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創作、エッセイ、思考

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自作した小説、エッセイ、詩っぽい何かをまとめています。引用文は架空の作者と本です。
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2023年10月の記事一覧

「正義の反対って何だと思う?」
「そりゃあ、悪じゃないですか?」
「違うわ」
「違うの?」
「正義の反対は──正義よ。正義が反対の正義を“悪”と思っているだけ」
「うわあ、邪悪っすね」

九十九もずく『戦争と悪魔』

3

眠れない夜に乾杯。
4年前から睡眠薬を飲まないと眠れなくなった。
身体が眠りを拒否している。
起きていても、不安しかないのにね。
おいしいお酒が飲みたいな。
でも、今飲んでしまったら、家への帰り道を忘れてしまうだろう。
癒えない家なんて忘れなよ。
血よりも濃いお酒を。

4

傾いても倒れないでいたい。
ウイスキーを飲んで、どうにか生き延びていきたい。
これは人生という砂漠を歩くための命の水だ。
最低な毎日も、ウイスキーに溶けた時間が癒してくれる。

3

それは最高においしいウイスキーを飲んだ帰り道だった。
口の中に残る香りが、吐いた息とともに夜へと溶ける。
世界が余韻で満たされた。
ここに天へと昇る階段があったなら。
不幸ではなく幸せの意味で、今なら死んでもいいやって思えた。

4

出会いと別れは人生の呼吸だ。
息を吐かなければ、新しい空気を吸えない。
その人と離れることで、出会える人もいる。

4

ぼくが疑うことにしている人。
「やたら本質を語ろうとしている人」
「自分の主観を紛れもない事実だと疑わない人」
「正義だと思っていることに支配されている人」
「自由は訴えるのに、責任には触れない人」
「正論で解決してこようとする人」
「何かを信じたり、疑ったりする自分自身」

4

その鍵屋は錆びない

9月28日。ぼくは市役所へ行った後、商店街へ立ち寄った。目的は自宅の鍵の修理だ。ひよの怒りの鍵投げにより、ぼくの心のように微妙に曲がってしまった鍵を直してもらうのだ(使えないことはない)。鍵のことで悩んだ時は、やはりこのお店だった。この商店街には約60年前から、鍵屋としての腕や知識をいまだに磨き続けて錆びつかせない職人がいた。 この鍵屋さんとの出会いは、数年前にさかのぼる。ぼくがまだ伯父の介護で走り回っていた頃だ。伯父が自宅の鍵を何度も失くしてしまうトラブルに見舞われていた