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子どもの発音の誤り:「キ」「ケ」が苦手なのは口腔機能発達不全症かも?③

前回は口腔機能発達不全症のトレーニング・MFTについてお話してきました。今回は「なぜ口腔機能発達不全症が発音に関係しているのか」「放置したらどうなるのか」ということについて、私の考察を述べていきたいと思います。これはあくまで観察所見で、医学的なエビデンスはまだまだ不十分なところです。

「キ」「ケ」の母音に注目してみよう

口腔機能発達不全症のお子さんは「キ」「ケ」がそれぞれ「チ」「チェ」に変わりやすい傾向にありますが、この症状は口腔機能発達不全症ではなく、ただ単にカ行の習得がゆっくりなお子さんでも起こり得ます。カ行を習得していく過程で最後まで残りやすいのが「キ」「ケ」の音なのです。

なぜこの2つの音が習得に時間がかかるのか。それは母音の出し方を見ていけばわかります。「キ」「ケ」のそれぞれの母音は「イ」と「エ」です。

「イ」は高母音といって、発音するとき、舌が口の天井に近い位置まであがります。「エ」は中高母音といって、「イ」よりは少し下ですが、「ア」よりは高い位置に舌がきます。

この「舌が高い位置にくる」とき、舌先はどこにも当たらずに発音するのが普通なのですが、口腔機能発達不全症のお子さんは舌の緊張が低く不器用なため、舌先を上の歯の後ろあたりについつい当ててしまいがちです。舌が当たってしまうと、綺麗な「キ」「ケ」にならず、「チ」「チェ」に変わってしまいます。これは口腔機能発達不全症がなくとも、舌の使い方が不器用なお子さんで同じ現象が起こります。(*カ行の発音時、奥舌が軟口蓋というところに当たりますが、舌先はどこにも当たりません)

口腔機能発達不全症、放置したらどうなる?

舌が低緊張で不器用なまま、発音の獲得時期を迎えてしまった子どもたちは、動かしづらい舌を使ってなんとか発音を獲得しようと努力します。その結果、誤った発音を身につけてしまうことがあります。それが促音化構音です。側音化構音とは、発音するときに通常は口の真ん中に空気や音の通り道ができるところを、真ん中でなく両側に通り道ができてしまう現象です。一般的には「滑舌が悪い人」という印象で見られます。

私のオンライン相談室では大人の促音化構音の方の指導を承っているのですが、子どもの頃の話を聞くと、お口がぽかんと開いていたという方が半数近くいます。促音化構音が一度身についてしまうと自己修正は難しく、成人になって「電話でよく聞き返されてしまう」「人の名前を呼んでも聞き取ってもらえない」などとお悩みを抱えるようになります。側音化構音=口腔機能発達不全症というわけではありませんが、口腔機能発達不全症から側音化構音を発症する例は一定数いるのでは、というのが私の見解です。

側音化構音になる前にトレーニングを

発音で発見されやすい口腔機能発達不全症の対策がどれだけ大切か、おわかりいただけたのではないかと思います。ご自宅トレーニングで改善できるこの問題、年少・年中の早いうちに取り入れることをお勧めします。

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