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映画:WAVES

先週末に見てきました。
映像や内容がムーンライトと近い印象だなと思っていたら、
同じ製作会社A24の作品でした。
色鮮やかな映像と音楽がすばらしく、
とても厳しくてつらい家族の物語でした。


ネタバレ気味なので、これから見る人はお気をつけくださいませ。


兄タイラーと妹のエミリーのふたりが主人公の物語。
前半は高校生のタイラーが頂点から転落していく姿が描かれます。

レスリングのスター選手として幸せな青春を謳歌しているタイラー。
父親が彼に勝つこと・成功することだけを強く求め続けていて、
彼が成功しているから、バランスが取れていた家族。

バランスを保つために、肩の故障を隠し、
痛みを薬で抑えて試合に出ていたタイラーが
肩に深刻な怪我をして試合で負けたとき、
父親は失望をあらわにします。
これが引き金だったように思いました。
タイラーの怪我や気持ちを心配するのではなく、失望する父親。
自分の気持ちだけが大事な父親の姿はタイラーを深く傷つけます。

そして、不運にも同じタイミングで付き合っていた彼女が妊娠。
当然のように堕ろす選択を決めるタイラー。
産みたいという彼女の気持ちに気づかず、
落ち着いて話し合うこともせず、
それ以外の選択肢はないだろう、と主張するタイラー。
一方的に自分の考えを押し付けるタイラーの行動は、
父親がタイラーにとっていた行動とそっくりでした。

怪我でスター選手ではなくなり、父親から失望され、
妊娠のことで彼女ともうまくいかなくなり、
酒とドラッグでごまかしながら、彼女への気持ちだけが強くなり、
話し合いに行くつもりで彼女の元へ行き、悲劇が起きます。

ここまでの転落がとても厳しい描写で
見ているのがしんどかったです。

そして、ここから後半に入ります。
妹のエミリーを中心に、
家族がそれぞれにタイラーのことで
傷つき、後悔し、心を閉ざしている様子が描写されます。

大学生になったエミリーが恋をして、
恋人がとってもいいやつで、でも、
恋人の家庭にも言葉では表せない複雑な事情があることを知って、
彼女が少しずつ前を向く様子が印象的でした。

恋人の家族の話を聞いて、
自分の家族の問題を客観的に捉えられたのかもしれません。
家族がそれぞれに傷を抱えたまま、
少しずつ変わっていく描写もとても自然でした。

うまく行ってるように見えていても、
いろいろあるのが家族なんでしょうね。と思いました。

同じ製作会社の映画ムーンライトも
成長過程で経験する繊細な心の機微を描いていましたが、
この映画も同じ印象を持ちました。
わかりやすさや大きな感動があるわけではないのですが、
静かに心に残る作品です。

とても励みになります。