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はじめてのアイドル沼

 これまで人生のほとんどを二次元オタクとして過ごしてきた私が突然アイドルの魅力に気づいたのは、2年前の夏頃のことである。

 最近世の中でよく耳にするし、なんとなく暇だから見てみてもいいかな、とぼんやりした動機で見始めたオーディション番組。気が付けば睡眠時間を削って観るほどのめり込んでいた。
 その番組は、今や音楽番組に引っ張りだこのアイドルグループ「niziu」を輩出した「虹プロジェクト」である。
画面の中で歌い、踊り、笑い、そして時に涙を流す彼女たちの姿は、あまりにも眩しく、可愛らしく、そして何よりも美しかった。アイドルってすごい、こんなに人の心を動かす存在なのか、と思ったのはたぶんこれが初めてのことだった。
 1話毎に滂沱の涙を流しながら少女たちの奮闘する姿を見守り続けていた私だが、いざ見終えると喪失感に襲われ、虹プロを3回ほど周回したりtwice先輩のseventeenを途中まで見たりした。あとIZ*ONEのProduce48も見た。ひーちゃんかわいい。

 さて、ここまでちょろっとつまみ食いしてみた程度の当時の私が思っていたことは、「オーディション番組ってめちゃくちゃおもしれー」である。

 考えてみればオーディション番組というのはうまくできている。デビュー前から知名度を上げ、相当数のファンを確保し、デビュー後の成功をより確実なものにできる。というかまずあんなに頑張ってる姿を見せられたら好きになるにきまってんじゃん……みんな可愛くて綺麗で一生懸命なんだもんよ……
 そういえば冒頭で「人生のほとんどを二次元オタクとして過ごしてきた」と書いたが、よくよく考えてみると幼稚園児~小学校1年生くらいの年齢の時はモーニング娘。が好きだった記憶が徐々に蘇ってきた。正直ほとんど記憶にないがモー娘。もオーディション番組をやっていたようだし、今の私の状態もそんなに突然のことではなかったのかもしれない。

 話を戻そう。虹プロを見終えた私はしっかりniziuのファンになり、彼女たちのデビューやオリジナル番組やテレビ出演をゆる~く見守ったりしていると、虹プロを見てからあっという間に1年ほどが経った。
 そして、どうやらまた日本発のアイドルグループのオーディション番組をしているらしいぞ、という話をほんのりと耳にした。それこそがPRODUCE101 JAPAN season2、通称日プ2である。
 しかし当時の私はガールズグループの番組しか見ていなかったため、「男の子のオーディションか~女の子のほうが可愛いしな~」という気持ち悪い考えで、あまり興味をそそられていなかった。

 正直この辺の気持ちの流れはさっぱり覚えていないのだが、結局のところ私は日プ2を見た。なにせ私はかなりのミーハーなので。そして「オーディション番組おもしれー。あと男の子もみんなかわいい」と思っていた。ミーハーなので。
 たしか私が日プ2を見始めたタイミングは最終オーディションの前後だったような気がするがさほど熱心に見ることができていなかったのであまり覚えていない。なぜならこの時、私には「推し」ができなかったのだ。
 私はなぜだか練習生の中から個を見出すことがなかなかできず、いつまで経っても「かわいくて一生懸命な男の子たち」という括りで彼らを見ていた。虹プロはまず人数が少なかったしproduce48はとっくの昔にデビューメンバーが決まっていたのでIZ*ONEのメンバーを中心に見ることができていた。そもそもボーイズグループのオーディションを見慣れていなかったというのも恐らく理由のひとつだろう。
 強いて言えばひっそりと最年長のあっきーを応援してました。偶然にも彼が出演していたであろう「ジパ〇グ青春記」という舞台を主催していた劇団がもともと好きで、なんとなく縁を感じたので(普段私はそういう舞台系の界隈に生息しています)。

 まぁそんな感じでゆるゆるっと日プ2を見たため、デビューメンバーが決定したのを知っても「お~そっか頑張ってね~」というゆるゆるな応援の仕方だった。全員が一生懸命でかわいいことは知っていたので、一応応援はしていた。心の中で。
 偶然スッキリの生出演やレコード大賞の放送を見ることはあって、彼らINIのパフォーマンスを見るたびに「ダンスうますぎてCGみたいだな……」と思っていたし彼らのことはちゃんと好きだった。が、この時点では推しがいなかったため沼にはハマっていなかった。

 そんな風にぼんやりと彼らの輪郭だけを捉えていた私に激震が走ったのは、INIがデビューして数か月後のことである。

「INIの2ndシングル、めちゃくちゃかっこよくね?」

 とある音楽番組で披露していた2ndシングルの「CALL119」。一番最初に何がぐっと来たかというとラスサビ前にメンバーが順番に「Call the 119」と繰り返すところである。えっ…ナニコレかっこいい……すごい……
 私はその後衝動的にMVを見た。やっぱりかっこいい。曲がめちゃくちゃかっこいい。パフォーマンスもすごい。そんでもってまともに見てなかったデビュー曲のMVや他の曲のMVやPVなんかも見てみた。ちなみにこのMVを見た時点で一番目を引かれたのは藤牧京介くんである。なぜなら顔がかわいかったので。
 え、他の曲もめっちゃすごいじゃん…かっこいいじゃんINI……なんで今まで気づかなかったん……。ここで片足の先を沼に突っ込んでしまったことを知る。


 そうしてINIのすごさを少しずつ少しずつ体感していた私にさらに激震が走ったのはそれから間もなくのこと。

「木村柾哉くん、ぽわっぽわじゃん………」

 この衝撃は私の全身をINIの沼に突き落とした。そう、推しの誕生である。

 ふわふわっと日プ2を見ていた私でもさすがに木村柾哉くんのことは認識していた。レミフラの映像で初めて木村柾哉くんの姿を見た時、反射的に「お前が主役だ」と思ったのを鮮明に覚えている。美しいダンスはもちろん、オーディション序盤にもかかわらず既に圧倒的にアイドルっぽかったからだ。アイドルを全く知らない私でも「アイドルってこういうことか……」と思わされるほどの華と爽やかさを醸し出していた。

 日プ2を見ていた当時の私の彼への印象は「パーフェクトさわやかお兄さん」。ダンスがはちゃめちゃにうまくて、それでも人一倍練習を続ける努力家で、常に他の練習生への気配りを忘れず、スタッフや国プへの感謝の言葉を真っすぐに口にする。それこそ誰よりも1位とセンターに相応しい、老若男女問わず愛される非の打ち所の無いスーパー好青年だと思っていた。
 しかし当時の私の中でそれ以上にはならなかった。ビハインドの存在も知らず本編しか見ていない私の目にうつる彼の姿はあまりにも「完璧」すぎたのだ。

 しかしINI StationやINIフォルダなどのコンテンツを見る毎に私の中の「パーフェクトお兄さん」という像がどんどんやわらかく変化していくのを感じた。「おや…?」と思いだしたのはおそらく脱出ゲームと学力テストあたりだったかと思うが、いつの間にやら彼が何をしても「かわいい……」という感想しか出なくなった。
 いや、たしかに老若男女問わず愛されるであろう好青年だという認識は何も変わってはいない。常に仲間や他の出演者やスタッフなど周囲へ感謝の気持ちを真っすぐ伝える素直さと礼儀正しさ、目の前のものと真摯に向き合おうとする誠実さは日プ2での彼の印象と違うことはなかったし、むしろそれまでの印象を遥かに超えるスーパーハイパー好青年であった。木村柾哉を嫌いな人間、この世にいないんじゃね?
 が、非の打ち所のない完璧な青年だと思っていた彼は、仲間に囲まれている時間はひたすらぽわっぽわのにっこにこ赤ちゃんなのだ。こんなにユルい生き物だったなんて聞いてないぞ。ケビンってなんだ。
 しかし忘れてはいけない、パフォーマンスになれば彼は覇王だということを。以下エンドレスループ。これが………ギャップ萌えか………
 
もう完全に沼落ちである。さようなら。


 楽曲のかっこよさと木村柾哉くんのギャップのせいでINIの深い沼にハマって早数か月。ラポネさんの福利厚生のすごさに溺れそうになりながらも、INIからパワーをもらって日々を生きている。
 これまで全く踏み入れたことのない界隈なので初めて知ることが多く、特に「ケミ」と「ヨントン」という文化には度肝を抜かれた。たまたま「りひろむ」という単語を目にして「えっっっこんな堂々と実在の人物同士をCP化して大丈夫なん!?!?鍵つけなくていいんか!?!?」と要らぬ心配をしたことが記憶に新しい。しかしつくづく不思議な文化だな、ケミ……
 推しと直接会話ができてしまうヨントンに関してもすごいイベントだなと思ったが、AKBとかアイドルの握手会と同じようなものかと考えるとなんとなく腑に落ちた。でもスタッフや次の順番の待ちのファンなどで周りを囲まれている状態での握手会と違って、画面越しでの会話となると全くの一対一という感じで緊張感やばそう。なお、二次元オタク歴が長いせいなのか私は絶対に推しの視界に入りたくないというかただ推しを眺めるだけの立場でありたいという考えのファンなので、自分ではヨントンはやらないと思う。そもそも当たらんと思うが。人のヨントンレポを見るのは大好きなので皆さんは存分に推しから情報を引き出してきてください……


 ちなみにこれまで2度の衝撃を受けて沼落ちに至った私だが、それらを優に超えて最も衝撃的だったものは、木村柾哉くんと許豊凡くんの韓国vlogである。
 車の中でフェンファンくんが柾哉くんの肩にもたれかかって「ゲームする?」「あっちむいてホイする?」と二人で話している冒頭の時点で、私の頭の中には無限の大宇宙が広がった。私は一体何を見せられているんだ……?

 それまで私の中の男性アイドルのイメージは、テレビでたまたま目にするジャ〇ーズの人たちの印象が強い、というかたぶんそれしかなかった。キラキラな歌を歌って、女性ファンに愛嬌を振りまき、バラエティで芸人並みに笑いを取る。ゴリゴリの芸能人のイメージだ。
 それからこれはジャ〇ーズと関係無いが、男の子同士の友達や仲間はあまりべたべたしない、どちらかというとさっぱりしたドライな関係が普通なんだと思っていた。

 しかし彼らはどうだ。冒頭からとにかく距離が近い。フェンファンくんは柾哉くんに向かって「柾哉ってかわいいよね~」「柾哉と来れてうれしい」とあまりにも真っすぐな愛を伝え、柾哉くんもそれをにっこにこで受け取り、最後はお互いを思ってプレゼント交換までしている。
 それから私が驚いたのは、二人があまりにも「素」であることだ。カメラがあっても良い意味でスイッチを切っているというか、ひたすらリラックスしている。それ故に、彼らの日常のワンシーンをこっそり覗き見させてもらっている気分になるのである。
 以上二つの要因により、二人の韓国vlogの第一印象は「付き合いたてのカップルのデートを覗き見して、本人達より恥ずかしくなっている俺たち」。恥ずかしくて両手で目を覆うが指の隙間からちらちら見てしまう、そんな気分である。成人男性が至近距離であっちむいてホイをする世界観、普通に考えたらすごくない? アタイこんなの初めて……
 しかし気が付くと私はこの映像を何度も何度も繰り返し視聴していた。初見では衝撃と気恥ずかしさが勝ってしまったが、愛と優しさに満ち溢れた癒し動画であることに気づいたからだ。普通の人がペットや赤ちゃんの動画を見て癒されているのと同じようにこのvlogを見ては優しさを取り戻した気分になっている。キムフェンvlog、いい薬です。


 特にオチとか無いのですみませんって感じなんですけど、柾哉くんやフェンファンくんに限らずINIメンバー全員愛があって優しくていい子ばっかりなので、ほんといつまでも健やかであってほしいというのが今一番思うことですね…
 これからどんどん世界に羽ばたいていってほしいし大きな舞台でぶちかましてくれ~と思うけど、どうかいつまでも礼儀正しく誠実で愛のある彼らのままであってほしい、にわかMINIは心からそう思います……


 ところで最近JO1の方も少しずつ勉強していて思ったんだけど、K-POPグループの事務所ってメンバーのことを幼児扱いするのが癖なんですか…?フリーマーケットのお金の代わりがビー玉ってなんなん…?メンバーもそれを素直に受け入れて「5ビー玉!」「10ビー玉で!」ってにこにこしているのを見て私の頭の中には再び大宇宙が広がったのである。
幼稚園児がお金の使い方勉強する時のやつじゃん、それ……
いや、かわいいのでもっとやってほしいですが……

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