見出し画像

贅沢ってなあに?

昨日、打ち合わせで三輪舎の事務所へ。三輪舎は中岡さんが代表をつとめるひとり出版社。場所は妙蓮寺、はじめて降り立つ駅だ。
駅周辺にちいさくまとまった商店街があり、少し歩くと大型のスーパーもあり、池のある公園や、屋外の市営プールもある。お出汁のかおりにそそられる、ちいさなおでんの練り物屋さん、和菓子屋さん、そのそばに昔ながらの本屋もあり、その2階に、三輪舎の事務所はあった。

中岡さんとは、今年の2月にボーンフリーワークスでおこなった「本を贈る展」で出会った。あれから10カ月の間に、自宅にあった事務所をこの場所にうつし、同時に町の本屋さんの新しいあり方みたいなものを模索し、目下実験中のご様子。きっと色々と大変なこともあるだろうけれど、内情はよくわからないけれど、たぶん導かれた訳で、「楽しそうだなぁ、がんばって!」と、ただワクワクしてしまった。

展示を思いついたときも、タイトスケジュールで中岡さんを振り回してしまったけれど、中岡さんは見事にやり遂げてくれたから、中岡さんならきっと何事もやってやれないことはないように思う。陰ながらエールをおくる。
展示をする前、実はわたしはあまり本を読まないし買わない人だった。もっと言うと、本を買う、という行為を正直とても贅沢に思っていた。その理由は、図書館もあるから、借りて読めるのに買うのは贅沢なのかも、と思っていたからだ。それが、「本を贈る展」が終わったら、なんだか妙に本が好きになり、本を作っている人達のことも好きになり、買っていく人たちの幸せそうな顔を見て、「これは贅沢とは意味が違うかも」と意識が変わった。この展示を誰より1番楽しんだのは、おそらく企画をしたわたし自身だったし、振り返って思うと、タイトルのまま、自分が自分に「本を贈る」ことになっていたのだ。

わたしは昔から旅が好きで、これまでも収入のほとんどを旅費についやしてきた。それを贅沢だと思ったことは一度もないけれど、人によっては旅を贅沢と思う人もいるだろう。感覚って不思議。でも、その感覚や常識は、きっかけ次第でいつでも変えられるのだと知った。

新卒で入社したのは靴屋で、たまたま配属になったお店は週末ともなると、1日の売上が一千万を超える当時1番店と言われる店だった。配属の理由は、家から近い、ただそれだけだったと思う。15分のお昼休憩以外はひたすら靴を売り続けたけれど、分からないのに売れないと思い、自分自身もひたすら靴を買った。多忙過ぎて2年と体がもたなかったけれど、その間に2〜300足くらいは買った。スニーカーの各社様々なニューモデルはもちろん、VANSのスリッポンなどは古着屋で昔の型も購入してそのフォルムやロゴの違いを説明するのがプロだと思ったし、クラークスなどの革靴ももちろん、ダナーなどのメンズに人気のブーツも、ビブラムソールの感触や耐久性を知る必要があると思って買って履いたし、アウトドア用の靴のゴアテックスのクオリティを知るためなど、買いまくり、履きまくった。当然、下駄箱には入らないので、箱のまま保管し、部屋に積み上げるスタイル。そんな凝り性のわたしだから、今年は本をほんとうにたくさん買った。人にもプレゼントした。

思い起こせばこどもの頃、母はたくさん絵本をプレゼントしてくれた。ページの1番最後の無地のページに、母のお手紙のような直筆のメッセージが書いてあって、自分だけのもの、自分のために選んでくれたもの、と思って特別な感じが嬉しかった。

忘れかけていた、本という存在との再会。
中身だけではなく、見た目の美しさでアートとして惹かれる本、本屋では色々な出逢いのケースがあったけれど、買うときはいつも気持ちのいいものだった。贅沢と言えば贅沢かもしれないけれど、昔と違ってもう大人になったし、お仕事だって頑張っているし、お値段も、買えないことはない。自分の暮らしに、好きなアイテムが増えた。それは幸せなことだ。つかったら、また頑張って働けばいい。だってわたし、もう十分大人なんだもの。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?