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侍ジャパンが3大会ぶり3度目のWBC優勝。決勝前に語った大谷翔平選手の言葉

連日白熱した戦いを見せてくれたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)プロ野球を普段見ている人から、そうでない方まで多くの方が熱狂したのではないでしょうか?

3/21のメキシコ戦での劇的な勝利。そして決勝アメリカ戦は3-2で勝利。最後は大谷翔平選手が投手として登板し、トラウト選手から三振を奪い優勝に輝きました

スポーツの持つとてつもない力と可能性を感じた方も多いはず
私自身も伝え手の1人として、これからも多くの感動をしっかりとお伝えできるようにと刺激をもらいました

WBC関連では「ペッパーミル」「村上、伝説になれ」「泥だらけのストッパー」など様々な言葉や振る舞いが話題になりました

そんな中で個人的にも印象深かったのは、大谷翔平選手が試合前に語った円陣での言葉です。今回はその言葉を振り返りつつ、「なぜ、多くの人の心を揺さぶったのか?」について考察してみました

決勝・アメリカ戦の円陣声出し(2023年WBC)

大谷選手が語った内容を文字にすると以下のような内容です

「えー。僕からは1個だけ、憧れるのをやめましょう。ファーストにゴールドシュミットがいたりとか、センター見たら、マイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたりとか、まぁ野球をやっていれば誰しもがこう聞いたことがあるような選手たちがやっぱりいると思うんですけど。
今日1日だけは、やっぱ憧れてしまったらね。まぁ超えられないんで。
僕らは今日超えるために、やっぱりトップになるために来たんで。今日1日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけを考えていきましょう。さあいこう!」

2023年WBCアメリカ戦前に語った大谷翔平選手の言葉

約40秒の言葉です。この言葉に一緒に戦う選手たちは勇気づけられ、一気に士気が高まったようにも見えました

みなさんはこの大谷翔平選手の言葉を聞いて何を感じますか?
大谷選手が言うからこその説得力、カッコよさというのももちろんあります。だからこそ純粋な言葉、音声表現としてのこの40秒を見ていきましょう

何を意識してどう語ったか?

もう一度40秒で語った言葉を整理してみます

えー。僕からは1個だけ。憧れるのをやめましょう。

結論から伝えています。伝えたい事は1つだけ。そしてその大きな内容をは「憧れるのを辞めましょう」ということ。シンプルかつ、続き(理由)が気になる入りです

ファーストにゴールドシュミットがいたりとか、センター見たら、マイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたりとか、まぁ野球をやっていれば誰しもがこう聞いたことがあるような選手たちがやっぱりいると思うんですけど。

憧れの対象となる得る選手たちを、具体的に3名の名前(ゴールドシュミット、マイク・トラウト、ムーキー・ベッツ)を出して伝えています

大谷選手は「みんな知ってるよね」というスタンスではなく、聞いたことがあるという言葉で、そしてあくまでも「思う」という押し付けではなく自分の意見として伝えています
ここには自分自身は彼らに対してのリスペクトを普段は持っている。でも今日だけは違うぞという想いが伝わります

今日1日だけは、やっぱ憧れてしまったらね。まぁ超えられないんで。
僕らは今日超えるために、やっぱりトップになるために来たんで。今日1日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけを考えていきましょう。さあいこう!」

「今日1日だけは」というこれからの時間が特別であるということ
そして憧れてしまう事で起こる可能性のある弊害(ここでいうと越えられない=勝負に勝てない)

今日の目的(勝つ事)を意識づけて、1日だけという相手へのリスペクトも忘れずに勝利という目的を明確に伝えてチームメイトを鼓舞しているように感じました

強調した言葉は2つだけ

大谷翔平選手が語った言葉は、力強い言葉で聞き取りやすい音でした。話の中で強調した事は2点

・トップになるために
・勝つ事だけ

2つの言葉を発するときだけ音声的にも強さが違います。だからこそ聞き手も、目的が明確になります

憧れる事をやめて、勝つ事だけを考えて臨もうというメッセージを明確に伝え、最後「さぁいこう」という言葉に、より気持ちが乗るように感じました

なぜ、伝わるのか?

大谷翔平選手だからという事はもちろん大きいと思います
ただ、改めて聞いて感じる事は

①メッセージがシンプルであること
②話し方で自信が伝わる
③周囲の聞こうとする環境

この3つの要素も関係していたように思います

①のメッセージがシンプルであること。40秒という短い時間で、伝えたい事は1つ。憧れるのをやめて、勝つ事だけ考えていこうという点

決勝という舞台、色んな考えが頭をよぎっている選手もいるかもしれません。若い選手や経験豊富な選手。メジャーで活躍をしている大谷翔平選手もリスペクトの気持ちを持っている選手たちに対して、今日は勝つ事だけ考えて臨もうと分かりやすく伝えています

②大谷翔平選手の話し方ははっきりと力強い。テンポも良い。もちろん言葉の中では不要な言葉も数回出ていました(えー、あの、まぁ等)
といっても割合で言えば5%足らずです。それをあまり気にさせないくらい、はっきりと言い切り、伝えたい部分を強調して伝えています。緊張感のある大舞台を前に堂々と話す言葉には自信が伝わり、より信頼できる言葉になっていました

③大谷翔平選手が話し出す前は、場を盛り上げるような声がありました。そこから大谷翔平選手が話しはじめると全員が集中して聴き、最後は「さぁいこう」の言葉に呼応するようにリアクションが返ってきていました

聞き手の姿勢1つで話し手の話しやすさ、そして良い環境であればより伝わる話ができるという事を感じました

40秒でも人の心に火をつける事はできる


もちろん、誰が話すのか、その環境や状況が大きく影響する事は間違いありません。ただ、どれだけ凄い人でも40秒で心に火をつける事ができる人もいれば、そうじゃない人もいるという事です

それだけ「言葉」「話し方」には意味があります
その言葉が相手に伝わるかどうかはこれまで積み上げてきた経験だけではなく、その場で発する言葉をどのように紡いでいくかで伝わり方が変わります

職業柄プロスポーツ選手のインタビューをはじめ著名人の言葉を聴く機会が多くあります。どれだけ実績があっても振る舞いや伝え方で意図が伝わらない人もいます

一方で話し方や伝え方で、「この人は将来すごい人になる」と感じる瞬間があります。そうした多くの方は自分や他者のコミュニケーションを分析されています。自分の言葉や振る舞いがどのような影響を与えるのかを客観的に冷静に見れているからです

SNSが発展して、誰でも簡単に色んな思いや言葉を投げかける事ができるようになりました
実名や匿名などの差はあるかもしれませんが、「言葉」の持つ力やその意味を改めて考えさせられました

私自身も今回受けた刺激を、自分のサポートできる人たちにしっかりと還元していけるよう努力して日々を過ごしたいと思います



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