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お産てどこでする?

 「母ちゃん、家で産んだよ?」
「あー、マジ?間に合わなかったやつね?じゃあ、あれだ。家が事件現場みたいな?」
「いやいや、元々家で産むこと選んで、そんで、家!!」

 高校生の長男が、昨年私が自宅分娩をした直後に、学校でクラスメイトとした会話です。

 お産て、どこでするものでしょうか?
きっと多くの人たちが「病院」と答えると思います。実際に、今、日本の全分娩数の約99%が医療機関でのお産です。

 残りの約1%はどこでしていると思いますか?

 答えは助産所です。
 助産所とは、助産院とも言います。医師ではなく、助産師が開業をし、運営しています。その役割はお産の介助だけでなく、妊娠中の健診や、産後のお母さんや赤ちゃんのケア、母乳相談や子育て相談などです。

 助産師が運営していると書きましたが、お産を扱う助産所の場合には、必ず産科医療施設のバックアップが整っていて、医師による医療が必要な場合には、その施設で、妊産婦さんは医療を受けることができます。

 今、10〜30代くらいの人たちは、助産所の存在を知らない人も多いかもしれません。ましてや、医療施設以外でお産ができる、ということを知らない人もたくさんいると思います。

 昔は助産所の数も今より多く、助産所でのお産、自宅に助産師が来てのお産が珍しくありませんでした。昔は「産婆さん」と言いました。今で言う助産師のことです。

 その昔、江戸時代、産婆はお産に呼ばれて向かう際、大名行列を横切ることを許されていた、と言います。いつの時代も、生まれくるいのちが大切にされていたことを感じ、嬉しくなります。

 長い前置きでしたが、これより本題です!!
 この1%を選んだ私の体験を、ここに書かせてください。1%のうちの極わずかなパーセンテージを占める自宅分娩を、私は選びました。(過去の投稿「私が欲しかったもの」に、また異なる視点で、自身の体験を書かせていただいていますので、読んでいただけたら嬉しいです。)

 自宅分娩を選んでよかったこと
①慣れた環境で出産できる
②好きな人達に囲まれて出産できる(立ち会いに人数や年齢の制限がない)
③環境を自分の好きなように調整できる(照明・音楽・香りなど)
④好きなことをして、好きな体勢で出産できる(食べる・眠る・入浴する・散歩するなど)
⑤産前産後の物理的な移動が少なく過ごせる(入退院や授乳室と病室の往復や指導のための移動がない)
⑥出産後ゆっくり休める(病院のようにスタッフが部屋に出入りすることがない)
⑦家族が出産直後から、赤ちゃんと接触できる
⑧赤ちゃんとずっと一緒にいられる
⑨産後助産師さんが毎日訪問してくれて、母子共に手厚いケアを受けられる
⑩妊娠中から助産師との密な関係を築くことができるため、産後も様々な相談に応じてもらえる

 と、ザックリまとめただけでも、これだけの「選んでよかった〜」がありました。
 
 他にも、私が感じたこととして、自宅で出産することで、日常と非日常が重なる瞬間を家族と迎えられた感動と喜びがとても大きかったです。
 バースプランの自由度が高く、私の場合は長男が臍帯切断をしてくれました。とてもよい記念になったと思います。
 分娩経過が順調な限り、医療介入はないので、自然に任せ、自力で頑張ります。会陰切開もないし、お腹を押したり、赤ちゃんを引っ張り出す、などということがないので、お母さんにも赤ちゃんにも負担が少ないです。特に会陰切開がないのは、産後がとても楽、という声はよく聞かれます。私自身も今回3回目で初めて会陰切開のないお産を経験し、産後がとても楽でした。

 妊娠中から自分の心身を整え、自分の力で新たないのちを産み出す、という経験が、自分にとっての大きな自信になりました。

 と、私の体験を書きましたが…お伝えしたいことは、「出産方法には色々ある」ということなのです。助産所や自宅での出産が「いちばん」とか「絶対によい」ということではなく、このような選択肢があることを、1人でも多くの人に知っていただきたいと思うのです。
 その中から、自分がいちばん安心できる方法を選択していただきたいです。
 中には基礎疾患がある、などの理由から、助産所での分娩が不可能な場合もあるのですが、「1人にしないで欲しい」とか「マッサージして欲しい」などの希望がある方の場合は特に、助産所での出産をお勧めします。

 正しい知識と情報の中から、自分に合ったもの、自分が望むものをじっくりと見極めて、誰かから見た「よいお産」ではなく、自分が「満足するお産」を経験していただきたいな、と思います。

 その体験が自分の自信になると思うのです!「満足するお産」を支えたい。産婆である私の思いは、自身の体験を通して、さらに強いものとなりました。

 って…仕事場に遅刻しそうになり、自転車通勤中に信号無視しかけて自分に突っ込む。
 「大名行列横切っても許される産婆だが、今は令和や!信号無視は許されません」と 笑。





 


 

 #自分で選んでよかったこと 

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