読みづらい漫画
『解体屋ゲン』 #675 一日の花を摘む は絶賛公開中。自分で言うのもなんだけど、めちゃめちゃ読みやすい。
でも、今日書きたいのはそのことじゃなくて…
『コリアン ダーク シティ』が完結した。
まとめのマガジンはこちら
https://note.com/ricehiroki/m/m61fd93a4f4ee
『コリアン ダーク シティ』は読みづらい漫画だ。パクチーの謎を追うドキュメンタリーであり、主人公の奥さんのマキさんのルーツを探るミステリーでもあり、ユタの話であり、主人公であるヒロットヨンさんが漫画と向き合う覚悟と再生の話でもある。
スタイルも一貫せずにハードボイルドとコミカルとシリアスとギャグが入り乱れ、時制も飛び飛び…どころか世代も飛び飛び、登場人物の髪型が途中で変わったり、名字が似てたりするから追いかけるこっちも大変。
なんだこれ?
怖い…
でも目が離せない
閑話休題
ちょうど今、自分たちは海外向けの漫画を作ろうとしていて、そうするとまず考えなくてはいけないのが
・読みやすい漫画を作る
ということだ。なによりもまず読んでもらわなければ始まらない。特にMANGAを読み慣れていない人たちに向けて作る時には。
その一方、国内の商業漫画を見た時に、そのマーケットに非常に息苦しさを感じていて、それは
・わかりやすく売れるものを作れ
という同調圧力があることだ。売れなければ次はない、チャンスは1度だけ、という現実。上の2つは似ているようでまるで違う。
それじゃあヒロットヨンさんの漫画は??
漫画は本来自由なものだ。何だって好きなように描けるし、描いていい。目先の結果に囚われなければ。
ヒロットヨンさんは、ある種の覚悟を持って一連の作品を描いているように思う。それは自分の描きたいものを描きたいように描くという強い意思だ。そしてその素材があり、技術があり、環境がある(多分だけどお店が繁盛している)。こうなると強い。
でも決して読者を無視して好き勝手やってる訳ではなくて、一つ一つの話には配慮が行き届いていて飽きさせず、読者が置いてけぼりにされることはない。でも着地点は見えず、流されるままに読み進め、どんどん訳が分からなくなったと思ったら実は伏線が張り巡らされていて、いつの間にか一つの物語に収束してゆく。それはすごい読書体験だ。
なによりすごいと思うのは、ヒロットヨンさんの漫画を読むと、読む前/読んだ後で、自分の人生に何か影響を与えられたと思わされることだ。「よく出来た漫画」というには現実を侵食して来過ぎる。これが漫画の力じゃなかったらなんだというのか…。読みづらいから読まないのは本当にもったいないと思う。
世の中にはすごい人が居る……最初にヒロットヨンさんの漫画を読んだ時から、その思いは変わらない。
最初に書いた紹介文がこちら。
ヒロットヨンさんには、これからも漫画を描き続けて欲しいと思う。
ここでいただいたサポートは、海外向けの漫画を作る制作費に充てさせていただきます。早くみなさんにご報告できるようにがんばります!