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【詩集】木漏れ日

木漏れ日が落ちるのは、暗い森


ー 満月 ー

目があったんだ
大きな 大きな満月と

俯いて歩くことに慣れていた
猫背はもっと丸くなり
小さく 小さく縮こまった僕の
一人ぼっちの帰り道

それは あまりに突然に
呼ばれたのだろうか
求めていたのだろうか

目があったんだ

星がない空に浮かぶ
大きな 大きな満月と


ー 不器用さん ー

不器用が
不器用ながらも
不器用なりに
生きています

壊しながら
くじけながら

不器用に
生きています


ー ずれていく ー

私が世界を拒んだ日
呼吸が 鼓動がずれていく

見えるものが嘘になって
触れる体温が嘘になって
あなたの優しさが嘘になって

たった一人 白の中に沈んでいく

世界が私を飲み込んで
人の気も知らずまわる時

あなたのことを 思い出すことなく
たった一人
白の中で目をとじる

白の中へ消えていく


ー 孤独 ー

どんなに悲しくて
粉々にしたい 今日だって
隣であなたは笑っている

今にも崩れそうな私の隣で
あなたは楽しそうに 笑っている

こんなにも私の中心に私が居座って
世界を染めていることを
あなたは知らず
無邪気な顔で笑っている

ねえ、そうよ
あなたも
世界も
より陰影を際立たせるだけで
少しも振り向きやしない

私が果て 崩れる横で
あなたは ただ笑っている


ー 閉じて開いて ー

扉を閉じて
窓を閉じて
カーテンを閉じて
目を閉じて

ひたすら耐える 僕の丸い背に
君がポンと手を置いた

熱い手の温度
遠くから吹き込む風
眩しい光
君の声

あっけないほど簡単に
君は僕を連れ去った


ー知ってるよー

君は いつも 自信がないと言うけれど
逃げたりなんかしなかった

もう無理だと言うけれど
諦めたりなんかしなかった

ねえ 気づいて
君はダメな子なんかじゃない

こんなにもがんばっているじゃないか


ー夕焼けー

絶望に襲われた日も
安堵がいた日も
いつだって

帰り道には夕焼けが待っていて

どんな日も 変わらずに
真っ赤な温度を身にまとい
涙も笑顔も受け止めて
真っ赤に僕を包み込み

「おかえりなさい」 と声がする


ーせかいー

私は君を拒絶しない
私は君を否定しない

君が受け入れるまま
私は君を受け入れる

私は君に干渉しない
私は君に追及しない
君が許すその距離まで
私は行くだけ

怖がらないで
恐れないで
いつでも逃げていい
簡単に嫌いになったりしないから

君は君のまま
生きて


ーおやすみー

おやすみ
おやすみ
感情を全て抱きしめて

おやすみ
おやすみ
夢は君を責めやしない

おやすみ
おやすみ
今度目覚めるその日まで

おやすみ
おやすみ
よい夢を


作成日 2015年11月23日

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