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29.03 微分の初歩(瞬間の変化率とその図形的意味)

注意:29.01~29.03は退屈かもしれないので、基本的なことに興味ない場合は読み飛ばしてください。



瞬間の変化率(微分係数)

前回、前々回で微分の動機を話し、前回の最後には瞬間の変化率の求め方をかんたんに述べました。


確認
 $${X\subset \mathbb{R}}$$を定義域とする関数 $${y=f(x)}$$を考えます。$${a}$$から $${x}$$まで変化するときの平均変化率

              $${\dfrac{\:f(x)-f(a)\:}{x-a}}$$

において、$${a}$$における瞬間の変化率を求めたいのなら $${x}$$の値をどんどん$${a}$$に近づけてみて、それがある値に近づくならその値が瞬間の変化率です。これを$${a}$$における微分係数 (単に変化率微分) と呼びます。

微分係数を表す記号
関数 $${f(x)}$$の $${x=a}$$における微分係数を記号 $${f'(a)}$$で表すことにします。関数 $${y=x^2}$$の $${x=a}$$における微分係数という場合には $${y'(a)}$$という表し方もします。
※ $${f'(a)}$$は「$${f}$$プライム $${a}$$ (f prime of a)」、$${y'(a)}$$は「$${y}$$プライム $${a}$$ (y prime of a)」と読みます。

高校数学ではこのような記号はありませんが、いちいち $${f(x):=x^2}$$と書き直さなくて済むのが利点です。(※1)


微分係数の図形的意味

関数 $${f(x) \:\: (x\in X)}$$の $${x=a}$$における微分係数 $${f'(a)}$$の図形的意味を考えてみましょう。
下図の赤い半直線は、2点 $${A(a, \: f(a)), \: P(x, \: f(x)) \:\: (a < x)}$$を結ぶ直線の一部で、半直線にしたのは見やすくするためです。$${x}$$をどんどん $${a}$$に近づけると、それに連れて点$${P}$$は点$${A}$$に近づいていきます。このとき、直観に頼りますが、赤の半直線は点線に近づいていきます。

上図の青い半直線は、2点 $${Q(x, \: f(x)), \: A(a, \: f(a)) \:\: (x < a)}$$を結ぶ直線の一部で、$${x}$$をどんどん $${a}$$に近づけると、それに連れて点$${Q}$$は点$${A}$$に近づいていきます。このとき青の半直線は点線に近づいていきます。
2本の半直線が近づいていく直線を点Aにおける接線といいます(※2)。

このことを踏まえると、平均変化率は2点を結ぶ直線の傾きを表していたので、微分係数 $${f'(a)}$$は点$${A(a, \: f(a))}$$における接線の傾きを表していることが分かります。
つまり、微分係数が存在するならば、図形的には、接線の傾きを表していることが分かりました(※3)。


接線の方程式

微分係数が接線の傾きを表していることが分かったので、具体例でみておきましょう。

例(接線の方程式)
放物線 $${y=x^2}$$上の点$${(1, \: 1)}$$における接線の方程式を求めてみます。

点$${(1, \: 1)}$$における接線の傾きは $${y'(1)}$$なので、まず、$${x=1}$$のおける微分係数を求めます。

$${x}$$が $${1}$$から $${x}$$まで変化したときの平均変化率は

    $${\dfrac{\:y(x)-y(1)\:}{x-1}=\dfrac{\:x^2-1^2\:}{x-1}=\dfrac{\:(x-1)(x+1)\:}{x-1}=x+1}$$

で、$${x}$$を $${1}$$にどんどん近づけると $${x+1}$$は限りなく $${2}$$に近づくので $${y'(1)=2}$$です。したがって、点$${(1, \: 1)}$$における接線の方程式は
             $${y-1=2(x-1),}$$
              $${y=2x-1.}$$  ▮

基本の話はここまでで次回は微分係数の計算について話をします。「$${x}$$を $${1}$$にどんどん近づけると $${x+1}$$は限りなく $${2}$$に近づく」という部分をスッキリした形で計算できるようになります。▢


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