまうのは残念に感じた。しかもそれが本作におけるメッセージ性だというのだからみたいものとは違った、狐につままれる感じ。

結構なブラックコメディを結構な密度で散りばめているがそのほとんどがお下品なものであまりハマらなかった。面白い場面もいくつかあったけど。
シリアスな場面とギャグパートみたいな交互に展開していくイメージだが、お笑いで言うところの緊張と緩和的な意味合いでシリアスパートとギャグパートの落差で面白くしていくみたいなことは全く無く、むしろシリアスパートが浮いて見える印象を持った。

全体的に場面展開にまとまりがなく抑揚もないので序盤はひたすら退屈。物語終盤で話がまとまるのでラスト30分くらいは集中して見ることができた。
これを映画館でみた場合ボロクソ評価になるのは想像に難くない。だがその評価を知った上で家で見る分にはネタになるしそこまで悪くないかもと思う。(面白いとは言っていない)
ただスタッフロール後の自虐ギャグ、本当に良くないと思う。

23.機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

2022年 アニメ映画

機動戦士ガンダム15話「ククルス・ドアンの島」のエピソードをアレンジし一つの映画化にした作品

原作では作画崩壊として有名な回で、やけにほっそりしたザクが特徴。ファンの間では長年ネタにされてきたガンダムの話がまさかの単品映画化。当時の大人の事情のザクを踏襲して新たにデザインされたザクが実現。
本作はそうした原作に忠実なところと、一年戦争は盛れるだけ盛っとけみたいな後付設定とのバランスが絶妙で、アニメ版やTHE ORIGIN版のどちらとも違う独自の立ち位置にいる。

モビルスーツの戦闘シーンこそ少ないが迫力満点で描かれていて、なによりドアンザクがめちゃくちゃかっこいい。そしてまだこのときはニュータイプとして覚醒していないアムロの秘めたるセンスが浮き出るガンダムの戦闘シーンも圧巻。
ストーリーはおおまかな流れこそ原作と同じものの、かつてドアンが所属していたジオン軍部隊のサザンクロス隊を新たに登場させていたり、ドアンと生活する戦争孤児も大幅に原作から増えていてその生活の様子や敵であるアムロとの交流を大きめに描いていた。

ククルス・ドアンの島というネタにされる回が映画化されるというだけで面白いのだが、ネタ抜きにしてみても原作の良さである秀逸なエピソードが光る。原作の良いところ悪いところをひっくるめた怪作的リメイク。

24.グランド・ジョー

2013年 ニコラス・ケイジ主演

世の中の不条理を映し出すヒューマンドラマ

終始暗い雰囲気で決して後味良いとは思えない終わり方。見る人や気分を選ぶ映画。
この映画は不条理が満ちていてそれはアメリカひいては世界が持つ貧困さが生み出す社会の退廃性だ。

仕事につかず酒に呑んだくれ家族に暴力を振るう父親がいる家庭から逃れられない少年、ゲイリー。主人公ジョーはゲイリーの私情に関わらないようにしていたが、自分のもとで真面目に働くゲイリーと交流を深めやがて彼の問題へ関わることとなる。
実際ジョー自身も誠実な男とは言えないやばいやつだが、そんな男の不器用な生き様が描かれる。

本作はキャスティングの妙が特徴的。まず目を引くのがゲリーの父親。本作をみた人は必ずこいつに殺意を覚えるほどどうしようもない男であるが、そんなクズ演技をしていたのは本物のホームレスかつアル中で、なんと映画公開前に酒が原因となって死去しているという。それほどまでに迫真の演技を見せたゲイリー・ポールターという俳優の存在感は凄まじかった。(一方であまりに爺さんすぎて父親としては年が離れすぎてないかみたいな疑問は浮かんだ)
後にレディプレイヤー1で主演を務めるゲリー少年を演じたタイ・シェリダンの演技もひたむきさが伝わってよかった。ニコラス・ケイジも年を取って渋みがかった演技が良かった。

みていくうちにどんどんストレスが溜まりラストも決してカタルシスのあるものではない。そういう不条理の中でゲリー少年が強く生きていこうとする姿が唯一の救いか。

25.ジャッキー・ブラウン

1997年 クエンティン・タランティーノ監督

武器密売人とそれを狙う保安官、そして運び屋のジャッキー・ブラウンらが大金を巡って騙し合うクライムサスペンス

最初見たときはタランティーノの作品の中ではあまりぱっとしない印象を持った。
それは若き頃のタランティーノが恋焦がれたパム・グリアを主演に据えた映画だったからなのかもしれない。
70年代の映画のあるジャンルにブラックプロイテーションと呼ばれるアフリカ系アメリカ人のために作られた映画があるらしい。そのスタッフや俳優らも黒人を起用し、音楽もR&Bやファンクなどのブラックミュージックだ。
そんなブラックプロイテーションにて数多くの主演をしたパム・グリアが本作の主人公ジャッキー・ブラウン。
タランティーノは原作の30代白人という設定を変えてまでパム・グリアをキャスティングして彼女の過去の作品「フォクシー・ブラウン」から名前を取ってジャッキー・ブラウンとした。
この映画はタランティーノの憧れの女性の魅力をそのままに力強く芯の強い女性を描くことをメインに据えた彼の趣味嗜好の要素が色濃く出ている作品のように感じる。
その他キャスティングもタランティーノらしさがうかがえる面白いものだが、とりわけロバート・デ・ニーロの間抜けなギャングっぷりには本作のコミカルな一面としての場面づくりに一役買っている。
本作でも劇中歌の選曲センスは抜群。その選曲は前述したブラックプロイテーションで使用されたようなブラックミュージック。タランティーノはこの劇中歌を登場人物たちの乗る車のカーオーディオとして効果的に使用している。

そんな感じでタランティーノの映画オタク色が色濃く出つつも2時間半の長尺を飽きさせない場面の展開、演出の技工が感じられる確かな作品。


一年の折返し、なんとか25本、半分までいった!

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