授業を抜けてまで通級教室に行く意味はあるのか?
皆さん、こんにちは!
岩尾です。
表題のテーマですが、僕は難聴のことしかわからないので、「難聴」に関してのみのお話となります。
そして、この通級教室というものも地域ごとに違いはあると思いますので、福岡市のことをベースにお話することをご了承ください。
まず、通級教室は、「療育」をする場で、学校の勉強は原則教えないと福岡市ではなっています。
もちろん、勉強の質問をすれば答えてはくれるでしょうけど、通級の時間はあくまで療育的なことをする時間に充てられるということのようです。
そして、拠点校方式と、巡回方式があるようです。
福岡市は拠点校方式で、市内に3校通級教室があって、そこに他の学校から通うことになります。
たまたま自分の学校に通級があれば、教室を移動するだけで済みますが、多くは親が送り迎えします。
通級は90分。
つまり2時限分ですが、校外からの移動だと3時限分は必要です。
巡回方式は、通級担当の先生がいて、各学校に巡回するようです。
さて、地域の小学校を選んだ家族は、学校に何を求めるでしょうか?
もちろんいろいろありますが、
まずは、「授業での情報をしっかり把握できるように」
授業以外でも、「友達との会話も楽しめるように」と願っているのではないでしょうか?
つまり、聞き洩らしがなるべく減るような配慮をお願いするはずですし、なるべく情報把握ができることを願っているはずだと思います。
ところが、通級教室を利用すると、これが授業中にあるわけです。
ですので、最低2時限分、多いときは3時限分の授業が毎週抜けてしまうわけです。
毎週です。
放課後の時間を選ぶこともできますが、全員選べるわけではないですし、移動する場合は、6時間目の途中から移動する必要が出てきます。
一番フォローしたい勉強の時間が、大きく抜けてしまうことになるんです。
小学校に上がって難聴児が困ったことを見ていくと、「学校の勉強がわからない」、「成績が上がらなかった」ということが多くあります。
難聴の小学生をよく見ている言語聴覚士さんに話を聞くと、国語や算数で基本的なことがわかってなくて、小3,4ぐらいになってつまずくことも多いようで、そうなってから働きかけても、かなり時間がかかったり回復するのが難しいケースもあると言います。
通級教室は、国語や算数の時間となるべくかぶらないようにはしてくれるようですが、もう一つの問題が、通級教室を選んだ場合、学校では通常クラスのみしか利用できないということです。
少人数で行う難聴学級は選べないんです。
ということは、肝心要の国語、算数が、大人数で、聞こえる子のペースに合わせてやらなければいけなくなるわけです。
ロジャーなどのワイヤレスマイクがあれば使ってくれますが、これは万能ではありません。
そして、小1、2ぐらいの国語、算数は、大人からすると非常に簡単です。
子どもにとっても、意味を深く理解してなくても何となくできたりすることもあります。
根本を理解しているのかしていないのかが、見えにくいのです。
ましてや、先生がロジャーを使ってるだけで30人以上のいるクラスでの授業となると、そもそも聞こえてないことも出てくるでしょうし、ヌケモレが多くなるはずです。
そうなってまで、本来の勉強のフォローを捨ててまで、通級教室で行う「療育」は必要なのでしょうか?
もちろん、療育的なことはまだまだ必要な部分はあるでしょうが、未就学の時期に、小学校以降音声コミュニケーションでも対応できるように、勉強の理解ができるように準備してきたんではないでしょうか?
そして、いけそうだということで小学校に入学したのであれば、次の段階に進むのが本筋ではないでしょうか?
それが、すなわち、「学習支援」なのです。
これは、難聴の小学生をよく見ている言語聴覚士さんから教えてもらったことです。
一切療育は要らないというわけではないですし、うちの娘も小学校入学後も療育的なやりとりは継続している部分はあります。
ですが、週1で2,3時間、授業を犠牲にしてまでやらなきゃいけないことでは、決してないと思うのです。
通級を選んだために、国語、算数のフォローが小さくなり、他の教科でずっと参加できないものが出てくる。
これでは本末転倒ではないでしょうか?
実際に大人になった難聴の人たちから、小学校時代苦労した話を聞きますし、今現在悩んでいることの元をたどれば小学校時代からのことに行き当たることが多くあるんです。
通級を全否定するつもりはもちろんありません。
でも、今の、「難聴児はとにかく通級教室に行けばいい」という暗黙の了解というか、スタンダードは、冷静に見直してみる必要があると思うのです。
時代背景は変わっています。
昔は、小学校時代も療育が重視されたのかもしれません。
ですが、今の現状を冷静に見ると、通級よりは、日々の生活の中で、聞こえやすい(読み取りやすい)環境をつくる、勉強環境を整えるフォローこそが非常に重要だと言えるのではないでしょうか。
もちろん、難聴発覚時期はマチマチなので、小学校以降も療育が重視されるケースもあると思います。
だからこそ、本当は、療育部分、勉強環境(音環境)を整える部分の両方が必要です。
両方選べるシステムが本当は必要なんです。
なぜこのことを学校関係者は本気で議論していかないのか不思議でなりませんし、このあたりは僕たちが直接変えるのは難しいですが、通級を選ぶか難聴学級を選ぶかは家族の意思で決めることができます。
もちろん、難聴学級新設となると、家族の意思だけでは決められませんが、子どもにとって何が最も重要か、今一度考えてみる必要があると思います。
みんなが行ってるから。
どこどこで通級がいいよと言われたから。
就学相談で通級を勧められたから。
ということで、思考停止してはいけません。
今の周りの環境、自分の子どもの状態、いろんな視点で見て、今子どもにとって最も必要なことは何か?
ここを考えることが大切です。
そして、もう一つは行政側の専門性ですね。
難聴学級があるということで見学に行ったら、通常クラスの一番前に座っているだけだったという信じられない話を聞きましたが・・・・
あまりに地域で対応の良し悪しの差が激し過ぎる事例を本当によく聞きます。
そもそも福岡市では、通級教室に言語聴覚士はいません。
おそらく、多くの日本の小学校は言語聴覚士でない教員の方が療育をしているはずです。
なぜなら、通級教室は学校の管轄であって、担当の先生は教師です。
言語聴覚士ではないんです。
一部の地域では、言語聴覚士がいるという話は聞いたことがあります。
どのようなシステムかまではわかりませんが、今、学校では臨床心理士、公認心理士が週に何回か配置されています。
カウンセリングは、専門的に学んだ人でないと当然対応できないからです。
療育も同じです。
言語聴覚士の研修を1年に1回受けているだけの人に療育ができるはずはありません。
あまりに聞こえやことばの療育を舐め過ぎです。
これは、担当の先生を悪く言うつもりはなく、専門的な勉強をしてないから当然のことです。
やはり、言語聴覚士を自治体が雇用して配置する必要が絶対にあります。
こういうことが議論に上がってないのか?
これが本当に不思議でたまりません。
明らかにおかしいことですが、ずっと行われていると、何らおかしくない通常のことと錯覚してしまうんだろうと思います。
そして行政側は、対象者の利益よりも、自分たちの運用しやすさでシステムを構築している部分が多々見られます。
そして、担当者の頻繁な異動があります。
癒着してないと証明するための異動って、本末転倒ですよね。
素人が素人を動かして決めるシステムになってしまっていては、対象の人の利益になるわけがないですよね。
だから僕は何度でも言います。
今の環境を冷静に見て、普通に自然に考えれば、おかしなシステムだらけなんです。
ということで、今日お話ししたことも含め、言葉のかけはし、1年に1度の定期セミナーを開催します!
「難聴者の「学ぶ」「働く」の可能性を拡げよう!セミナー」
リアル開催×オンライン開催
参加無料です!
日時:2023年6月24日(土) 10:00~11:30 開場9:40
会場:ふくふくプラザ 5F 501研修室(福岡市中央区荒戸3-3-39 )
定員:50名(リアル開催)
50名(オンライン開催)
主催:一般社団法人言葉のかけはし
字幕あり(音声文字変換アプリ)
手話通訳あり
当日都合の悪い方は、アーカイブ視聴のお申し込みもできます。
<プログラム>
第1部 講演「可能性を拡げる聞こえのフォローのススメ」
一般社団法人言葉のかけはし 代表理事 岩尾 至和
第2部 パネルディスカッション「デフリンピックンの魅力」
あいおいニッセイ同和損保株式会社
デフサッカー日本代表候補 松元 卓巳 氏
障害者スポーツ協会 理事 浜津 哲也 氏
(ファシリテーター岩尾)
2022年度から本格始動し、1年間活動してきてわかったことが多くあります。
難聴理解が昔よりは進んでいるとはいえ、大人になった難聴の人が困っているケースはまだまだ多く聞かれます。
ではどうすればいいのか?
難聴に関する最新事情(ヌケモレの真実、療育から学習支援等)をお伝えします。
参加無料ですし、日程の都合も気にする必要はありません!
ちょっとでもご興味を持たれましたら、ぜひ、お申し込みください!
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よろしくお願いします!
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