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フォローのお願いの文化を拡げたい

みなさん、こんにちは!
岩尾です。

今日は、聞こえのフォローのお願いの重要性についてお話ししたいと思います。

最近、点が線になってきたことがあるんです。

ある、難聴の大学生の子に話を聞かせてもらう機会がありました。
その子は、「情報保障というものを大学に入って初めて知った」と言っていました。

情報保障という言葉も知らなかったし、フォローのお願いをしてもいいんだということも知らなかったとのこと。

ただし、中学の頃などは、「前の席にしてください」とは言っていたようです。
ただし、これは、自分は聞こえないから言わなきゃいけない。本当はいつも前なんて嫌なのに、言わなければいけないと思ってたから、嫌だったけど言っていたとのことです。

大学に入ったら、大学側から、「どんな情報保障が必要?」などと聞かれ始めて、「ああ、そういうことをしてくれるんだ」とわかってきたと言います。

この大学、極めて親切ですね。
なかなかこういう大学も少ないと思いますが、増えてくれるといいですね。

この子は、たまたま大学でそういうことがあったので情報保障ということを知って、フォローをお願いしてもいいんだということがわかってきたわけです。

おそらく、仕事を始めても、情報保障ということを知らないままの人もいるだろうと思います。
言葉だけは知っていても、あまり言わない方がいいだろうと考える方も実際います。

そして、先日、大学とコラボしまして、前半、僕の講演、後半、ろうの大学生の子とのトークセッションをしました。
その時、難聴の方も多く参加してくれました。

僕の講演は、聞こえる人に、聞こえないということはどういうことなのかということを知ってもらい、こうやってもらえると助かりますということを伝える内容で、難聴の方にとっては当たり前のことで、聞く必要のないことで、後半のトークセッションがあるとはいえ、当たり前のことを聞いてもらうのも申し訳ないなと思っていました。

ところが、感想や、一緒に参加していた人から話を聞くと、難聴の方が、「そんな伝え方があるのか」や、「そういう力が自分には確かにあるかもしれないと思った」など、多くの気づきがあったようなのです。

これにはびっくりしたんですけど、聞こえない人たちは、先天性、もしくはそれに近い場合、聞こえる世界を知らないわけです。
なので、そこを聞いたことがない、教えてもらったことがないと、当然わからないので、伝え方も新鮮に聞こえたんだろうと思うのです。

難聴の高校生向けのキャリア学習講座をしたとき、自分の聞こえをどう相手に伝えるかを一緒に考えました。

この時、実に興味深いことがわかりました。

自分の聴力を、音の例えで説明する方法を一緒に考えました。
そこで、聴力ごとに音の例えを書いた表があって、それを見て、自分の聴力は、例えば、「車のクラクションの音が鳴って、何か音がしたってわかるぐらいです」などと伝える伝え方を考えていったんですけど、

「私は、補聴器を外して車のクラクションの音を聞いたことがないので、聞こえるかどうかわからない」
と言われました。

なるほど。
そうですよね。
聞こえたことがないので、本当にそれが聞こえるのか?
気になりますよね。

これは、聞こえる人に、イメージを持ってもらうための伝え方なので、聞こえるかわからないけど、一般的に表現されている音で相手にわかってもらうための言い方なので、実際に聞こえるかどうかは確認しなくてもいいんだよ。110dBとか、50dBとか言う代わりに、車のクラクションの音などと言う言い方をするんだよということを伝えました。

これらのことからわかることは、
聞こえるとは、どのぐらい聞こえるのか?とか、
どんなフォローがあれば自分はわかりやすいのか?とか、
聞こえないがゆえに、どんな特性があるのか
とかは、やはり聞こえる世界を知らないとわからないということです。

でも、聞こえる世界を体験することはできない。

だから、そこは聞こえる人が伝える必要がある。

逆も然り。

だから、聞こえる人と聞こえない人が一緒に考えて、どうすれば自分はコミュニケーションを取りやすいのかを把握して、それを周りに伝えていけば、もっと情報もわかりやすくなるし、もっと会話もしやすくなるはずなんです。

そこをやれてないと、情報の把握もコミュニケーションも難しくなる。
難しいだけじゃなく、どうしたらわかりやすいのかが自分でもわからなければ、相手にお願いもできない。

当然、周りもほとんどがどうすればいいかわからないので、コミュニケーションがとりにくいままになってしまう。

大人になって、大学で、仕事の場で困っている人の声をよく聞きます。
もちろん、自分が欲しいフォローをわかっていてお願いするけどやってもらえなくて困っている人もいますが、そもそもどうお願いしたらいいかわからなかったり、有効なお願いの仕方がわからなかったりして困っている人もいます。

ここまで見えてきたとき、「なるほど。そういうことか」と僕は思いました。

地域の小学校や中学校に行った難聴の子たちの中には、「特別な配慮は必要ありません」と家族から意向を伝えられるケースが結構あります。

そうなると、フォローのお願いをしたことがないわけなので、当然フォローのお願いができません。
それ以前に、どんなフォローがあればわかりやすいかもわからない。
もし、こうした方がいいのにと思っても、フォローのお願いをしていない、特別な配慮は必要ないと家族が言っているとしたら、自分から言うこともないかもしれない。

こういうことから、大人になって困るケースが多く発生しているんじゃないか?
もちろん、全てこうなわけではないですけど、こういうケースが結構多いような気がします。

だからこそ、まずは、

「フォローのお願いをする」

これをごくごく自然で当たり前のことにしていければという思いがあります。

なかなかフォローのお願いをするのも気が引けるという人は多いでしょう。
でも、正当で自然で必要なことだという認識が広がれば、もっとできるようになるなずだと思うんです。

それは、ひいては、子どものためです。
子どもの今もそうですし、大きくなってからも、本人の助けになります。

そして、お互いにとってもいいことです。
コミュニケーションが取りやすくなるわけですから、お互いにとっていいことなんです。

あ、何も上から目線で強く言うことではもちろんありません!
普通に自然にお願いする。
できなければ、できるところまでをやれるように話し合う。
やってもらったら、感謝する。

お互いが過ごしやすい、お互いが楽しめるように、そういうフォローのお願いの文化を拡げていきたいなと思います。

文化となると、壮大な話にはなりますが、基礎ぐらいは作りたいですね。
ぜひ、一緒にやっていける方は、フォローのお願い同盟作りましょう(笑)!



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