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緑、たまに赤、まれに黄

 信号機。緑は進もうで赤は止まろう。
 もし、もしもだけれど
 どちらも点いていたらどうしよう。
 進もうか止まろうか。大人になるほど緑と赤が
 滲んで見えたりする。


今日もどこかで誰かが、信号機の上の方に浮かぶ
移ろう雲を眺めている。
エンジンの音も横断歩道のピヨピヨも
歯切れよく流れているのに複雑な思いを抱えて
その道をゆく広い背中や小さな肩の人たちの
後ろ姿を追ってしまう。

昨夜のうちになにかになった人がいて
懸命になにかになろうとしている人もいて。
 
 そうね、人になるのが一番難しいよね。

かろやかに進む人たちの声に耳を澄ますと
後悔もあやまちもこゝろにふくみ込まれていることを
知る。描きだされたそのありようは
彩り、とゆうのかな。人の彩りとゆうのかな。


涼しさに誘われて…


見える世界はこゝろを宿したもので
あふれていると思う。
信号機もそのひとつ。
月や星に劣らず輝いている。笑っている。

にっこりとかにこにこじゃなくてなんとゆうか
にっかりがしっくりくる。
奥の深いこゝろをもつ緑赤黄は
今日も進み、たまに止まり、まれに曖昧であっても
にっかりしながらそこに在るような。

夕日を浴びる。輝く。風を受ける。揺れる。
雨に濡れる。ときどき泣く。
そして、今日も静かにチカチカする。


わたしもチカチカしていれば
よいだけなのだと思った。


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