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【詩集】たゆたう

君の闇が求めるのは
照らしてくれる光か
それとも
隣にいる影か

ー ココア ー

大丈夫 大丈夫だよ
温かいココアを飲んで
やさしい音楽を聞こう
その間に私がそっちに行くから

大丈夫
まずは一呼吸してみよう


ー 君だから ー

ヒーローだけが
世界を救うんじゃない
ヒーローじゃないからこそ
見えるものがある気づけるものがある
君だからこそできることがある


ー おかえりなさい ー

あなたがどんなに遠くに行っても
ずっとずっと残っている

「おかえりなさい」
ここはいつもあなたの場所だよ

ここは悲しい涙を落とせる場所
遠慮せず愚痴も言っていいから
だから 優しい言葉と嬉し涙はあの子にあげて

帰りたくなった時に帰ればいい
忘れたかったら忘れてもいい
それでも ここはずっと残っている

「おかえりなさい」
ここはあなたの帰れる場所


ー 傷 ー

あなたは気付かない
私を傷つけたその言葉に

私は気付かない
あなたを傷つけたあの言葉に

そうやって世の中は回り
人は生きてゆく


ー 樹 ー

動けぬ彼の思いを託して
高く 高く 空の上まで飛んでいく
火の鳥のような鮮やかに色づいた落葉が
高く 高く 飛んでいく


ー 涙 ー

泣く子 涙が落ちる一つ二つ
誰も泣く子を振り返らない
泣き声が響く小さな路地

泣く子 泣く 泣く
あなたが来るまで


ー 歯車 

赤い歯車は回る
自分も何かの一部だと思いながら
赤い歯車は回る
止まってしまえばもう動けない

自分の居場所を探して
あちらへ行って こちらを削って
こちらへ行って あちらを盛って
それでも誰とも上手にかみ合わない

地面に転がることができるなら幸せだろう
錆びをつけて眠っただろう
でも 赤い歯車は 回り続けることを望んだから

赤い歯車は回る
自分も何かの一部だと思いながら
赤い歯車は回る
いつか何かの一部になれると思いながら

機械の外側で
たった1つ回り続ける


ー ママ ー

可哀想な子猫
私が全部愛してあげる
可哀想な子犬
私が全部愛してあげる

可哀想 可哀想
あなたも あなたも可哀想
私がママになって
みんな愛してあげる

大きなお城の中
拾ってきたものを詰め込んで
ママは今日も出かけていく

可哀想な子を探しに
可哀想な子を置いて


ー ぽたり ぽたり ー

地球がぐるうと回るたび
どこかで涙がぽたりとおちる
地球がぐるうと回るたび
ぽたり ぽたりと雨が降る

でも 知っているのは私の涙だけ
大雨なんて海の向こうの話

地球がぐるうと回るたび
私から大きな涙がぽたりとおちる
地球を沈める大きな涙が
ぽたりとおちる


ー ずれていく ー

私が世界を拒んだ日
呼吸が 鼓動がずれていく

見ているものも嘘になって
触れる体温も嘘になって
あなたの優しさも嘘になって
私は一人
白の中に沈んでいく

世界が私を抱きかかえ
人の気も知らずまわる時
あなたのことを思い出すこともなく
私はそっと目をとじる


ー それでも私は ー

息は苦しくて
吸うことができなくて
膿んだ傷はまだ痛んで
夜に暗い部屋で
酷い頭痛で眠れず
それでも眠ろうとする私は
明日を望んで 私は
こんなに苦しいくらい私は
私は 生きている
この苦しみを痛みも
全部だきしめて
私は今生きている


ー 睡眠 ー

誰も届かないところへ
私は沈む
私も届かないところまで
私は沈む

もういいの もういいの
みんなみんな さようなら
ずっとずっと下のほう
どうしようもないほど下の方まで

さようなら
私は沈んでいく


ー おねがい ー

ねえ ママ
どんなところだって
ママが手を繋いでくれたら平気よ
怖いオバケだって
ママが隣にいてくれたら平気よ

だから おねがい
そんなこと言わないで


ー ひとりの夜 ー

あなたの言う「みんな」に
私は入っているのかしら
あなたの言う「君」に
私はいつなれるのかしら

そんな 途方もないことを考える
静かでとても長い夜


ー 私の真ん中に ー

あなたがここにいてくれれば
私は自由になれる
悲しい風も吹かなくなって
一面に漂う影も消えてしまう

あなたが私の真ん中にいてくれれば
全部払いのけてくれて
こうやって 夜に一人
膝を抱えることもないんだけど

あなたはここに来ないから
雨が降って 溢れ出して
私は凍ってしまうよ


ー 恋情 ー

あなたの全てを私は欲しい
あなたの視線も 声も 手も
全部 全部 私のもの
やさしいも いじわるも
全部 全部 ひとりじめ

こんな子供みたいなわがままに
あなたは少し眉をよせ
私の髪に触れるけど
その姿も私は欲しい

馬鹿みたいに
あなたの全てが愛しいの


ー 愛の言葉 ー

違う 違うよ
私の言いたいことはそんなことじゃない
もっと確かで尊いもの
簡単に揺らぐものじゃない
壊れるものじゃない

なんて言えばいいんだろう
「愛してる」だけじゃ足りないよ

離れ離れだって
灰になったって変わらない
こんなにもあなたを想う気持ちを
どう伝えればいいの


ー そばにいたいから ー

そばにいたいから
あなたを信じることをやめた
願うことをやめた

帰ってこない理由も
何かを隠す言葉の裏も
私の知らないその顔も
気にすることをやめた

そばにいたいから
あれもこれも諦めて

ただ そばにいたいから
あなたを好きでいることをやめた


ー さようなら ー

いつか報われるなんて
これっぽっちも思っていない

この想いは 今だけの
次の瞬間には
解けて流れて消えてしまうものなのだから
ただただ あふれ出てくるものを
涙と一緒に 弔おう

誰かの恵みの雨になるように
地球にそっと返そう


ー やさしさ ー

やさしいあなただから
やさしさをもらえたの
それは全部
あなたのものよ


ー 美しい姿 ー

涙があふれ夜も眠れず
恐怖に震えながらも
明日に立ち向かう
君の姿が
僕には
とても美しく見えた

絶望しかない明日に向かっていく
君のその姿が
僕には
とても美しく見えた


ー つよく つよく ー

強くある、とは何なのか
胸に手をおき 考える
私は強くあれるのか
痛みに手をおき 問いただす

答えなんてどこにもない
正解なんて誰も知らない
私だけの強さをみつけるまで

痛いまま苦しいまま
私は共に生きていく


ー 涙の潤い ー

このからっぽな心を
涙で満たしてあげよう
干からびたひび割れに
そっと 1粒ずつ涙を落そう

そしたら きっと
芽が出て花が咲いて
優しい匂いで満たされるから

いっぱい いっぱい
泣いてあげよう


ー いつか かならず ー

悲しみの涙が
めぐり めぐって
幸せの雨が降る

あの子も あの子も
まきこんで
幸せの雨が降る


ー 散歩 ー

散歩の途中で分かれ道
どちらに行こうか しばし悩む
そういえば さっきも分かれ道あったっけ
何も考えずこっちきたっけ

今までたくさんの分かれ道があった
時には直感で選び
時には人の言う通りにし
時には逆の方向に行き
思い出せば そうやってここまで来たっけ

あっという間だったな
気づいたらここにいるんだもんな
嫌な道も通ったな

さてさて どちらに行こう
2択なんて簡単なものなのだけど
ちょっとくらい悩んでもいいか
迷子になってもいいか
とにかく進むのみだ

さあ ぐるっと回って家に帰ろう
帰ってカレーでも食べよう
旅なんて大袈裟なものじゃない
これはちょっとした散歩だよ


作成日 2013年9月1日
最終更新日 2017年9月10日

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