見出し画像

謎食材初代王者のこと

生まれも育ちも日本。日本を愛しているし食文化も素晴らしいと思う。
とは言っても日本も広い。まだまだ食べたことがない食材お料理が沢山あると思うと興奮する。

興奮と同時にきっと食べたことがないものって食べてもわからないんだよなぁ、と思う。
なんせ食べたことがないのだから。

食べたことがないミステリアスな食材やお料理対峙したとき『?』となる。
〇〇っぽいヨネー!と何か例えるものがあればいいのだけど、未知すぎると『???』フリーズしてしまう。そういう思い出がある。

育ちが内陸だった自分が『それ』を初めて見たのは専門学校で宮城に出てきてからだった。
仲良くなった先輩方と学校帰りに近くのスーパーに行って家飲みしようとなった。
それぞれ好きなお酒おつまみを選んでね!というわくわくする準備が好きだ。適当に何でもオッケーなのだけど各々がカゴに入れるものを観察して(チーズはスモークなら仲良くなれそう〜)とか雑に思ったりする。

そのスーパーの鮮魚売り場にさりげなく謎の物体が積まれていた。
何とも言えない色と形。ちょっとぼこぼこしてたりする。売り場的にのものなんだろうが衝撃的なビジュアルだった。
なにこれ…?生き物…?…のたまご?
入学したてで仲良くなったばかりの先輩に恐る恐る謎食材について質問した。
先輩は少し驚いた顔をした後、小悪魔的な笑顔を向けて答えを教えてはくれなかった。

これが私とほやの出会いだ。
福島の、栃木との県境で育った私はほや20歳になるまで見たことがなかった。食卓にも一度も出たことがないし存在を知らなかった。

その後、宮城ではメジャーな食材だと理解した。海藻とかではなくて生き物らしいし、旬の季節にはローカル番組でほやの収穫のニュースが流れる。
海のパイナップルと呼ばれてるらしい。
なる…ほど…?
海のパイナップルと言われてもいまいちの想像はできない。

そしてついにある日、居酒屋でお皿に乗ったほやとご対面した。聞くところによると『好き嫌いが分かれる食材』らしい。
私は世の中的に嫌われることが多い個性が強い食べ物が案外好きだ。何となく自分の好みな気がする。

勇気を出して皿に盛られたほやを箸でつまむ。
あの外側からは想像できないお刺身だ。の類なら大好物なので期待が高まる。
そして口へ。しっかり味わい飲み込む。

(?)

初めてのほやは完全にだった。
なんというか、不味くもないのだけどこれは美味いのだろうか…?不思議な気持ち。頭の上にハテナを浮かばせながらの2切れ目。
後味がなんか…?なんだ…?

残念なことに食べても食べてもハテナの数が増えるだけだった。
だいたいの食べ物はひと口美味しい!とか、好き!とか、苦手!とか、何かある。
ひと口食べれば判断できる人生だった。

なんといえばいいのか。頭に上のが集まってでっかい?になる感覚。
ほやぁ?そもそも名前もゆるキャラ的な力が抜ける印象がある。ほや…人生最大のミステリー。

3回目にして(よくわからないけど嫌いじゃないかも…?)
5回目で(鮮度がいいとなかなか美味しい気がする…?)
7回目で(なんかほや食べたいかも?)

なんだかんだ回数を重ねるごとにほやとの友好な関係を築き上げれた。
不思議だ。食べれば食べるほど理解していく。全身で存在を受け止めていく。
そして今では大好物として私の世界に存在するまでになった。

私の謎食材グランプリはほやが初代王者として君臨している。今後ほやを上回るを叩き出せる食材に出会えるだろうか

すぐに好きとか嫌いとか白黒つけるのではなくただ認め合う。少しずつ理解していく大切さを学んだ。

ほやに挑むことは気長に何度も頭に浮かぶ(?)と向き合うことができた貴重な経験なのだった。


貴重なサポートはnoteの記事をまとめたZINEなどの印刷代・画材代等に使わせていただきます!