見出し画像

恋ジャズ #11「冬の星~Softly as in a Morning Sunrise~」

寒い夜が好きだ、と彼女は言った。

「星がね、キレイに見えるから」

今さらそんな昔の話を思い出したのは、
ふと見上げた空に、
キレイな星が瞬いていたからかもしれない。

都会の空には星がない、と思っていた。
けれどそれは、空を見上げたことがなかったからだ。
それを教えてくれたのは、彼女だった。

「小さいけれど、ちゃんと星はいるのよ」

冷たく暗い空を指す、彼女の指先を目で追えば、
たしかに星は光っていた。

「ほら、ね」

ささやかだけど、しっかりと。美しく。
その夜から時々、空を見上げるようになった。

だから今夜も、空を見上げた。
そこに、小さな輝きを見つける。
ひっそりと控えめに光るその星を。

「彼女の星、かもしれないな」

今はもう隣にいない彼女が、
小さく控えめに微笑んでいるようだった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?