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【詩】夏のにおい

生きものが死ぬと
甘いにおいがする
夏になるとたくさん死ぬ
だから空気はほのかに甘い
心地よい
とわたしたちは思う
なつかしい
と思うことも
生き残ったものたちではじめる朝
蝉がぎりぎりと鳴き
鳥が目をみはり
子どもは駆け出す
たんなる晴れた日
それは夏
くさりかけた抜け殻をゆらし
甘い風が借景をわたってゆく
わたしたちはみな
遠いところから来た

草間小鳥子
(詩集『あの日、水の森で』より)


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