アニメ「おにまい」感想(第1話)

 タイムライン局所で話題沸騰中のロリコン作画アニメ「おにまい」の1話を見る。ゆうに十畳はあろうかという個室を与えられ、エロゲーをパッケージ版でコレクションする主人公は、近年というよりは90年代の引きこもりオタクに見えます。「言うほどエロくないし、言うほど動きもいいと感じないのは、ネット激賞の弊害だよなー」などと油断していたところ、後半部でタイトルを回収する台詞にふいをうたれ、気づけば涙を流していました。これこそが現代の男性にとっての救済、神不在の本邦におけるドストエフスキー的救済だと感じたのです。オタクの抱く人としての苦しみは性別に由来していて、学歴、地位、カネ、家族、すべての社会的外形と競争から離れて、圧倒的に庇護される存在へと男性を「降りる」こと、これこそが求めていた魂の救済なのだと気づかされました。主人公の言葉をかりるなら、「お父さんは、もうおしまいでもいいのかな」とでもなるでしょうか。

 氷河期世代にもかかわらず、昭和の人生をトレースできている身を、能力や才覚のゆえだと考えたことはただの一度もなく、なぜいま子ども部屋の高齢ニートでないのかと問われたならば、「たまたま運がよかったから」とだけ回答するでしょう。夭折した祖父が人生で使わなかった分や、事故で亡くなった祖母が死の回避に消費できなかった分など、「血脈に埋設された運」なるものを近年では強く感じるし、この上でさらに自分の願いまでかなってしまっては、総体のバランスが崩れてしまうのではないかという恐れさえ、心の片隅にはあるのです。

 おにまい、願わくば最終話で「男性にもどった主人公が、引きこもりをやめて人生を一歩ふみだす」みたいな展開にはなりませんように! これまで私たちは牛のように黙って人生を前へ進めてきたし、もうここから降りて少女としての余生を手にしても責められないほどには、充分に頑張ってきたのですから!

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