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文芸部所属の理系男子高校生からの質問

私の出身高校では、年に一度、さまざまな分野の職業に就いている卒業生が自分の職業に関する講義を行い、在校生の将来のキャリア形成のヒントにしてもらう、という行事があります。
今月のはじめに私も講師を務め、脚本家にとって大切なスキルである「常識の枠にとらわれない発想法」などについてお話してきました。
みなさんとても熱心に聞いてくれて、発言も活発で、楽しく有意義な時間を過ごさせてもらいました。

質疑応答の時間にもいろんな質問が出たのですが、特に印象に残ったのは理系クラスの男の子からの質問でした。
「僕は大学の理系学部に進むつもりですが、今、文芸部に所属しています。文章を書いていることは、理系の道に進んでも役に立つでしょうか?」
とのこと。
学ぶ分野が何であれ、自分の意見や考察を文章で表す能力は必ず活きるはずなので、
「文章力は非常に汎用性が高いスキル。絶対に役立ちます」
と答えました。

その後、数日が過ぎてから、ふと気になったのですが、彼はなぜこの疑問を抱いたのでしょう?
自発的に「理系クラスにいることと、文芸部に入っていることって矛盾してるのかな?」と思ったのならいいのですが、周りの大人から、
「やってることが矛盾してる」
「文芸部の活動の時間は、無駄なんじゃないの?」
といったことを言われたのでなければといいなあと思います。

「Aという目標のためにBを学ぶ」「将来Cをやるために、Dという準備をする」といったことは、もちろん大切ですが、人生のなかのあらゆる経験が、その後どんな風に役立つかなんて誰にもわからない、というのも事実ですよね。
「目標に直結したことしかしない。それ以外は無駄」という考え方は、一見合理的なようで、実は機会損失が多いのではないかと思います。
そして、高校生にそれを伝えるのは、社会に出て、さまざまな経験を積んだ大人でなければできないこと。
受験に備えるのが大切なのは当然のこととして、これからも彼には、文章で自分を表現することを止めないでほしいと、強く思います。

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脚本、小説のオンラインコンサルを行っていますので、よろしければ。


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