短編小説 「5%の女」
10余年住んだ部屋を解約した。
ついさっき運送屋が荷物を運び出したところで、いま不動産屋の女がふたり、部屋の状態を確かめに来ている。
女のうち、ひとりは30代後半ぐらいの痩せ型で、もうひとりは学生みたいに若く見えるぽっちゃりだ。
部屋に入って間もなく、痩せ型のほうが揶揄うような調子で言った。
「壁がだいぶイっちゃってますねぇ。お煙草吸われるんですか?」
「ああ、吸うよ。お煙草」と俺は答えた。
痩せ型はなにも返して来なかった。
ぽっちゃりは突っ立ったまま、じっと空気を見つめ