ミニマム星のミニマム人

第一章 疑問


存在していて存在してないこの世界。

今あなたたちが生きてるココは
宇宙から見てちっぽけだ。

ミニマム星のミニマム人。

心の叫びや絶望だって
ポケットティッシュで掴めるサイズ。

そんなことを意気揚々と言っていたあいつもミニマム星のミニマム人。

なんだわたしたちの人生なんてその程度のものだったんだ。



いや、そんなはずはないよね、

だってわたしたち毎日必死に、透明の明日に触れようとしているもんね。

今ここにいる、とびっきりの理由なんてあるのかわからないけど、今から一緒に探しに行こう。


第二章 生活


家事をこなすごとに増えていく指のささくれ。

ささくれ芝生ができた指をせっかくだからガーデニングすることにしたんだ。

美しい花、美味しい野菜、沢山の植物が成長していく。

その姿が微笑ましくて、思わず口角が上がった。

植物が育つごとにほうれい線も濃くなり、だんだんほうれい線が気になるようになってきた。

鏡に向かってため息をついたら、ため息にこう言われたんだ。

あなたのほうれい線には住んでる人がいて、
集合住宅なんかもできちゃってるから、
空気の換気をするために笑わなくちゃいけないよ。

生活していく上で増えていくもの濃くなるものがあるけれどそれを愛さずには前に進めないんだ。


第三章 言葉


きみの言葉で救われる日もあればあなたの言葉で殺される日もある。

でも1番つらいのは自分の言葉であなたを刺してしまった時。

言葉って持ち主のそばを離れた途端良くも悪くも暴走していく不思議な生き物だな。

この生き物のせいで悩んでいるきみには全てを飲み込んできみの一部にする必要はないことを伝えたい。誰だって花火みたいにどこから見ても同じくらい美しい存在にはなれないんだから。

この生き物に寄りかかりすぎているきみには受け取ったものだけで自分を作りあげないでほしいことを伝えたい。空腹をなくすためにまわりから無造作に集めたものを食べるだけではいつになってもお腹いっぱいにはならないから。



この生き物だけが独り歩きしないように、愛を体に響かせるんだ。そうしたらあたたかい残響が雨雲を作って春時雨のようなやわらかい言葉の雨を降らしてくれるって信じてる。

第四章 呪い


すやすやと眠る日々の中に

ジクジクと寝れない日だって現れる

そんな時、わたしはね、乾いた外の空気を食前酒にしてわたしを囲う呪いをモグモグ食べるの。

食べ切れなかった残りの呪いを圧縮袋に詰め込んで、胃の中に収納する。

そうしたら胃の中のわたしが残りの呪いを食べてくれる。

食べ終わった後はぐっすり寝れたって?
いや、結局朝まで過ごしたよ。

記号のように過ぎてく時間に焦りと期待を絡ませてなんとかついていこうとしたんだけど置いてけぼりにされちゃった。

そんな時は呪いという虚構の武器を言い訳にして、無意味な時間に意味付けをしていくんだ。


第五章 旅


りんごの上でハッピーダンス!
レモンの上でハッピーダンス!

せっかく楽しく踊っていたきみの居場所を誰かが蹴った。

ヒューンっとすごいスピードで落ちていき、地獄のハッピーエンドに辿り着いた。

入口で案内人がこう言った。

地獄のハッピーエンドへようこそ!
ここは落ち込んでるあなたのための居場所だよ。ここでは弱音吐いても、誰かに頼っても大丈夫。楽しくないことだってなんでも言っていいんだよ。


痛みを覆う癖のあるきみは涙に咽び、声が枯れるほど叫び、嘘をつくことをやめた。

地獄が気に入ったきみはここに引っ越すことにした。

地獄に慣れてしまったきみは口が歪み始め、毎日弱音を吐き文句を言うようになってしまった。

そんなきみは「かわいそう」の反射で輝き、
傷心のファッションショーではトリを飾った。

きみはすでに地獄の中心街にあるネガティヴアヒージョの具材になってしまっていたのだ。



ある朝鏡を見た時なにかの違和感を感じたきみはここがなぜ地獄と呼ばれるのかようやく気づいた。

自分にここは合わないと思ったきみは、地獄の住民に感謝を伝えて引っ越しを決意した。

さようなら。またどうしてもどうにもならない時にだけ片足お邪魔させてもらうね。


第六章 理由

わたしたちは溺れているようでずっと歩いていた。

救いを求め、救いを作り、救いを壊して前に進んでいくのだ。

今ここにわたしたちがいる理由は銀河に紛れてしまって永遠に見つけ出すことはできない。

だからわたしもきみもあなたもわたしたちもミニマム同士この先も手を取り合って今を踏み締めていこう。

この先、あまりにも醜い世界をみて孤独を感じることがあっても、
あまりにも美しい世界をみて孤独を感じることがあっても、
ひとりぼっちだなんて思わないで欲しい。



光る星を見ながらプールサイドでお茶でもしよう。



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