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202301(もの忘れ外来受診)

今月2度目の帰省。
お正月後
せん妄と見られる症状が起こり始めた
父(87)の通院に付き添うためである。

お正月久しぶりに
子と孫全員が実家に揃い
孫4人
春から一人暮らし新社会人
振袖前撮り写真持ってきた新・成人
目指せ県代表・部活の新キャプテン女子高生
サッカーがんばってる小学生ボーイ
それぞれ
名前もしっかり覚えていて
それぞれ励ましのひとことを添え
お年玉を渡していた父であるが

弟一家が去り
わたしが去り
母と父、2人の日常が戻ったとき

それはやってきた

向かいのマンションに夜毎に現れる
工事をするお兄さんたち
迷惑だから止めてほしい
言いに行く


寒い深夜に外に出ようとする父
急にそんなことを言い出して仰天する母

お父さんおかしくなってるの
向かいに工事の人がいる、ってきかないの
一緒に文句言いに行こう、って言うけど
そんな人いないから

めったに泣き言など言わない母が
半泣きになって電話をかけてきた

ついにきたな

父に電話を代わってもらい
工事の人がうちに入ってきそうか
何か爆弾でも仕掛けていそうか
怖くていやでたまらない感じか
たずねてみる

父はのんびりした口調で
いやこんな夜中(11時ごろ)に
あかんしあぶないし
誰の許可取ってるんか
聞きにいかな、と思って

別に怖いとか悪そうやないし
うちに来る訳でもないけど
勝手に工事されるの、いややんか

お母さんと一緒にいったらええかな、と
思ったんやけど
この人(母)には見えないらしいねん

「せやな
でも、うちに入ってくる訳でもないし
向こうのマンションの問題やし
明日になってからでもいいやん
お父さんが言いにいかなくても
大丈夫やで」

そのやりとりを2、3回して
なんとかもう今日は寝てもらうよう
ゆっくりゆっくり声をかける

母には
びっくりしたな
また言うだろうけど
怒鳴りつけたりしたらダメだよ、
と言葉をかけ
電話を切った

その日からほぼ毎日
夜中に家の向かいで工事されたり
家の中で勝手にご飯食べてる人がいたり
自分を無視して大きなおとこのひとが
家の中歩いていたり

いろんなことが父の目に起こっていた

こういうとき
聞き流したらええやん、と思う
娘のわたしであるが
一緒にいるものはそうもいかぬ

母も少し判断力が落ちつつあるので
まじめに取りあって激しくケンカして
しまったりしている

次の週には
かかりつけの
もの忘れ外来での受診が決まっていたので

電話では
「お父さんの言ってることは間違ってない
でも、お母さんには見えへんの
仕方ないねん
センセに話きいてもらおや
わたしも一緒についていくから」
となだめすかしてなんとか
この数日をやり過ごし

受診の日の朝を迎えたのであった

父のもの忘れ外来の先生は
話をゆっくりきいてくださる

父が通い出して3年
初めてお会いしたドクターは
超・ユマニチュード実践者であった

父があれやこれや
自分の見えている世界の話をする

入れ歯治療で訪れた歯科での出来事を話すのに
もどかしくて入れ歯を外したりもする
うまく話ができず時間もかかる
しかし制止することなく

わたしが説明を加えようとすると制止され
本人の話をまず、大切に聞こうとしてくださる

軽く父の肩を抱いたり、手や膝に触れたり
タイミングでしっかり目を見つめて
話してくださる

結果的に
行動を制限するような薬を出す段階ではないから

父にしか見えない世界とのつきあい方を
ご家族みんなでやってくしかないな、と
お話してくださった

お父さんが見えはるのは仕方ない

ここで他の人もよく言わはるんよ
家やら、いろんなとこに
他の人には見えへん人やものがいるねん

でも家族さんは分からんから
伝わらんことで
お父さんと同じように困ってはる、人
ようさん、いてはるからね

さいわいお父さんには
怖い人がきたり、殴ってきたり
変な虫が沸いたりしてないみたいやから

みんなで聞いてあげてな

奥さんね

わたしには見えへんけど、
お父さんは見えるんやね 

ってだけで良いねんよ
正しいとか間違ってる、じゃないねん
そうか、見えるんやな、って
言うてあげたらええねんで

父はなんだかはぐらかされたような顔で
診察室を出
すぐ
「帰りにお茶でも飲んで帰ろか」
と言い出したからご機嫌にはなったようで

3人で
帰り道にあるパン屋さんで
あんぱんとコーヒーをいただいて帰った

せやな、って聞いてあげること
気持ちが落ち着けば
何か見えてても
変な行動には急には結びつかない
(今のところ父の場合)

解決しようとしない

今日の学びであった。

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