100円玉が母国にたどりつくまで
作業を小分けにする …ということが、なにげに得意です。
先日、高校生の娘が「勉強ができひーーーーん」とソファーにひっくり返って暴れていたので、どれどれと見てみると、どうも「できひーーーーん」の中身は、
「計画が立てられない。」が原因。
もっとかみ砕くと、与えられた多くの課題を頭の中だけに全部かかえ、どこから手をつけていいのかわからない。
頭の中には、山積した課題がごっちゃりとひとまとめにぶちこまれていて、刻一刻と深まるプレッシャーに潰される思いで、ただただ時間をすごしていた、ということのようです。
なので、とりあえず使いさしのノートを広げ、8ページを確保。
1.最初のページに、頭の中にあるすべての課題を順不同で書き出し、
2.残りの7ページを1日1ページとして曜日をふる。
3.曜日ページの上のほうに、その日のイベントを書きだし(テストとか、締め切りとか、パーティーとか)
4.最初のリストから、優先順位をつけて課題を曜日ごとにふりわけていく…
われらがBullet Journal ですね☆
お部屋にちらかった物があるべき場所に返っていくような、妙に達成感のある、好きな作業です。
という流れを一緒につくっているうちに、「わ、ぜんぜん大丈夫やん!」と娘の顔が明るくなっていき、今日の課題が3つしかないとわかった時点で、じゃあまだまだ大丈夫だね~、と外に飛び出していきました。
やれやれ…。
時間の見積もりの甘いところも相変わらずだけど、まあ彼女の人生だし、楽しそうだし、いいね。
けっこう体力のある、もともと弱音を吐かない子なので、中学までは受け取った課題は受け取っただけぜんぶ力業でこなしていたようだけれど(しかも反抗期で親の言うことはスルー)、高校生になってついにお手上げ状態になった模様。
体力のある人って意外と大変だな。
私みたいな弱小種族は生き延びるためにいろいろ工夫をしています、はい。
で、「作業を小分け」が得意というか、ほぼそれしかできない、という話に戻ると、
私の場合。
たとえば掃除をしていて、居間のソファーの下で100円硬貨を見つけたとする。
掃除機を止め、ソファーをちょっとずらし、身をかがめて100円硬貨を手にとる。
あたりまえの動きだけど、これでも実はけっこうな労力だよ、とちゃんと自分で認識する。
だから、硬貨を拾い上げて、手に乗せた時点で、それができた自分をかるくほめてます。無意識です。
そして思考を巡らせます。
この100円硬貨は、どこに戻るべきだったっけ?
そうだ、今度、日本に帰国した時にもっていく書類箱の、出国時に余った日本円を入れておく封筒の中だった。
ずいぶん遠い道のり…。
そもそも、その箱自体が、けっこう高い位置にある棚にあるので、椅子を持ってきておろさなきゃいけないじゃないか。
とんだ大仕事だ!
で、ざっと工程表。
① 拾った百円を、どこか目立つところに置く。
② 100円を居間から部屋まで持っていく。
③ 棚から箱を下ろす。
④ 箱から封筒をとりだす。
⑤ 封筒の中に100円をしまう。
⑥ 封筒を箱にしまい、箱を棚にしまい、棚の扉を閉じる
(ここはさすがに一工程)
6工程もあるじゃないか!
ということで、これに立ち向かおうとしている自分をまたほめます。
それでもって、掃除のあとの自分の予定にざっと思いを巡らせます。
キッチンの片づけ、夕食の仕込み、翻訳3ページ、授業が4つ、ミーティングひとつ。ウォーキングもしないときっと死ぬし、電話を返すのを忘れていた友人もいた…。その合間を、自分のしたいこと(読書、作文、日本語の勉強)などを入れていく…、毎日のことながら強硬軍。
なので、100円硬貨を元の場所にしまうというイレギュラー行為を一気にやってしまうと、想定外の神経と労力が奪われ、あとの仕事にきっと影響が出るはず(危機管理はいつも大袈裟に)。
優先順位としても別に急ぎの仕事ではないので、まず今日は、①か②ぐらいで満足するか、と段取りをたてます。
というわけで、3日ほど前に見つけた100円硬貨は、いま居間から部屋につづく廊下の小物づくえの上でキラキラしています。
工程的に見ると、①で止まったまま2日も遅れているのですが、それは実は、この100円硬貨(この、特定の子)が、誰かから誰かの手に渡って、あげくにここ地中海沿岸までやってきた旅路に思いをはせているうちに、なんだか縁を感じてしまって、とても可愛くなり、このままずっと眺めたいような気持ちになってしまったからです。
でも執着は苦しみの元(と聖人が言っている)。
金は天下の回りもの(と日本人も言っている)。
いづれ時期が来たら、ちゃんと封筒に入れて、日本にもって帰って、お金のとしての人生を歩み続けてもらおう。
というわけで、ちょっとのあいだ、キラキラした友達がいるのです。
可愛いな。
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