見出し画像

「紫煙」

わたしは煙草が嫌いだ

あの臭いが嫌だ
髪や服に臭いが付くと
洗うまで延々と漂う
あの臭いが大嫌いだ

壁や家具や家電にへばり付き
いつまでも空間に居座る
あの臭い

濡れた布で掃除をすると
汚れと一緒に
あの臭いまで
浮き上がってきて
うんざりする

でも

煙を見るのは好き

火口(ホクチ)がゆっくりと
煙草の葉と紙を
灰に変えながら
ゆらめく煙を
生み出す様は
不可思議で美しい

立ち昇る煙が
室内の気流に乗って
うねるように
流れる様も興味深い

薄く紫がかった煙が
拡がり
消え行く先を
見続けてしまう

いつまでも

わたしに向かってさえ
来なければ

煙草の匂いは
あの人を思い出す

だからやっぱり
煙草は嫌いだ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?