見出し画像

「下野戸亜弓 箏曲リサイタル ー山田検校作品連続演奏会Ⅲ-」

山田流箏曲演奏家である下野戸亜弓さん。
2019年から、古典の会と現代曲の会をそれぞれ開催されています。
本日の公演は、古典の会の3回目にあたります。
山田流は、声の表現も重視した流派で、歌も聴きどころです。
下野戸さんは、箏曲演奏家であり、かつ日本の歌唱法の専門家でもあります。
そのお歌を聴くのも楽しみに、足を運びました。
 それぞれ趣向が凝らされた3曲が演奏されました。
 
小督曲
平家物語の小督局のお話を題材にした曲。
同じ題材の曲は、生田流の「嵯峨の秋」もあります。
「嵯峨の秋」が嵯峨野の秋の風情を表しているのに対して、「小督曲」はお話しそのものの情景を描いていて、とてもドラマチックな曲です。
山田流の曲の中でも大曲ということもあり、演奏会の後半、ハイライトに登場することの多い曲です。
1曲目に登場したことで、幕開けから一気に、江戸の世界(山田の世界)にぐぐっと引き込まれました。
通常は箏2面と三味線で演奏されるところ、今回は笛も入り、嵯峨野の風情、小督局の心情に一段と深みが増し、身に染みました。
 
那須野
那須野の殺生石にまつわるお話しを題材にした曲。
箏と三絃(中棹三味線)の曲ですが、江戸浄瑠璃を箏曲にしたかのような曲とのことで、今回は三絃を太棹三味線に変え、さらに黒御簾の鳴物も加えて江戸の芝居小屋風の演出でした。
義太夫三味線の太い響きとじっとりとした語りが、玉藻前の切ない思いを一層引き立て、鳴物も風情を添えます。
 
「明けがらす」
逢瀬の終わりを告げる明け方のからすに、鳴いてくれるな、と願う曲。
三絃一挺に、西川巳太郎さんの踊りが付きました。
約6分という、とても短い曲でしたが、とても美しく儚く、夢か幻のような世界です。
あまりにうっとりとしすぎて、演奏された時間よりずっと長く、いつまでもいつまでも、その景色に浸ってしまいました。
 
3曲通して、音楽を聴いた、というよりお芝居を観たような、江戸時代のお座敷に紛れ込んできたような、不思議な体験をしたような気分になりました。
 
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
 
*「さん」とお呼びするのは、大変失礼であると重々承知しておりますが、「客席からの眺め」では、「先生」方も、「さん」付けで表記させていただいております。何卒ご了承くださいませ。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。

 
*************
会場 紀尾井小ホール
日時 2022年10月23日(日) 14:30
プログラム
小督曲
 箏・歌 下野戸亜弓 設楽千聡代
 三絃・歌 山登松和
 笛 福原寛
 
那須野
 箏・歌 下野戸亜弓
 太棹三味線 鶴澤津賀寿
 鳴物 堅田喜三代
 
明けがらす
 立方 西川巳太郎
 三絃・歌 下野戸亜弓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?