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誰かが作ったご飯を食べたくなる話

外食が苦手だ。


食へのこだわりがゼロであるゆえに、何を選ぶべきかわからなくなるからだ。と思っていたが、むしろ逆かもしれないと最近気づいた。

何でもおいしくいただく人間ではあるのだが、おそらく本当に好きなものはかなり少ない。値段やら混み具合やらあれこれ考えた結果、「もう自分で作った方が楽だ」になってしまうことが多い気がする。コンビニでピンとくるものが見つからなかった結果、鮭おにぎりオンリーでお店を出てしまったことが何度あることか。

そんなわけで、普段の食事はほぼ自炊である。料理自体好きなので全く追って不満はない。


そんな私が、最近はたまに外食をするようになった。

去年の 10 月あたりだろうか。遠出してちょっと疲れた日の帰り道、突然、私の中の何者か(以後「奴」と呼ぶ)が「誰かが作ってくれたご飯が食べたい!」と叫んだ。

そろそろ帰ってご飯作ろうかなと考えていた私の脳は、不測の事態に面食らった。目についたお店に入り、からあげ定食を頼む。

からあげ定食が来た。おいしい。
どうやらお気に召したらしく、奴はいなくなっていた。


それ以来、「人が作ったご飯食べたい欲」は定期的に湧き起こるようになった。特に午前中にお出かけをしている日の帰り、奴は現れる。奴に付き合っているうちに、だんだんと攻略法がわかってきた。

その一、自分が好きそうなものがあるお店に入ること。和食系か、とにかく優しそうなものを選んでおけば失敗はない。店先にメニューを掲示してくれるお店に助けられている。あと定食最高。

その二、事前に調べないこと。調べてもきっと決められないし、そうしているうちに奴が拗ねてしまう気がするからである。それに、調べたところで口コミ評価の高い良さげなお店は大抵並んでいる。

その三、すぐ入れそうなお店に入ること。奴が拗ねるから、というよりはシンプルに行列が苦手である。あとは「行列の有無は世間に見つかっているかいないかの違いで、きっと味はどこもおいしい」という幸せな考えも根底にあるかもしれない。

今のところ、この三原則に従って失敗したことはない。なんでもおいしい人間だからというのもあるかもしれないが、むしろかなり良いのお店に出会っている。もう少し経てば穴場ランチに詳しい人になれるんじゃないかと思うくらいに。


なぜ急に奴に振り回されるようになったかはわからない。お金もかかってしまうので今以上の頻度では現れないでほしいし、できればランチ限定であってほしいなとも思う。

一方で、結果的に良い体験をさせてもらっているので感謝していないと言えば嘘になる。もう少しで友達になれるかもしれない。外食アレルギーを克服できる日も近いだろうか。

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