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「箏三重奏アンサンブル 糸が織りなすハーモニー」

箏の演奏形態は、一人の独奏から、大人数の大合奏まで、様々です。
中でも少人数のアンサンブルは、演奏者同士の息づかいや掛け合いがダイレクトに感じられて、曲の情景と共に、それらも味わうことができます。
 
今回は、幼少の頃から同門で切磋琢磨されてきた3人の演奏会。
お互いを知り尽くした阿吽の呼吸と、仲の良さが伝わってくる、とても心温まる会でした。
 
それぞれ春色のお着物で始まった前半。
折しも、3日前に東京で桜の開花宣言が出されたばかり。
「春の詩集」は、そんな春を迎えた喜びが、溢れだすような演奏。
「落葉の踊り」は、「風に吹かれて落葉が舞う印象」を描いた曲ですが、春風に吹かれて、冬の重々しい気分が吹き飛ばされるようで、心がとても軽くなりました。
 
後半は、淡い春色のドレスにお召し替え。
「桜フラグメンツ」は冷水乃栄流さんらしく、とても美しい曲。
桜の花が、咲き、舞い、こぼれ落ち、流れてゆく。
重なり合う3面の箏の音は、客席にいることを忘れ、お花見をしているような気分になります。

そして「五節の舞」
素晴らしかった。
 
箏は、右手で弾いて、左手で、まだ振動している絃を押したり引いたりして音を変えていきます。
たとえば、ピアノで四分音符を一つ弾くと、1拍のあいだ、同じ音が鳴り続けて次の音に移ります。
箏は、1拍の一音を、上げたり下げたりして、次の音に繋げて行くことが出来ます。
 
「五節の舞」では、両側の十七弦が、深い深い森を描き出します。
その森の中を、箏(十三弦)が、舞っていきます。
一音一音が、揺れ動き、行きつ戻りつしながら、次の音へと繋がっていきます。
途切れることのない音のつながり。
そのリズムは、呼吸。
天女の舞は、いつしか、ありとあらゆる感情のうごめきへと変わり、深い森はブラックホールとなり、大きな口を開けています。
そして、最後は、すべてが吸い込まれて、音も情景も無くなります。
 
春のお花見の景色は、気分は、幻であったのか。
ハッと我に帰ると、ほっとした表情の三人が、手を繋いで御挨拶に出てきました。
あ、そうだった。
演奏を聴いていたんだ。
素敵な楽しい至福のひととき。
 
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。

 
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会場 ティアラこうとう小ホール
日時 2023年3月17日(金) 19:00
プログラム
春の詩集 牧野由多可/1986年
 Ⅰ箏:遠藤和奏 Ⅱ箏:小野桃佳 十七弦:山脇貴久恵
落葉の踊り 宮城道雄/1921年
 箏:小野桃佳 三弦:山脇貴久恵 十七弦」遠藤和奏
桜フラグメンツ 冷水乃栄流/2019年
 Ⅰ箏:小野桃佳 Ⅱ箏:山脇貴久恵 Ⅲ箏:遠藤和奏
五節の舞 沢井忠夫/1984年
 箏:山脇貴久恵 十七弦Ⅰ:遠藤和奏 十七弦Ⅱ:小野桃佳

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