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【哲学史】時代・地域・テーマ別おすすめ解説書100冊

哲学YouTuber ネオ高等遊民です。

哲学史にしぼって、時代や地域ごとに良質と思われる解説書をまとめてみました。大体90冊くらい挙がりました。(シリーズセットなどを勘定すれば100冊以上かと)


選書方針

以下の方針で選書しました。

入門書や概説書のレベルで選定
  →専門書や研究書はおおむね対象外です
時代や地域ごとの通史を優先
  →1人や1冊に絞った解説書は優先されません(例外あり。特に実存思想)
入手の容易さを優先
  →品切れ重版未定本は選定せず、電子書籍をやや優先します(泣く泣く落とした本多数)

したがって、価格の面と内容の面で、できるだけ気軽に手に取れるような本を選ぶことを意識しています。

今後追加・入替もありますのでよかったらスキを押してブックマーク代わりにしておいてください。

また、ぜひこれはわかりやすかった、おもしろかったという本があれば教えてください。


難易度

難易度は本によってバラバラなので、ある程度の目安をつけました。

入門レベル・教養レベル・学部専攻レベルです。

教養レベルがあいまいですが、入門よりも少し骨があるといったイメージです。

また、入門レベルだからといって、学部専攻レベルの本に劣るかと言えば、決してそんなことはありません。学部専攻レベルの方が読んでも有益な示唆を受け取れるような本をできる限り選んでいます。

卒業論文のレベルと思われる基本文献は選んでいません。(版元が大学出版のような本です。もちろん例外あり)


分類・ジャンルについて

大きく時代・地域・テーマに分けています。

どうしたって厳密な区分は不可能なので、便宜上のものとご了承ください。


入門レベルの通史

哲学史を基礎の基礎から学びたい・学びなおしたい方向けです。


岩田靖夫 (2003)『ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書

古代から聖書の思想、近現代まで。ロールズ、レヴィナスなど。

これはとにかく手に取ってほしいです。もっとも価値の高い1000円といってもいい。書評動画も作りましたのでよかったらどうぞ。


木田元 (2010)『反哲学入門』新潮文庫

後述の姉妹書『反哲学史』と似てますが、こちらのほうが易しいです。気にいれば後述の本も。カントが要するに何やってるのとか、明快に書かれてます。


斎藤哲也 (2018)『試験に出る哲学―「センター試験」で西洋思想に入門する』NHK出版新書

読み物として読める思想解説。巻末の文献案内も優れています。


飲茶 (2019)『14歳からの哲学入門 「今」を生きるためのテキスト』河出文庫

おなじみ飲茶さん。『史上最強の哲学入門』もありますので、肌に合うほうをどうぞ。14歳のほうは、最初のニーチェの話がいいんですよね。どうして哲学なんてものを学んだり考えたりする必要があるのかって動機の部分が、非常に共感できる話で語られている。こういうのを優れた叙述という。


山口拓夢 (2017)『短歌で読む哲学史』田畑書店

大変薄くてコンパクト。中世哲学やロラン・バルト等の解説が手厚い。

この本の使い方なんだけど、ただ読むだけじゃもったいなくて、短歌を作品として鑑賞するってやり方がよい。文学として短歌を鑑賞するように、この短歌も、自分で解説や注釈や意図を読み込んでみる。たとえばこんなん。

56.生まれつき持つ観念は何もなく白紙の心に感覚が刻む ロック

鑑賞するとはどういうことかというと、まず適当に分析してみると

・観念や心というものがある
・観念は感覚によって得られる

短歌からこんなことが読み取れる。それを例えばひっくり返してみるだけでも「ロックは生まれつき何らかの観念を持っていることを否定してる」とか「感覚以外によって観念を得ることを否定してる」という認識が得られる。

そうすると「計算って感覚じゃない気がするけど、ロックはその辺どう考えてんの?」などという疑問を持つこともできるだろう。そのへんを含みにして解説を読んでみると、こういう流れでよむと非常に学びがある。

短歌で哲学を語るとは、要するに哲学を最小単位で要約したものだ。哲学書というものは、要約を読むだけでも一苦労だが、短歌にまで縮めてくれてるのだから、さすがに読める。そのかわり干物のようにカサカサになっているように見える。なので、この乾物に、水なりお湯なりかけて戻してやるのが鑑賞の役割だ。

※ちなみに経験談から話すと、自分でも短歌を作ってみようとすると挫折する! それより山口さんの短歌を分析したほうがおもしろい。

短歌だけならtwitterで公式のbotアカウントがあるから、短歌だけ見て、どういう思想なのか考えてみるのもいい。それから解説を読むというやりかた。



図解・ビジュアル通史

いずれも入門レベルです。おおむね上記の入門書たちよりも簡単ですので、本当にはじめての方はここからどうぞ。


竹田青嗣監修 (2013)『図解 哲学がわかる本』学研プラス

哲学者のよくわからない学説に対して、要するに彼らは何をしたいのか、あるいはこれが僕らにとって何になるのかという疑問に、一応の答えを出そうとしている姿勢を評価したい。電子書籍が安いのもよい。というか安いのがピックアップの最大の理由だ。


貫成人 (2008)『図説・標準哲学史』新書館

定評ある図説通史。


ウィル・バッキンガム (2012)『哲学大図鑑 三省堂大図鑑シリーズ』三省堂, 小須田健訳

図鑑なので文字の分量が少なく、哲学の雰囲気をつかめる。こちらは哲学史的でもあるけど、哲学の問題群を主題にしてる感もある。


サイモン・ブラックバーン監修 (2020)『図鑑 世界の哲学者』東京書籍, 熊野純彦監訳

問題群よりの上記図鑑に対してこちらは哲学者よりの図鑑。


マーカス・ウィークス (2015)『10代からの哲学図鑑』三省堂

図鑑のたぐいでもかなり易しい部類。これも問題群より。


DK (2020)"Philosophy A Visual Encyclopedia", DK Children

英語で哲学を入門してみたい方に。


教養レベルでの通史

熊野純彦 (2006)『西洋哲学史』岩波新書, 上下

現代の標準的な通史となっている感。上下巻セットでお読みください。かつては岩崎武雄『西洋哲学史』(有斐閣)が標準だった。2020年に待望のkindle化。


伊藤邦武 (2012)『物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために』中公新書

近代哲学が起点に古代から現代まで語られる。


木田元 (2000)『反哲学史』講談社学術文庫

木田先生の本は学問研究としては賛否両論あるらしいのだけど、哲学史に一定の見通しを与えてくれるのは確か。少なくとも自分は面白く読めたのでおすすめしたい。


納富信留、檜垣立哉、柏端達也編 (2019)『よくわかる哲学・思想(やわらかアカデミズム)』ミネルヴァ書房

見開き2ページで古代から現代まで。現代がメタ倫理学にも触れるなど非常に充実。読むハードルが低く、Wikipediaのような気楽さがあるのでおすすめ。


納富信留、伊藤邦武、中島隆博、山内志朗編 (2020-2021)『世界哲学史』ちくま新書, 全8巻

現在の研究状況を語るなど結構専門的な話も多く、じつは初学者向けではない。対象の選定も元来あまり重視されていなかった範囲に意図的に着目するなど、わりとマニアックなところもある。それだけに有意義な章が多い。はじめて聞く話も多いのに、難易度的には程よい。通史をしっかり通読したい! という場合にぜひ。


学部専攻レベルの通史

岩崎武雄 (1975)『西洋哲学史』有斐閣

かつての標準。ネオ高等遊民も大学院入試のとき5回読んだ(もちろん内容は忘れた)。絶版になってないことに驚いたので思わず選定。学部専攻レベルにあげたものの、教養レベルで十分にいける。

ただし今の時代に、あえて新品を買って読む積極的な理由はないかな、、、というのが個人的感想。良書だとは思うが、そこまで群を抜いているわけではない。古本で安く出回ってもいる。


山本巍他 (1993)『哲学原典資料集』東京大学出版会

原典の引用をちゃんと付けることをコンセプトにした良心的な通史。


河谷淳、久保陽一編 (2002)『原典による哲学の歴史』公論社

上記のコンセプトを引き継ぐ通史。


内山勝利, 小林道夫, 中川純男, 松永澄夫編 (2007-2008)『哲学の歴史』中央公論新社, 全12巻

本格的な哲学史。通読なら上述『世界哲学史』のほうがおすすめ。とはいえ非常に内容が充実しているので、関心のある時代はぜひとも所持してほしい。巻末の文献案内も随一の詳しさ。ただひとつの欠点は、分厚いのに目次が章立てのみ、というくらい。品切れにならないうちに一念発起して全巻揃えるのもありです。古本価格も全然下がらないので資産価値の高い本(どんな説明だ)


ヘーゲル (2016)『哲学史講義』河出文庫, 全4巻

第1巻の序文に哲学史の意義が書かれてますので、そこだけでも読むことをすすめます。(無料サンプルでかなり読めます。) 本文も関心のある哲学者の部分は読むといろいろと示唆を得られる。


古代哲学史

岩田靖夫 (2011)『ギリシア哲学入門』ちくま新書

入門レベル。

ただし通史ではない。岩田靖夫の哲学的関心がもろに書かれていて、哲学と現代のかかわりについて考えている本。

おなじちくま新書の『よく生きる』や岩波新書の『いま哲学とは何か』に近い。なので、ある意味では読み物として読める。質の高い哲学的文章といってもいい。岩田靖夫はとにかく難しいことはひとつも言わないし、根本的な発想も「自由と平等万歳」というたいへんわかりやすいものなので、上記3冊のどれでもいいから読んでみるといいことあるかもしれない。

ちなみに(といってもこっちが本題だが)通史的なものとしては『ギリシア思想入門』東京大学出版会。『ヨーロッパ思想入門』の叙述が肌に合えばぜひ読んでみてください。(しかし岩田靖夫は肌に合わない人も多い気がする。ネオ高等遊民も最初は全然面白いと感じなかった。その辺の話は、noteの別記事でしたので、興味あればご覧ください)


リーゼンフーバー (2000)『西洋古代・中世哲学史』平凡社ライブラリー

記述は硬いが大変良質です。一読して理解するのは結構難しいかも。長年お世話になるような本。学者におすすめを聞けば絶対に挙がってくる本。教養~学部専攻レベル。


岩崎允胤 (2007)『ヘレニズムの思想家』講談社学術文庫

教養レベル。古代後期、ストア派・エピクロス・懐疑派を扱う。人類の知的遺産シリーズの文庫化。じつに平易で良質。


廣川洋一 (1997)『ソクラテス以前の哲学者』講談社学術文庫

教養レベル。初期ギリシア哲学を扱う。何すご哲学史を作る上でもっとも役に立っている本。絶版になってないことに驚く。


日下部吉信 (2018)『ギリシア哲学30講』明石書店, 上下巻

教養~学部専攻レベル。クサカベクレス(と私が勝手にあだ名をつけてる)の講義集。「現代の人間は卑小である」などの箴言をたくさん残しているからクサカベクレスと名付けた。タレスからプロティノスまで抑え、学説のまとめとしても非常によくできている。ソクラテスとプラトンの解説がややそっけないけど、そこはほかの人がいくらでも詳しくやってるので全く問題ない。

明石書店公認の書評記事を書きました。


納富信留 (2021)『ギリシア哲学史』筑摩書房

学部専攻レベル

2021年刊行の新たなスタンダードの古代哲学史。ヘレニズム以降は続編で扱うとのこと。

叙述の基本的なスタイルとしては、学者間で合意のとれている通説についてきっちりと解説していく、わりかしストイックな叙述態度。とはいえ、部分部分では著者の独自の解釈や、通説ではないが著者が共感する解釈の紹介などもなされている。

ギリシア哲学全般に関心がある人は、とりあえず手元にあると心強い本。


天野正幸 (2016)『哲学の原点 ソクラテス・プラトン・アリストテレスの知恵の愛求としての哲学』左右社

学部専攻レベル。放送大学叢書。価格も内容もやや高尚だが、プラトンのイデア論などの解説はじつに勉強になる。


また、古代後期=ヘレニズム哲学の詳しい解説として『哲学の歴史』第2巻をおすすめします。


中世哲学史

ルーベンスタイン(2018)『中世の覚醒』ちくま学芸文庫

教養レベル。12世紀ルネサンス(=アリストテレスの作品が西ヨーロッパに還ってきて、翻訳されたことを主とした古典復興)を、歴史大河ドラマのような調子で描き出した本。

教科書的な解説などではまったくないので、文章はやや硬いけれども、入り込んでいければ大変におもしろい。中世に興味を持った人の最初の読書にもおすすめ。

ただ、12世紀以前の、教父哲学などは、主題ではないため、ほとんど扱われていない。アウグスティヌスなどは一応触れられているが、アウグスティヌスやその周辺、あるいは中世の修道院制度などに関心がある方は、ほかの本がよいと思う。それにしても、この本は読むといいよと断言できる。


ルチャーノ・デ・クレシェンツォ (2003)『物語中世哲学史 アウグスティヌスからオッカムまで』而立書房

教養レベル。中世の通史はあまりなく、通史としての読みやすさを考えると、まずはこれかなと思った。(と思ったけど、『中世の覚醒』をおすすめします。2023年5月)


八木雄二 (2012)『神を哲学した中世―ヨーロッパ精神の源流―』新潮選書

入門~教養レベル。これも教科書的な説明ではなく、著者がとらえた中世哲学の全体像の提示がある。

トマスやスコトゥスなどの、哲学的ではない話題についての考察がたくさん紹介されててちょっと面白い。

たとえば魔女についてトマスはすげえ偏見を持ってるとか、スコトゥスは今でいう民事訴訟みたいな、法律・裁判に関する案件をすげえちゃんと考察してるとか。

同じ著者による『中世哲学への招待』は、ドゥンス・スコトゥスに焦点をあてた入門書。(やや入手困難か)


リーゼンフーバー (2003)『中世思想史』平凡社ライブラリー

教養~学部専攻レベル。上述のリーゼンフーバー本とあわせて。これもなかなか一読してはわからないけれども持っておいて損はない。


稲垣良典 (2019)『神とは何か 哲学としてのキリスト教』講談社現代新書

入門レベル。通史というわけではないが中世哲学の考え方を知る上ではこの上ない。叙述のスタイルが中世哲学的でおもしろい。

なぜ哲学に信仰が必要なのか、というのが本書の一貫したテーマ。
知的探求を誠実に進めるためには、神の問題は避けては通れないし、神を知的に探究するなら、信仰を持つか否かという問題が避けては通れないという、キリスト教徒の力強い説得。


中川純夫編 (2008)『哲学の歴史〈第3巻〉神との対話―中世 信仰と知の調和』中央公論新社

学部専攻レベル。すでに紹介したシリーズですが。中世哲学の概説として大変おすすめなので改めて掲載。


ルネサンス哲学史

伊藤博明 (2012)『ルネサンスの神秘思想』講談社学術文庫

入門~教養レベル。神秘思想だけでなくルネサンス時代の哲学全体の案内になっている。


伊藤博明編 (2007)『哲学の歴史〈第4巻〉ルネサンス 15‐16世紀』中央公論新社

上記の学術文庫の元ネタ、、、というわけではないが、多くの著者による、より包括的なルネサンス哲学概説。エラスムスなどもカバーしていたはず。このほかルネサンス哲学はクリステラーとかブロッホとかシュミットなどあるが、個人的にはこっちの赤本のほうがわかりやすいので上記2冊で十分かと思う。


ヨーロッパ近世近代哲学史

野田又夫 (2017)『西洋哲学史: ルネサンスから現代まで』ちくま学芸文庫

ルネサンスに限らない(というかむしろ少ない)が、近代以降の哲学史を知る上で大変優れた本。


古川雄嗣 (2018)『大人の道徳―西洋近代思想を問い直す』東洋経済新報社

入門レベル。主に近代政治思想を扱う。公民で習う社会契約論のような。学びなおしのはじめの1冊として強くすすめたい。


堀川哲 (2006)『エピソードで読む西洋哲学史』PHP新書

入門レベル。逸話や生涯といった伝記的な部分から哲学に親しむのは哲学を学ぶ方法として非常に有効だと思う。その代表が清水書院の「人と思想」シリーズ。本書は幅広く多彩な人物を取り扱う。


佐藤義之他編(2023)『観念説と観念論: イデアの近代哲学史』ナカニシヤ出版

学部専攻レベル。副題が示す通り、プラトンのイデアは近代になって、自分の心(思考・精神)のなかにあらわれた「観念」という意味に変わった。その「観念」という言葉で、デカルトはじめ近代の哲学者は何を意味していたのか、その微妙なグラデーションが、思想の違いを生み出していることを、明らかにしている。

2023年に出版された、非常に興味深い本です。難易度もそれほど高くありません。


上野修 (2011)『デカルト、ホッブズ、スピノザ 哲学する十七世紀』講談社学術文庫

入門~教養レベル。近世哲学の良書。


上野修 (2013)『哲学者たちのワンダーランド 様相の十七世紀』講談社

入門~教養レベル。上記が気に入ればぜひこちらも。というか、どっちか気にいったほうをぜひ。



近現代イギリス・アメリカ哲学

一ノ瀬正樹 (2018)『英米哲学入門 ──「である」と「べき」の交差する世界』ちくま新書

入門レベル。近世のイギリス経験論、近代の功利主義から現代の分析哲学まできわめて明瞭簡潔に書かれた哲学史。


一ノ瀬正樹 (2016)『英米哲学史講義』ちくま学芸文庫

教養レベル。上記とセットでぜひ。


寺中平治、大久保正健編 (2005)『イギリス哲学の基本問題』研究社

教養レベル。こちらもイギリス哲学を通史的にカバー。スコラ哲学から始めている。


児玉聡 (2012)『功利主義入門 ──はじめての倫理学』ちくま新書

入門レベル。功利主義の案内。


伊藤邦武 (2016)『プラグマティズム入門』ちくま新書

入門レベル。プラグマティズムにも色々あるのだけど、特に現代のネオプラグマティズムがよくわかる。


近代ドイツ哲学

じつは選書に苦労した。入門に最適なハイネ『ドイツ古典哲学の本質』は絶版。また学部専攻レベルのすぐれた通史の岩崎武雄『カントからヘーゲルへ』も絶版。どちらもびっくりするくらい高騰している。せめて岩崎本は復刊されないかなあ。

追記:岩崎武雄は電子書籍で復刊しました。


岩崎武雄 (1977)『カントからヘーゲルへ』東京大学出版会

近代ドイツ哲学はまずこの書物をすすめたい。古いが名著。

長らく絶版で価格も高騰誘民だったが、2021年に東大出版が電子書籍化。残念ながらテクスト化はされていない、いわゆる固定レイアウトだが、価格はなんと990円。爆安。読む予定がなくてもとりあえず買うレベル。

ちなみに、カントに限れば岩崎武雄『カント』も大変に名著。


久保陽一 (2012)『ドイツ観念論とは何か―カント、フィヒテ、ヘルダーリンを中心として』ちくま学芸文庫

教養レベル。現在手に入れやすいものとしては本書と下記村岡(2012)が標準的な通史。しかし、叙述は結構難解で、とっつきにくいところがある。やはり1つ上の岩崎武雄からがいいだろう。


村岡晋一 (2012)『ドイツ観念論 カント・フィヒテ・シェリング・ヘーゲル』講談社選書メチエ

教養レベル。


大橋良介編 (2005)『ドイツ観念論を学ぶ人のために』世界思想社

教養レベル。


ベルナール ブルジョワ (1998)『ドイツ古典哲学』白水社文庫クセジュ

入門~一般レベルか。申し訳ないけど未読なのでなんとも言えません。


加藤尚武 編 (2007)『哲学の歴史〈第7巻〉理性の劇場―18‐19世紀 カントとドイツ観念論』中央公論新社

ある程度網羅的な概説書としては、おそらくこれがよいと思います。


実存主義

ここも選書に苦労。全体を概説した本はほとんどない。あっても絶版(金子武蔵とか)。なのでここは各哲学者の入門書も選定しました。


松浪信三郎 (1962)『実存主義』岩波新書


工藤綏夫 (2014)『人と思想 19 キルケゴール』清水書院

キルケゴールで真っ先にすすめられる本。


海老坂武 (2020)『NHK「100分de名著」ブックス サルトル 実存主義とは何か』NHK出版


現象学

現象学に関しては、一般向けと学術向けの落差が激しい気がします。現象学の歴史的なしっかりした概説にチャレンジするとかなり難しい。ほかにも良い本がたくさんあると思います。


木田元 (1970)『現象学』岩波新書

これ単体では意外と難しい本。私のような現象学なんも知らんという方が読んでも苦戦する。先述の木田元のやさしい本で木田元の文章に慣れてから読むことをおすすめします。


谷徹 (2002)『これが現象学だ』講談社現代新書

入門レベル。おそらくもっとも親しみやすいので現象学はじめの一冊に。


新田義弘 (1992)『現象学とは何か フッサールの後期思想を中心として』講談社学術文庫

ここからは学術的なスタンスにぐっとシフトするため、やや難解です。新田先生は『哲学の歴史』講談社現代新書という本もあるので、こちらから読んでもいいかもしれません。(通史で挙げるべきだが未読でして、すいません)


田口茂 (2014)『現象学という思考: 〈自明なもの〉の知へ』筑摩選書

難解ではあるものの、アマチュアが現象学を学ぶ上でかなり良い本だと思います。


木田元ほか編 (2014)『縮刷版 現象学事典』弘文堂

本格的に学ぶならぜひ持っておいてほしい事典。


入門レベルの現代思想

小阪修平 (2002)『そうだったのか現代思想 ニーチェからフーコーまで』講談社+α文庫

小阪修平という人物は予備校講師とのことだが、とりあえず哲学者が何を言っているのか日本語としてわかる解説をする腕にかけては一級だと思う。

とりあえずはこの解説を読み、もうこの解説じゃ物足りないんだ! もっと大切なことがあるはずだ! と感極まってきたら、別の本を当たればいい。


加藤尚武 (1997)『20世紀の思想 マルクスからデリダへ』PHP新書

簡単な解説をしたあとに、加藤尚武の独特の評価があって、それがいかにもPHP新書という出版社や読者に合わせたような感じがして、ちょっと面白い。要するに丸山眞男とかをこきおろしているのだ。(なんかPHPって保守派御用達の読み物が多いよね)


木田元 (1991)『現代の哲学』講談社学術文庫


内田樹 (2002)『寝ながら学べる構造主義』文春新書


難波江和英&内田樹 (2004)『現代思想のパフォーマンス』光文社新書

現代フランス哲学の概念装置を使って、現代文学を読み解くという構成。わりと入りやすいかと思う。


教養レベルの現代思想通史


石田英敬 (2010)『現代思想の教科書 ──世界を考える知の地平15章』ちくま学芸文庫

メディア・記号論が手厚い。


岡本裕一朗 (2015)『フランス現代思想史 構造主義からデリダ以後へ』中公新書

フランス現代思想史と書いてあるものの、現代思想はたいていフランスなのでほぼ全体を抑えられるようになっている。


学部専攻レベルの現代思想通史

川口茂雄、越門勝彦、三宅岳史 編 (2020)『現代フランス哲学入門』ミネルヴァ書房

近刊のためまだ手に入れてはいないのですが、評判を聞く限りよさそうです。


「現代思想2019年5月臨時増刊号 総特集=現代思想43のキーワード」青土社

教養~学部専攻レベル。キーワード特集。個々の解説は難しいのだけど、多岐にわたる領域をおさえている。



現代思想に関しては私もまだまだ不勉強なため、長い目で追加していきたいと思います。おすすめあればぜひ教えてください。



政治思想

福田歓一 (1970)『近代の政治思想』岩波新書

入門~教養レベル。非常に簡潔でわかりやすい見取り図が得られる。東京大学出版会の『政治学史』は政治思想史の教科書第一世代で、いまだに標準(らしい)。前述『大人の道徳』が気に入った方はぜひこちらも。


宇野重規 (2013)『西洋政治思想史』有斐閣アルマ

入門~教養レベル。政治思想史の教科書第三世代。新たな標準です。


あれ? 第二世代は? という疑問が聞こえまくるので紹介します。


佐々木毅ほか編 (1995)『西洋政治思想史』北樹出版

学部専攻レベル。政治思想史の教科書第二世代。福田新書や宇野アルマよりも難易度や専門性は高いので後回しにしました。


神島裕子 (2018)『正義とは何か―現代政治哲学の6つの視点』中公新書

入門~教養レベル。現代の政治哲学は正義論です。正義論としては通史ではありませんが伊藤恭彦(2012)『さもしい人間―正義をさがす哲学―』新潮新書も大変おすすめです。むしろ通史より先に読み物としてもこちらの一読をすすめたい。



日本思想


鹿野政直 (1999)『近代日本思想案内』岩波文庫


鹿野政直 (2005)『近代国家を構想した思想家たち』岩波ジュニア新書

入門レベルの近代日本政治思想史として。


田中久文 (2015)『日本の哲学をよむ: 「無」の思想の系譜』ちくま学芸文庫

入門~教養レベル。西田幾多郎・和辻哲郎・九鬼周造・三木清という4人の哲学者に関する優れた概説。


末木文美士 (2020)『日本の思想をよむ』角川ソフィア文庫

入門~教養レベル。本覚思想の仏教研究者による日本思想史。


竹田篤司 (2012)『物語「京都学派」 - 知識人たちの友情と葛藤』中公文庫

入門~教養レベル。京都学派の評伝的作品。哲学の中身の概説ではなく人物伝。


渡辺浩 (2010)『日本政治思想史―十七~十九世紀』東京大学出版会

学部専攻レベル。江戸徳川期から明治期までの定評ある政治思想史。


テーマ別哲学史

野家啓一 (2015)『科学哲学への招待』ちくま学芸文庫

入門~教養レベル。科学史、科学哲学、科学社会学という構成がじつに読みやすい。


木島泰三 (2020)『自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史』講談社選書メチエ

教養~学部専攻レベル。スピノザ研究者による、自由意志・決定論をテーマにした哲学史。古代ギリシアの科学論から現代のデネットの議論まで、充実したテーマ史。


米虫正巳 (2021)『自然の哲学史』講談社選書メチエ

教養~学部専攻レベル。フランス現代哲学研究者による自然概念をめぐる哲学史。自然をテーマにした哲学史としてはほかに『自然概念の哲学的変遷』がある。


山本貴光、吉川浩満 (2016)『脳がわかれば心がわかるか──脳科学リテラシー養成講座』太田出版

入門~教養レベル。いわゆる心の哲学に関するよき入門書。「脳研究小史」として心と身体をめぐる平易な哲学史がある。巻末ブックガイドのおそるべき充実ぶり。


新村聡、田上孝一編 (2021)『平等の哲学入門』社会評論社

平等概念のテーマ史。(近刊ゆえ未読ですが挙げました)


三宅陽一郎 (2016)『人工知能のための哲学塾』ビー・エヌ・エヌ新社

人工知能になぜ哲学が必要なのかという問いを出発点に、現象学やデカルト、ドゥルーズなどを取り扱う。


ブックガイド・文献解題

最後に、読書案内の本。(文献解題とは、本の内容の要約や解説という意味)


岡本裕一朗 (2020)『哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる』KADOKAWA



熊野純彦編 (2011)『近代哲学の名著 デカルトからマルクスまでの24冊』中公新書



仲正昌樹 (2017)『現代思想の名著30』ちくま新書


「現代思想2018年4月号 特集=現代思想の316冊――ブックガイド2018」青土社


苅部直 (2018)『日本思想史の名著30』ちくま新書

日本思想史に関心のある方はぜひこちらも。渡辺浩先生の後継。


見田宗介ほか編 (2014)『縮刷版 社会学文献事典』弘文堂

教養~学部専攻レベル。社会学とは銘打ってあるが、哲学書の解題も多く収録。特に現代思想に関心のある方は必携レベル。


山本貴光、吉川浩満 (2021)『人文的、あまりに人文的』本の雑誌社

哲学に限らない広い人文系のブックガイド。


おわりに。全部読むべきなの?

今回は品切の本は入れませんでしたし、1人や1冊に絞った解説書もほとんど選定しませんでした。また、偏向はどうしても出ると思いますし、より良い本もあると思います。(皆様からもぜひ、これが良かったと教えて頂ければ幸いです。)

こちらが好評であれば、いずれ1人1冊の解説書バージョンや絶版良書バージョン、また日本語訳原典のおすすめなどもピックアップしたいと思います。

冒頭にも書きましたが、長い目で追記していきますので、よかったらブックマーク代わりにスキを押しておいてください。気にいればSNSでのシェアなどもよろしくお願いいたします。


また、上記のリストを全て読むべきだとも思っていません。むしろ入門的な本ですから、とりわけ関心をもった領域の専門書などをどんどん掘り下げていってほしいです。

それでも、たとえば10冊読むにしても、その10冊を実際どう読んでいったらいいのか、、、と困る方もいらっしゃると思います。

そんな方は、以下の別記事をどうぞ。概説書の読み方や、哲学史の勉強法について書いてあります。note自体は有料ですが、無料で読める部分に方法はすべて書かれてありますので、参考までにご覧ください。


最後まで読んでくださって謝! よかったら ・いいね(スキ) ・twitter等への共有 ・サポート をお願いします。 【一番人気】 https://note.com/kotoyumin/n/n699b2fe7e66b ゼロから哲学をしっかり学ぶ方法を丁寧に書きました。