味噌・散歩・坊主
味噌を使い切るたびに新しいものを試している。
最近のヒットは最寄のご当地スーパーのオリジナルブランドのもの。
九州っぽい甘い出汁と白味噌が美味しい。
これに限っては2回リピートして、毎晩食卓に地味な彩りを添えてくれていたが遂にまた底をついたので新しい味噌を買いに行く。
その日は最寄りのスーパーではなく、別のスーパーに入った。
あまり立ち寄らないスーパーはラインナップが目新しくて楽しい。
新しい味噌を試して開拓している割には、基本的にこだわりがなく、安くて出汁が入っているものを探す。
ありとあらゆる味噌が並んでいる中で、高級感漂う金色のラベルを見に纏った立方体のプラスチックのトレーが目に入る。
名前が京懐石。
かっこいい。高そう。そんなに高くない!
最安値とまではいかないが、周りに並んでいる味噌みそと20円ほどしか変わらなかった。すぐにカゴの中へ。
早速、京懐石で味噌汁を拵える。
いただきますして、どれどれと味噌汁啜ってみると、これはう、うまい!
料亭の味。具材を火にかけて適当に味噌を入れただけなのに、鰹節と昆布などから丁寧に出汁を取って、丁寧に味噌を漉したような味だ。
自分の手で作ったものから懐石料理の味がしたのでなんだか不思議だった。
京懐石、おすすめです。
久々に散歩に出た。
去年の夏は実家の周りを毎日のように散歩していたが、今年は暑すぎて家でクーラーに当たるばかりしている。
実家は山の上で、今住んでいる町よりも若干田舎で、そのためちょっとだけ涼しいようだ。
散歩に出て約5分、既に後悔。暑すぎる。
夕方で後ろからの西陽が強く、日傘で守り切れないふくらはぎがジリジリと太陽に焼かれているのを感じた。ふくらはぎは日焼け止め塗ってないな〜と思いながらも、今日は散歩をすると覚悟していたためもう引き返せまいとずんずん歩く。
対向を歩いて行く夏休み明けの学生も日傘をさしている。
散歩中は本当に苦行であった。
汗の粒が額に生まれているのを感じる。クーラーに慣れ切った肌が驚愕している。
少しだけクラクラしてきてコンビニに逃げ込んでアイスコーヒーを買った。
そこから20分くらいなんとか歩いて散歩を終える。
家に帰った頃には氷も全て溶け、常温コーヒーに変わっていた。
貸オフィスの受付のバイトをしている。
コワーキングスペースもあり、さまざまなビジネスマンが利用している。
でっかいキャリーを持った坊主にポロシャツの男性が、お会計後に2、3分だけ奥の会議室を使わせてくれないかと言う。着替えたいのだそうだ。
会議室の予約もなかったし、誰も通らないし外から見えないしで着替えにちょうどいいしで、どうぞどうぞ!とダチョウ倶楽部のようにジェスチャーした。
本当に2分くらいで出てきた。
ビジネスマンだからきっとスーツに着替えてこれから出張なんだろうな、とか思っていたけど違った。
ポロシャツの男性は袈裟を身に纏っていた。
どおりで、綺麗な坊主だ。
9月に入ると朝晩涼しくなってきて、ぼくの夏休み実況プレイを最後まで見終わり、あれほどうるさかった蝉が鳴き止み、なんだか夏の終わりをしみじみと感じている。
バイト帰り、駐車場まで歩くだけでも汗をかいていたのがなくなり、やはり夏は終わりを迎えているのだと、うんうんと思った。
運転しながら左腕の肘の付け根辺りが痒いことに気がつく。そっと触ってみるとぷくりと腫れており、蚊に刺されたようだ。
夏は全然終わっていなかった。
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