見出し画像

スターバックスのデジタル戦略

店舗体験が強みであるスターバックス。そんなスタバのデジタル戦略といったら、リアルとネットの融合が超絶重要だと思われる。まさに、OMOとかオムニチャネルの好事例になりそう。そんな時に神田明神ホールにて行われたBiz/Zine Day 2020 Winterにて、スタバのデジタル戦略が聞けるのことで、その内容を備忘録的に書いておきます。

デジタルシフトによって、既存の顧客体験の「あたたかみ」が無くなることがネックになってうまく社内調整ができない場合は、特に参考になると思います。

今回のBiz/Zine Dayでは、「店舗の顧客体験を中核とした、Retail Tech Innovation」をテーマに開催します。小売業はデジタル変革の大波が押し寄せている業態の一つ。しかし、まだまだ日本の小売業でのデジタル化は、欧米や中国などの取り組みに比べると、道半ばと言わざるを得ません。本イベントでは、グローバルに小売事業を展開する日本法人の責任者などが登壇します。「店舗での顧客体験」を中核に据える海外小売企業の事例だけではなく、日本の先進企業が具体的には、どんな活用を行なっているのか。複数のセッションからヒントを提示し、店舗の顧客体験を中核とした小売事業のデジタル変革に迫ります。Biz/Zine Day 2020 Winterevent.shoeisha.jp

概要

話し手は元マイクロソフトで、現スタバのデジタル戦略本部本部長の濱野さん。ECサイト運営やアプリ開発・CRMなどをまるっと担当しているとのこと。

スターバックスの考える店舗を起点とした顧客体験とデジタルの融合
スターバックスでは店舗における顧客体験を最大化させるための施策としてデジタルサービスの提供を行っている。
具体的な事例を交えながら、スターバックスの考える顧客体験やデジタル テクノロジーを活用した差別化のポイントを解説する。
濵野 努
プロフィール
スターバックスコーヒージャパン株式会社 デジタル戦略本部 本部長
1993年に日本マイクロソフトに入社し研究開発本部にて開発言語の日本語化を担当。その後、2003年にマーケティング部門に異動し、Microsoft.com/japanのWebマスターなどを経て、デジタルマーケティングを統括する部門の責任者となる。2014年よりチューリッヒ生命マーケティングコミュニケーション部長として、マーケティング、PR、Web、CSRなどを担当。2017年2月よりスターバックスコーヒージャパンデジタル戦略本部 本部長。

スターバックス体験をデジタルでさらに強くする

デジタルテクノロジー使って自社の強みが薄れているケースが多い。本当は各社の強みをテクノロジーで最大化するべき。
機能的価値がデジタルで解決しやすい。しかし、利便性だけだとユーザーに深く刺さらないので、併せて情緒的価値も提供したい。
⇒スタバの強みは店舗での顧客体験(スターバックス体験)

耳が痛い、、、、他社の事例を横展開するような仕事だと先細りすることを再認識。

スターバックス体験

スターバックス体験とは、以下で成り立っている。
◆パートナー
└独自のプログラムで教育したスタッフ(後述)
◆プロダクト
└特に豆にはこだわっている(産地に行ったりしているとのこと。こだわりのコーヒー屋でも産地まで行く人は多くないはず)
◆ストアポートフォリオ
└ロースター直結店舗とか、地域に根差した形の店舗とかいろんな形で展開

最近、家で豆を挽いてコーヒーを飲む楽しさを覚えたので、産地に行けるのはとても魅力的。JTBと組んでツアーしてほしいぐらい。

パートナー(スタッフ)の教育

企業のミッションとバリューを社員だけでなく、アルバイトも寄り添って実践している。
実は接客マニュアルはスタバには存在しない。自分で盗んだり、お客様を見て考えたりすることで、その人なりの接客を身に着けてもらう。
じゃあ教育って何するの?
⇒60時間のトレーニングでミッションとバリューを教える

企業理念が浸透している会社は最強。小さい会社なら経営層も近いから浸透しやすいけど、大きくなればなるほどむずかしいよね。意外とオーナー企業のほうが芯の通ったモノづくりとか販売ができる気がする。

レジ待ちの「不」をデジタルで解決

レジ待ちの列、混雑がネガコメントとして多かった。
アプリがあるので、アプリ上でのモバイルオーダー&ペイで解決。
アプリで事前にオーダーして、店舗で出来上がった頃に受け取る。
店内利用も可能で、席についてからオーダーでも使える(その場合は税率が異なる)
喜ばれる機能
★簡単にカスタマイズが可能
★再オーダーが簡単

セミナー後に実際に使ってみると、まあ受け取りまでが早いこと!
まじで店舗について5秒で受け取って外に出られる。
アプリからコーヒーをカスタマイズできる機能が、ユーザーの裾野を広げられそう。カスタマイズは、恥ずかしくて今までできなかった人とか、どんなカスタマイズができるのかわからなかった人も安心してオーダーできるようになる。

個人的に、スタバでカスタマイズ頼むと「あいつカッコつけてる!かっこマンだ!」と言われる気がしてしまうので、なんとなくやったことなかったのですが、アプリからであれば周りの目も気にならず、何より楽しい。
私のような自意識高い系におすすめ。笑

アプリで事前オーダーが完了すると「コスタリカ*14」みたいなコードが振られて、出来上がればアプリでPUSH通知がくるので、店頭でピックアップ。
ピックアップは、あの「赤いランプ」のエリアらへんに、商品がそっと置かれるので、そっと持っていきます。特に店員さんへの声掛けは不要。
ピックアップしたのがこちら。

ずらーーーーっと人が並んでいる横を、颯爽とピックアップしていくのはとても快感。笑
ちなみに、こういった事前オーダーして店頭ピックアップすすことをbopis(buy online pick in store)と呼ぶらしい。
中国では増えているようで、アフターデジタルって本で紹介されてましたね。
再オーダーが楽なのもいい。

導入の大変だったことは、やっぱり社内調整

導入では開発はそこまで高いハードルではなかった。
オペレーションが鍵。
導入において、ビジョンの共有が現場と非常に荒れたとのこと
「スターバックス体験がなくなっちゃうじゃないか!」
それに対しての議論を重ねて出した答えが、
「いままでも、急いでいる方にはお声がけせずスピードを優先してた
その方たちがターゲットであり、体験を改善するのが目的」
という形で合意。
⇒現場と企画の腹落ちが共有されていることが大事!!!

この腹落ちがめっちゃ重要ですよね。社内で横断的にプロジェクト進めるときに、一番めんどくさくて手を抜きがちですが、実はここが一番大事。
スタートして全員が一丸となって頑張れるかどうかが、ここにかかってきます。
これをやらずにスタートすると、周りの協力が得られず、まず間違いなくスタート直後に頓挫します。
奇跡的に効果が出たら周りの目も変わりますが、そんなのは稀で、最初に関連メンバー全員が本気で協力することによって、良いサービスやクリエイティブができあがっていきます。
とっても幼稚なこと言ってますが、これがなかなかできないんですよね。。。
社会人特有のしがらみや、価値観の違いがあるので、周りに働きかけをしないとあまり協力は得られない。だからこそ、周りと目線合わせて、関係者ととことん話し合うことが大事で、そうすると自然と周りが協力してくれるようになる。気がする。笑

ローンチ前も後もテストと改善の連続

ローンチ前にだいぶテストしたよ。
アメリカではスタートして店舗が大混雑したらしく、株価も落ちた。
ローンチ後も現場の声を反映して細かな改善を実施
ex)スタッフが気づくように、オーダーが入ったら音を出す仕組み
ただし、オーダー多いとこはお客様の迷惑になるから出さない、とか

細かなことだけど、現場の運用が回ってこそですからね。だいじ。

【重要】デジタルで情緒的価値を作った

試してわかるけど、非常にストレスフリーな購入体験ができるようになったけど、冒頭にあった情緒的な価値は作れないよね・・・
そんなことなかった!
答えは現場が出してくれた!
⇒現場の発信でオーダーシールにメッセージを書く行動が自然発生(豆の説明とかいつもありがとうとか)
好事例を企画部門がキャッチアップ、他店舗にひろげていくことができる。
teams(MS社のチャットツール)で現場の声を日々入れてもらっているので、本部の人も現場の取り組みを拾いやすい。

目からうろこでした。
今まで声をかけられなかった方に対し、
・事前オーダーによって準備する時間が生まれる
・その時間で手書きによるメッセージを書ける
・今まで存在しなかったコミュニケーションが可能になる
素晴らしすぎる・・・・
現場と腹落ちしているからこそ起きた事例でしょうね。
デジタルによってリアルのコミュニケーションが生まれるのは理想的すぎます。

シールにメッセージね、なるほどね。

ん?

あれ??

・・・忙しい人に見えなかったのかな。。。
いつかメッセージ書いてもらえますように。

【まとめ】
・デジタルテクノロジー使って自社の強みが薄れているケースが多い
・機能的価値がデジタルで解決しやすいが、利便性だけだと深く刺さらないので情緒的価値も提供
・レジ待ちの列、混雑をアプリのモバイルオーダー&ペイで解決
・実施には現場と腹落ちが共有されていることが大事!!!
・オーダーシールにメッセージを書く行動が現場から自然発生
・デジタルで課題解決したら新しいコミュニケーションが生まれた
・好事例を企画部門がキャッチアップ、他店舗にひろげていけばOK

学ぶが真似はしない、という気持ちで頑張ろう。
勉強になりました!

サポートしていただけますと嬉しさの極みです!活動の資金や他の方のサポートにも使ってサポート循環させます。